河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

BtoBマーケティング

売りに結びつくBtoB広告の実践

(4)広告(独自メッセージの発信メディアとして)

BtoBマーケティングでは複数の組織人の関与がある、と述べたが、実はこれからの広告の役割として最も重要なポイントが、そこにある。巷で言われているように、広告ではものは売れない。広告で売るのではなく、売れる仕組みを作るのが広告のメディアとしての価値でもある。BtoBビジネスでは製品購買に際して多様な立場の組織人(決裁者)の関わりを受ける。購買担当窓口と決裁者の当該製品に対する価値認識も当然異なる。

購買プロセス

ここで重要なのは、製品そのものではなく、製品を提供している企業に対する認識の度合いである。この認識の度合いであるが、得てして認知度や知名度が重視されるが、そうではなく企業の独自の価値観や哲学と言った、人に置き換えれば人格に相当するような部分がどの程度認識されているか、と言うことである。

マス広告での対応は、下記の2点がこれから重要になる。

(a)売るためでなく、売れる仕組みづくりのための広告

(b)独自メッセージの発信がCSRに結びつく

正直なところ、最近の広告はどれも100%は信用されていない。当たり前のことであるが、企業は自社や自社製品を悪く言うはずはない。そのことをマーケットや社会は充分理解して、広告を見ているのである。「この製品は凄いですよ!」とか「我が社は素晴らしいですよ!」と言っても、それを頭から信じる人はまず無いだろう。これからの広告では、自社や製品の優位性を口うるさくアピールするのではなく、「我が社はこんな考えを持っています」とか「この課題に対して我々はこう考える」といったその企業独自のメッセージを発していくことが重要になる。

近頃目にする地球温暖化に対する各企業のメッセージが、あたかも申し合わせたかのようなお決まりの文句で体裁を整えられているのを見ると、その企業独自のメッセージを伝えるには相当な勇気がいるのかも知れない。しかし、もう横並び感覚は捨てて、もっと自信を持って発信したい。初めは気にも留められなかったメッセージが、何かのきっかけで頭をもたげてくることもあるし、この方が記憶定着度は高くなる。

最近、WEBの普及で新聞は読まれなくなったと言われるが、企業内の上位決裁者である社長やその周辺は、むしろWEBよりも新聞を見る機会の方が多い。社用車の中でインターネットは難しいが、新聞は読める。地下鉄の中でWEBブラウジングは厄介だが、新聞は読める。

こうしてその企業の為人が組織人を含むあらゆる人々に理解され、信頼され、記憶されることで、ひいてはBtoBビジネスでの購買決裁に有利に働くと考えるべきであろう。

最近はレピュテーションが注目されているが、好ましい評判を意識して力づくでプロモーションするのではなく、このような根気強い独自のメッセージの継続がレピュテーションに繋がると理解した方が良い。

その意味では特に新聞広告はこれから注目に値すると考える。

従来のような「売り」を前面にした広告でなく、「独自のメッセージ」を伝え合うような場にしていきたい。つまり、企業が保有する独自の技術や製品、人材で、社会をどのように発展させようとしているのか、どのような世の中にしていきたいのかを提言する広告である。いうまでもなく資本主義社会では、企業が最も力を持っている。それを広告というメディアを通して、社会づくりに活かしていくべきであり、これこそが真のCSRと言えるのではないだろうか。現在では公共広告機構が最もこれに近い活動をしているが、できれば各企業が自社の独自技術に根ざしたメッセージが欲しい。

こんな広告が乱舞する新聞ができれば、確実に企業がリードして社会を変えていくことも可能になる。

なお、このメッセージは企業独自の技術や製品から生まれている以上、マス広告だけでなくあらゆるメディアで整合性を持たなければならない。それによってクロスメディアは自然と達成できるものである。

6.もう一度ホスピタリティを。

広告が効かないことを新興メディアの台頭のせいにしてはならない。

この項では、企業購買のプロセスモデルとして提唱したASICA理論」については言及しなかったが、選択可能情報量の爆発的な増加とメディアの進化によって、確実に購買モデルに変化が生じてきている。また最近は特に経済合理性を追求するあまり、「人」と言う数字では語れない要素を無視するかあるいは無理矢理押し込んだ広告評価システムによって、間違った数字で広告を路頭に迷わせているふしがある。血眼になって数字を追いかけるのではなく、BtoBビジネスの原点に立ち返って、もう一度「真のホスピタリティ」を考える柔らかな気持ちを持ちたい。それによって必ず広告は、また新たな進化を始めると確信する。(完)

売りに結びつくWEBサイトの実践

(3)WEBサイト(ビジネスSNS)

WEBサイトはもはや広報メディアではない。すでにサイバーコーポレーションの域に達しつつある。企業とそれを取り巻くあらゆる情報が網羅され、自由に閲覧できるはずだが、残念ながらまだ情報の出し惜しみをしているサイトが少なくない。BtoBに限らずビジネスの場面では、いかに素早く情報がゲットできるかで勝敗は決まる。とにかく考えられる情報はすべて搭載すべきであろう。その情報を顧客が必要としているかどうかなどとか、競合企業の出方を探るとか、そんなことをしている暇はない。後は顧客や社会が必要とする情報に効率よくたどり着けるユーザビリティとSEOに専念すればよい。

WEBサイト運営での売りに結びつく対応は、下記の2点が考えられる。

(a)ソリューションサイトによるオンデマンド・ホスピタリティ

(b)ビジネスSNSの導入

WEB

サイバーコーポレーションである以上、現実の企業と同様の運営が必要となる。現在はまだWEB専任部署などで運営している企業が多いと思うが、将来的には、従業員一人一人が何らかの形でWEBに関与することになるだろう。ビジネス面で捉えれば、まず営業担当がそれぞれに自分のサイトを持ち、ここでWEBマーケティングを行う手法が早晩確立されてくると考える。ここでもオンデマンド・ホスピタリティの考え方が活かされ、営業が自分の担当している顧客ごとに異なったサイトを開設し、担当企業に適したソリューションを提示することで達成できる。ちょうどMyYahooのような仕組みを、BtoBサイトで実現することになる。そして最終的には、SFA(セールス・フォース・オートメーション)の一翼を担うことになる。ここでの課題は、いかにして顧客を自社のWEサイトで囲い込めるか、に重点が置かれる。ビジネスSNSの導入によって、ある程度それは解決できると考えられる。SNSPtoPCtoCの分野ではかなりの普及を見せているが、むしろクローズネットワークと言えるこの仕組みは、もともと閉鎖的なビジネス様式をもつBtoBでこそその真価を発揮することができるだろう。(続)

売りに結びつくカタログの実践

(2)カタログメディア(オンデマンド・ホスピタリティ)

Face to Faceマーケティング」を有効にサポートできるのが、カタログである。とりわけBtoB分野では、製品総合カタログ以外はカタログの一人歩きはないと考えられる。WEBサイトが製品総合カタログのプル型代替メディアとして機能する現在、プッシュ型である「Face to Faceマーケティング」のサポートを確実に行えるツールは、ソリューションカタログだろう。

そこで重要な点が一つある。みなさん、御社のカタログはどちらを向いて作っていますか?。おそらく漠然としたマーケットとか顧客をターゲットにして企画されているはずである。つまりカタログを一人歩きさせよう、営業マンの代役をさせようとしているのではないだろうか。

WEBサイトで十分把握している製品情報を、まったく同じ内容のカタログを前に、懇々と説明する営業担当に辟易とした経験は、誰もが持っているだろう。「Face to Faceマーケティング」の最も重要な場で、顧客にホスピタリティを提供できない営業スタイルは早急に改めなければならない。ここで言うホスピタリティとは、ソリューションである。製品の細かな情報はWEBで賄えるが、顧客の態様に応じたソリューションは、Face to Faceでないと難しい。

カタログでの売りに結びつく対応は、下記の2点に絞られる。

(a)営業力に応じたターゲティング

(b)オンデマンド・ホスピタリティ

カタログが営業ツールとしての性格が強いことを考えれば、営業力(営業スキル)の違いによって、カタログのターゲットも変えるべきである。(a)のターゲティングというのは、顧客向けなのか、自社の営業担当向けなのかと言うことを示している。自社の営業力が強い場合、言い替えれば確固たる顧客層を掴んでいる場合、カタログは顧客向けでよい。つまり、「Face to Faceマーケティング」は、営業担当者の力量でこなすことが可能であり、その場合の補助的なツールとしてカタログを位置づけられる。これが一般的なカタログだろう。しかし、BtoB企業の場合、営業力の乏しい企業が多く、また従来は強くても最近になって極度に営業力が低下しつつある企業もでてくると思われる。これはWEBの普及と技能の伝承不備によるもので、おそらく今後多くの企業でこの課題に突き当たるだろう。その場合のカタログだが、いっそのこと、マーケット志向ではなく自社の営業向けに企画した方が良い。「Face to Faceマーケティング」のサブツールではなく、営業担当の「Face to Faceマーケティング」をリードできる戦略ツールという位置づけだ。最も解りやすいのは、セールスマニュアルである。これほど説得力のあるツールはないが、どういう訳かメディアの進化した現在でも、セールスマニュアルは社外秘扱いで、顧客の手に渡ることはない。セールスマニュアルの性格を持ったカタログを使用することで、営業担当は、顧客を前にしたプレゼンテーションに説得力を持たせることが可能になる。もちろん社外秘に相当する情報は盛り込めないが、淡々と製品情報を述べるのではなく、あたかも営業担当がプレゼンテーションしているような(し易いような)ダイナミックな展開を持ったカタログが欲しい。

このカタログの制作は、まず数人の営業担当に実際にプレゼンテーションを行ってもらい、それをそのままの流れで編集すればよい。

カタログ

b)のオンデマンド・ホスピタリティはBtoB特有のものである。BtoBマーケティングでは、所謂組織人を対象にしており、一つの製品であってもその購買に際して、担当窓口やその上司、購買センター、経理、社長など複数の組織人が関与してくる。にもかかわらずほとんどの企業では、一種類の製品カタログで賄っているところが多いと思われる。もとより担当窓口とその上司では製品導入に際しての評価視点が異なり、購買センターや経理などではもっと違った側面で評価される。さらに言えば、BtoBマーケティングである以上「組織」のもつ性質や風土によっても、アピールポイントやメッセージが異なってくるはずである。顧客企業の風土を十分理解し、それにふさわしいソリューションを述べたカタログは、まさに八百屋の御用聞きそのものなのである。

ソリューションと言うホスピタリティを提供するのがカタログの役目であるなら、企業ごと、組織人ごと(購買センター向けやマネージャー向けなど)に異なったソリューションを提示しなければならないが、オンデマンド印刷がそれに貢献してくれるはずである。(続)

 

AppleのMacworld Conference & Expo撤退から伺える展示会の本質

ところで一昨年12月、Apple2010年以降Macworld Conference & Expoへの出展を取りやめると発表した。本イベントはMac愛好者なら誰もが知るAppleの象徴的な催しであり、なおかつ展示会の本質に切り込んだ貴重な行事でもあった。

この決定を耳にした気の早い広告マンから、展示会の終焉だとか、展示会はウェブサイトに代替される運命にあるといった論調が当たり前のようになされた。100年に一度といわれる金融危機に端を発した不況が急速に進展する今、各社とも当然のように広告宣伝費の大幅な削減が余儀なくされる事態において、むしろAppleの決定は展示会からの撤退や規模縮小のアリバイづくりに大きく寄与するであろう。しかし、一方でこの出来事は今一度展示会のメディアとしての価値を見直す良い機会を提供してくれた。

Appleがこのイベントから撤退するもっとも大きな要因として、アップルストアに展示会代替機能があることをあげている。Appleのリテールストアは全世界284箇所に及び、そこでは製品展示はもちろんありとあらゆるソリューションを提供し毎週400万人以上が訪問している。そしてAppleのウェブサイトでは膨大なテーマのテクニカルサポートが行われ、それに加えて個人のブログやニュースサイトでも逐一最新の情報やソリューションが提供されている。いわばメーカーと顧客が一体になってブランドを育て、次のテクノロジを待ち望む姿がそこにある。これこそが本来の展示会の役割である。

Appleはいつの日かMacworld Conference & Expoを全世界で同時に行うことを前提にリテールストアの構築と価値形成を行ってきたのだろう。こういった体制整備の元でAppleMacworld Conference & Expoの撤退を決定したのであって、それを展示会の終焉と理解するのは早計である。

我々BtoB企業が顧客と常に対話できるリテールストアを持っているのは極めてまれで、ウェブサイトでのコミュニケーション手法についてもはなはだ頼りない。展示会を単に情報提供の場であると考えるならネットで代替も可能だろうが、そもそもそのようなスタンスで展示会に参加すること自体今の時代では何の効果も得られない。

展示会の本質的な価値は、顧客(来場者)の抱えている課題発掘と顧客へのソリューション提供の場であることにある。この詳細は別項の「ASICAモデル」をご覧いただきたいが、その価値を持つメディアは今のところ展示会をおいては見あたらない。今後とりわけBtoB企業が展示会を成功させるためには、まず情報提供という旧来の目的から脱却しなければならない。単に製品を展示するのではなく、顧客の抱えている課題を認識し合い、デモや技術スタッフを通じてその場でソリューションを提示する。この新しいメディア形態として、BtoB分野ではますます展示会の意義が見直されて来るであろう。その一例として、一度近くのアップルストアを覗いてみるのもいいかもしれない。(続)

売りに結びつく展示会の実践

5.売りに結びつくBtoB広告

 BtoBマーケティングの基本はホスピタリティ」にある事を前提に、それではそれぞれのメディアに対してどのように対処していけばよいのか考えてみたい。

 (1)展示会メディア(接触メディア/Face to Faceマーケティング)

昨年中盤から、景気後退による影響で展示会はことごとく規模縮小を余儀なくされている。今年開催される展示会の多くが、従来の半分程度の規模という所も少なくない。しかし、この現状とは裏腹に、展示会は将来の最も重要なメディアとして位置づけられると確信している。その根拠は、どのメディアにもない「接触メディア」としての機能を持っていることにある。面と向かって顧客と直接話しをし、握手できるメディアなどどこにもない。

にもかかわらず、展示会を縮小する理由の一つに、相変わらず展示会を広告メディアと認識していることにある。広告(広報)メディアとしての展示会の価値は、WEBの普及とともに廃れ、代わって顧客とのコミュニティー形成の場(営業の場)と姿を変えたことに、多くの企業は未だに気付いていない。展示には多くのコストが掛かる。これを広告の制作費などと同列で捉えれば、コスト削減のための展示会縮小という図式になっても仕方ない。しかし一方で、通常営業コストとくらべて、展示会での営業コストは2.5分の1で済むと言うデータがある。これはやや古い米国の調査結果であるが、要は通常の顧客まわりをしているくらいなら、展示会で営業した方がはるかに効率は良いと言うことである。つまり、コストの掛かる展示(装飾)を重視するあまり、接触メディアとしての最大のメリットを生かし切れていないのだ。装飾にコストを掛ける必要がないことは米国のExhibit Survey社のリサーチからも理解できる。ここでは、来場者の後日アンケートで、どの企業が最も記憶に残っているか、を質問しており、トップのレートはやはり製品の新規性であるが、ブースデザインよりも説明員の応対の方がレートは高いことに注目する必要がある。

展示会で売りに結びつく対応を行うためには、魅力ある製品の出品はもちろんだが、他に下記の3点がポイントとなる。

a)装飾はコストをかけずできるだけシンプルに

b)顧客にソリューションを提供できる説明員を配すこと

c)来場者は通常営業の一環として自ら呼ぶこと

展示会

展示会は直接顧客と対話して、ソリューションを提供する場である。そのためには(b)は絶対欠かせない。間違ってもにわか仕込みのコンパニオンに説明させてはならない。また、WEBの普及した現在、黙っていては来場者は得られない。待ちの姿勢でなく、(c)のように営業担当自らが、通常営業と同様に顧客に声を掛ける必要がある。当該顧客に特化したソリューションを提供する事を、あらゆる手段で告知しなければならない。展示会は顧客とのコミュニケーションの場であり、良好なコミュニケーションが受注に結びつく。その成果はどれだけの顧客を事前連絡によって呼び込めるかによって大きく左右される。そのためにはどんな展示会でもプライベートショーに臨む周到な準備が必要であり、その準備の程度が果実の大きさに比例すると言うことである。

今後WEBのさらなる普及とともに、必ず注目されるであろうと思われるのは「Face to Faceマーケティング」である。前述のようにこのマーケティング手法が実現できるのは展示会をおいて無いと断言できる。(続)

 

ホスピタリティ・マーケティング

3.「ホスピタリティ」がBtoBマーケティングのキーワード。

上述のように、BtoB社会を進化させたエンジンは「ホスピタリティ」にある。これは現在のBtoBマーケティングを考える上で非常に重要なポイントとなる。最近当たり前のように言われている顧客第一主義とか市場志向主義が、真のホスピタリティに根ざしたものだろうか?。単に「市場に向かって」もっともらしく叫んでいるだけではないのか。顧客企業に何を提供すれば喜ばれるのか、顧客企業の発展のためにどんな貢献ができるのかを、損得抜きでまず考えることからBtoBマーケティングはスタートすると言っても過言ではない。

単に叫んでいるだけなら、八百屋の店先で「今日は大根安いよ−!」と大声で言っているにすぎない。八百屋の御用聞きのように、顧客企業の風土や技術レベル、将来に対する課題などを充分把握したうえで、その時々に応じて最適なソリューションを提供することが、本来のBtoBマーケティングなのである。そしてその原点には必ず、コミュニティ(顧客企業も含めた大組織)の維持を前提とした「ホスピタリティ」の概念がなければならない。

最近あちこちでWIN-WINの関係と言って、いかにもホスピタリティをかざしたかのような掛け声を耳にするが、所詮ビジネスは、詐欺でない限り価値交換と言うWIN-WINの関係が当たり前である。したがってWIN-WINGive and Takeは、ホスピタリティとは本質的に異なる関係性である。真のホスピタリティとは相手の懐に奥深く入り込んで、その実情を踏まえた上でいかにすれば喜んでもらえるか、貢献できるかに取り組むことであり、いわば顧客企業のコンサルタンシーとしての位置づけにあると考えられる。これがBtoBマーケティングの基本となる。

4.「インターナルマーケティング」でBtoBマーケティングを学ぶ。

BtoBマーケティングを学ぶ絶好の手法がある。「インターナルマーケティング」と呼ばれる企業内マーケティング活動がそれである。これは企業を構成する各部署をそれぞれ顧客とみなして、どうすれば相手部署に喜んでもらえるか、あるいはどのようにサポートすれば相手部署が動きやすくなって成果を出せるかを、各部署間で取り組むものである。

我々広告宣伝部門は、常々経理部門や営業部門との関わりが多いが、たとえば経理部門は宣伝部門に対し、今、多くの企業が行っているような一律に予算を削減する方向ではなく、むしろ可能な限り予算をつけて宣伝活動をサポートする。宣伝部門は、営業部門ができるだけ顧客と接しやすいプロモーションツールを開発し、営業とシンクロして受注に貢献する、と言う具合に各部門でサポート合戦を行うことになる。

実はこのサポートが、「ホスピタリティ」そのものなのだ。単にある部署を外から眺めて適当にお付き合いするのでなく、その部署が今何にチャレンジしようとしているのか、どんな課題を持っているのかを充分把握した上で、動きやすくなるようにサポートすることが、インターナルマーケティングである。

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このインターナルマーケティングを行うに当たって、忘れてはならない重要なポイントがある。それは、必ず企業の内側から外側に向かってホスピタリティを提供することである。企業それぞれに組織形態は異なるが、大まかには、まず企業の最も内側には人事部門や財務部門がある。その外側に、総務部門が、またその外側に製造部門や開発部門があり、顧客と最も近いところには営業部門がある。だから、インターナルマーケティングでは、たとえば人事部門や財務部門であれば、ほぼすべての部署にホスピタリティを提供しなければならないし、営業部門は他にその内側の開発部門からもホスピタリティを得ることになる。

では最も内側にある人事部門や財務部門は、どの部署からもホスピタリティは得られないのかと言うと、そうではない。企業の中心部には「経営」があり、人事や財務部門は経営トップからホスピタリティを受けることになる。

ちなみに宣伝部門は二つの顔をもつ。販売促進(プロモーション)のポジションでは、営業よりも内側に属する。したがってこの場合は営業活動にホスピタリティを提供しなければならない。一方広報的な側面では企業の最も外側に位置し、より外側の社会に対してホリピタリティ提供することになる。このことから企業広告では単に企業をアピールするのではなく、社会に貢献できる情報提供を行うことが重要だと理解できるだろう。

こうして見てみると、多くの企業が外に向かってではなく、むしろ内側に向かって動いていることに気付く。社内営業に時間が掛かるとか、無条件に行われる人員削減や予算削減要求は、まさしく内向きの代表的な形であり、これではホスピタリティを学ぶことなど到底不可能で、ひいてはBtoBマーケティングとは無縁の世界にいることになる。

インターナルマーケティングで、社内ホスピタリティの風土が醸成できれば、顧客に対するホスピタリティ意識も自然に芽生えて来るものである。インターナルマーケティングは、BtoBマーケティングそのものなのである。(続)

BtoBビジネスの原点

1.我が国はもともとBtoB社会であった。

米国を除くほとんどの国が、実はBtoB社会の基盤の上で発展してきたと言える。BtoBは「組織対組織」であるが、たとえば我が国の場合、ごく近年まで社会の最小単位は「家庭・家族」と言う組織であった。組織のアイデンティティとしてどの家庭でも家風や家訓があった。そしてこの集合体は、「町内」「地域」「街」へと拡がり、最終的に国家と言う大組織を形成することになる。今で言うところのコミュニティーの概念は、すでに家庭の中にあったのである。家族の大きな行事である「婚姻」に際しても、当時は家族対家族の行事であり、何よりも組織の維持と発展のために欠かせないイベントだった。ここでは「個」の価値観は二の次とされ、現在の企業組織と酷似している。

では、この社会ではどのようなコミュニケーション形態が成り立っていたのであろうか。これを紐解いていくと、実は我々が忘れかけているBtoBコミュニケーションの原点が見えてくる。

2.「八百屋の御用聞き」に見るBtoBビジネスの原点。

昭和30年代、高度経済成長期の真っ只中、いいかえればBtoBビジネスの最盛期だったと言えるが、家庭は「個」の価値観よりも「組織としての家族」の価値観が重視されていた。それは当主を軸にした一つの小さなコミュニティだった。当時はスーパーやコンビニはもちろん無く、専ら個人商店がその役を担っていた。個人商店もまた家庭でありビジネスを行う組織でもあった。八百屋や魚屋などの個人商店は、近所の家庭と深く関わりを持ち、それがまた地域のコミュニティを形成していたと考えられる。八百屋はある家庭の嗜好を、たとえばご主人は何が好きだとか、子供は何が好みだとか細部にいたって把握していた。もっと言えば各家庭の献立まで、どういう訳か知っていた。さらには、「もう子供がそろそろ小学校に入学する」とか、「子供の友達には誰々さんがいる」といった付加的な情報も掴んでいた。そして、ビジネス。今、この家庭には何が必要なのか、何を売れば喜ばれるのか、昨日の献立はこれだから今日はこっちの野菜が良いだろうなど、今で言うところの提案営業を自然な形でやっていた。そして驚くべきは、「奥さん、今日はいい大根入ったよ。これどう?」と持って行けば、「今日はいいのよ。間に合ってるから。それより、このクリーニング、出してきてくれない?」と、本業以外の仕事まで引き受けてしまうこともたびたびあった。

このビジネスのスタイルが、実はBtoBマーケティングの原点なのだ。

つまり、八百屋にしても魚屋にしても、地域の家庭の状況や課題などを十分に把握し、それに応じた提案を行う。しかも状況や課題把握は現時点の「点」でなく、将来も見越した「線」として捉えているのである。だからこそ、「来月は○○さんちの娘さんが入学だから、そろそろ鯛を用意するか…」といった配慮が可能になるし、喜んでもらえるなら本業以外でもお手伝いする心遣いが、このビジネススタイルの源であったと言えるだろう。

そして最も重要なポイントは、決して金儲けではなく、いかにお客様に喜んでいただけるか、がその原点にあることである。

我が国は古くから、ホスピタリティに長けた民族であった。ホスピタリティの概念は上位階級だけでなく、広く末端の大衆にまで当たり前のように根付いていた。ホスピタリティの語源がラテン語の「客人の保護」にあるように、単なるもてなしではなく、相手を護りその結果いかに喜んでいただけるかがこの真意である。我が国のような島国では、コミュニティを維持していくために必然的に進化してきた概念とも言える。

相手に喜んでいただくことが自分の喜びであり、なおかつコミュニティ(組織同士の関係)を心地よく保っていくための、ノウハウでもあった。

ちなみに、この素晴らしいBtoB社会は、米国からもたらされた「個の自由」の風潮により、徐々に組織としての家族の崩壊と価値観の変革、さらには米国式ビジネスの象徴である大型店舗の進出による個人商店の衰退を招き、ほとんど消滅し、新たにBtoC社会が隆盛を極めることとなる。(続)

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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