河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

BtoB

BtoB企業の効果的な製品広告とは

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉙

《質問》
 

弊社はグローバルに事業展開している機械メーカーです。おもに工作機械や産業ロボットを開発・販売しています。従来から専門紙や業界紙を中心に広告展開しています。しかし広告効果が本当にあるのかどうか社内でも議論になることがあります。営業部門はBtoB企業では広告効果はあまり期待できない、それよりも展示会やカタログに注力すべきだという意見が強くなりつつあります。私は各メディアを万遍なく利用して広告展開すべきだと思っているのですが、効果が云々と言われるとどうしても営業部門を説得することができません。我が社のようなBtoB企業での製品広告を効果的に展開するにはどのような取り組みが重要なのでしょうか。(機械メーカー・コーポレートコミュニケーション部)
 

《回答》
 

最近はインターネット広告などネットを主体としたプロモーションが注目され、旧来の印刷メディアでの広告展開にネガティブな意見が少なくありません。その要因として、新聞や雑誌メディアの購読部数の減少が上げられますが、もっと重要なのは広告効果測定での引き合い件数の出所が不明確なことが問題視されているのでしょう。
 

ここではインターネット広告は除外して、新聞広告や雑誌広告などの旧来のメディアでの広告展開について述べていきたいと思います。
 

まず広告効果測定の重要な係数になる引き合い件数のカウントの仕方ですが、最近はメディアからの引き合いはほとんどないと考えられます。1990年頃から普及しだしたインターネットによって印刷メディアでの引き合いはWEBサイトを通じて得られることがその要因です。したがって新聞や雑誌メディアからの引き合いがないからといって、広告効果が少ないとは言い切れないことを充分認識しておく必要があります。つまり、現在は印刷メディアに限らずほとんどのメディアからの引き合いは、一旦WEBサイトを通じて得られると考えなければなりません。
 

WEBサイトから得られた引き合いがどのような経路を辿って来たのかはログを解析すればある程度分かります。おそらく何らかのメディアでの情報が起点となって検索されWEBサイトに到達していることが理解できると思いますが、どのようなキーワードでどのページにアクセスされたかによってそれが広告によるものなのか他のメディアによるものなのかはかなりSEO対策を綿密に施しておかなければ判別できません。
 

御社の営業部門が「BtoB企業では製品広告の効果はあまり期待できない」と思われるのは以上のような現象が元になっていると考えられますが、決して製品広告の効果がないのではなく、効果測定の係数が変化していることを充分理解すべきです。
 

ところで、ではどのような製品広告が効果的なのか、についてお話ししたいと思います。

 すでに御社では専門紙や業界紙を利用されていますので、メディアの選択に関しては大きな問題はないと思います。問題はどのような広告クリエイティブなのかですが、とかくBtoB企業が行う製品広告はいわゆる「カタログ広告」になる場合が多く見受けられます。これは充分気をつけた方がいいでしょう。

 とりわけ営業部門が主体になって広告展開する場合、幾つものセールスポイントを列挙したり、細かなスペックを記載してまるでカタログのようになってしまっている広告を見かけることが少なくありません。要するに新聞や雑誌メディアに「チラシ」を掲載しているのとほぼ同じ考え方です。広告をこのように煩雑な特徴やスペック、写真で盛りだくさんにしたくなる気持ちは、少なくとも営業サイドに立てばよく理解できますが、最早このような広告は広告とは呼べない代物になってしまっています。
 

広告の重要な役割は「引き合いを得ること」です。一方でカタログの役割は「製品を販売すること」です。ただカタログの場合はそこに営業担当が介在しますから、あくまでもセールスツールとしての役割になります。

このように役割が明確に違うにもかかわらず、広告にカタログ機能を持たせることは非常に効率が悪くなります。まずポイントが明確でなく多くの特徴が列挙されたり細かなスペックが記載されてしまうと、営業サイドとしては「ん、これで十分だ」と思いがちですが、広告で製品が売れることは期待できないことは以前本欄でも述べています。
 

BtoBにおける購買プロセスから考えると。まず重要なのは広告で購買を期待するのではなく見込み客を得ることなのです。それが広告でほとんどカタログの焼き直しのようなクリエイティブであれば、そこで良くも悪くもある程度製品が理解されWEBサイトに誘導することができません。一方で、WEBのプロモーションサイトに比べるとあまりにも広告の内容では貧弱になってしまいます。したがって、中途半端に理解されてWEBサイトにも誘導できない、つまり見込み客が得られないという最悪のケースが待ち受けているのです。
 

つぎに製品広告の効果的な取り組み方、についてお話ししたいと思います。
 

まず重要なポイントは「語りすぎないこと」です。広告でカタログのようにすべてを語るのではなく、一つか二つのセールスポイントに絞ってそれを印象的なビジュアルや場合によればインフォグラフィックなどを駆使し、さらにオーディエンスの心に訴えるヘッドラインで構成することです。たとえば新聞で全15段という大きなスペースであったとしても決して語りすぎてはなりません。言い方を変えれば「?」や「なぜなの?」「なるほど」といったオーディエンスの心理変容を起こさせ間髪を入れずにその「?」を理解させるためにWEBサイトに誘導できる広告が現在では優れた製品広告だと言えるでしょう。
 

すべてを語らずなかば中途半端な広告にはおそらく営業部門から猛烈な拒否反応が出てくると予測されますが、何度も述べるようにどんなに頑張っても広告ですべてを理解させるには限界があり、しかもBtoB分野ではいわゆる衝動買いが期待できないため、広告で製品が売れることは皆無と言えます。製品広告の役割はWEBサイトへの引き合いを得ることを営業共々充分認識しておかなければなりません。
 

ではどのようなコンテンツが製品広告に有効なのか、ですがこれはターゲットによって異なってきます。ターゲットが顧客企業の現場サイドであれば、顧客企業が抱えているであろう課題に対するソリューションを前面に出すべきでしょう。課題とソリューションを上手く一体化して広告展開できれば最高です。ここでは当該製品の特徴やスペックなど必要なく、その製品を導入することでどんな課題が解決できるのかを端的に示唆すべきです。ターゲットが顧客企業の決裁者の場合は上記の他に、導入効果を具体的に理解されるヘッドラインが生きてくるでしょう。ここでも細かな製品特徴やスペックは必要ありません。詳細はWEBサイトで説明できますから。
 

 紙幅の関係上あまり多くは述べられませんが、BtoB企業における製品広告の最も重要なポイントは、「語りすぎないこと」なのです。その一方でWEBサイトのランディングページやプロモーションサイトを充実させておくことが重要なのは言うまでもありません。つまり印刷メディアの広告とWEBサイトが一体化されたプロモーションが最も効果的な広告だと言えるのです。     

ASICAモデルについての質問

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉗

《質問》
 

私は現在印刷業界で日々クライアントと接し、広告やカタログの企画制作のお手伝いをしています。最近複数のクライアントから「ASICAモデルって知ってる?」と言う質問が多く、調べてみると日本BtoB広告協会から提唱されている理論だと知りました。クライアントの話では最近はASICAモデルに則った広告制作やカタログ制作が有効だと言うことが徐々に知れ渡っているようで、「貴方ももっと勉強しなさい」と言われてしまいました。大変恐縮ですがこの欄をお借りしてASICAモデルについてご教授いただければ大変有り難いと思っています。(印刷会社・クリエイティブ営業部)
 

《回答》
 

ASICAモデルはBtoB購買のプロセスモデルとして理論化したもので、既に2008年に当協会の機関誌で発表しています。詳しくはその頃の機関誌をご覧いただくか、拙著「ASICAれ!」(2012年刊、日刊工業新聞)をお読みいただければほとんど理解できると思います。しかし200ページもの書物を読むのも面倒でしょうから、ここではASICAモデルの主要部分について、かいつまんでお話しさせていただきます。
 

確かにASICAモデルはおかげさまで最近各企業に認知され、広告制作などに生かされつつありますし、とりわけBtoB業界では非常に有効なプロモーションプロセスだと思っています。またここに来てBtoC業界でもその有効性が認められようとしています。
 

ASICAモデルの最大のポイントは、「ホスピタリティ・マーケティング」を基盤にしたプロセスモデルであることです。ここで言うホスピタリティとは、最近流行っている「おもてなし」と言う意味ではなく、顧客や社会が抱えている課題を解決し、最終的に喜んでいただく、と言う意味です。したがって顧客に媚びたり顧客の言いなりになって商品販売やプロモーションを行う事ではない、と言うことをまず念頭に置いておく必要があります。
 

ASICAモデルは、A(アサインメント=課題)、S(ソリューション=課題解決)、I(インスペクション=検証)、C(コンセント=承認)、A(アクション=購買)の各プロセスを経てビジネスが完結することを意味しています。したがってビジネスのトリガーになるのはアサインメント(課題)なのです。

従来から広告分野では誰もが知っているAIDMA理論がありますが、この理論ではトリガーはA(アテンション=注目)になっています。なぜ注目を無視して課題がトリガーになるのかというと、現在のように驚異的に氾濫している情報の中ではもう既に「注目」という機会は期待できません。情報氾濫期ではすべての情報はノイズと衣を替え、オーディエンスにとって有益な情報はごく僅かしかないと言えます。それに替わって社会や生活がますます複雑化するに伴い、あらゆる場面で「課題」が生じてきています。
 

ここでニーズと課題の違いをお話ししたいと思います。従来からとりわけ広告分野や商品開発において、ニーズの先取りとかニーズにあった広告企画が求められてきました。ところが最近のように技術開発のスピードが速くなるにつれ、今のニーズは早晩解決されてしまいます。広告企画ではおよそ26カ月の期間を要し、商品開発ともなれば半年〜2年の期間が必要ですが、ニーズを追いかけると広告が完成した頃、商品が完成した頃には既にめざしていたニースは満たされてしまっているという現象が多々見られます。マーケティングリサーチによる広告や商品企画はこのニーズを分析して行いますが、その結果せっかく作った商品が売れないとか、広告が効かないと言う結果に陥っているのです。
 

一方で課題は場合によると顧客や社会ですら認識していない隠れた問題とも言えます。このやがて芽を出す地下に潜っている課題を掘り出して顧客や社会に提示することが広告企画の場面でも重要なのです。ニーズを満たされても今の時代ではほとんどの人はそんなに喜びません。時代の趨勢から当たり前だからなのです。ところが自分が知らなかった課題を提示され、その解決策を露わにすることで顧客や社会に強烈に印象づけることが可能になります。とりわけ相手が企業では「よくそこまで考えてくれた」と感謝され、それが信頼へと繋がっていくのです。
 

このようにASICAモデルのトリガーはまず課題探索から始まりますし、そのためには顧客企業はもちろんあらゆる分野の現状理解とそこから将来表面化すると思われる課題を把握することが非常に重要と言えます。つまり広告分野でも商品開発分野でも、現状のニーズの調査ではなく将来の課題探索が重要だと言えます。

課題さえ明確にできればどのようなメッセージでそれを理解させるか、と言うプロセスに移りますが、それ以降はメディアの選択とASICAモデルの各プロセスに合致したコンテンツを準備すればそんなに難しい事ではありません。
 

課題の次のソリューションは、自社の技術や製品でどのような課題解決が可能なのかを述べることになりますが、このメッセージは課題の提示と一体化した方が分かりやすいでしょう。ここでは新聞広告やWEBサイトが威力を発揮します。
 

インスペクション段階ではまさにWEBサイトが重要なメディアになります。提示されたソリューションが自社に合致するかどうかを競合企業などと比較検討するわけですから、WEBサイトが最も手っ取り早いと言えます。その意味ではWEBサイトにはあらゆる情報を搭載しておくことが不可欠です。とかくWEBサイトのコンテンツ企画の際、軸足を自社に起きがちですが、重要なのは自社を社外から客観的に眺めて競合企業に勝てるコンテンツづくりを行う事です。
 

コンセント段階はじつは課題に次いで重要なプロセスとなります。何しろここで承認されなければいくら優れたソリューションを提示して顧客に納得させても、最終的には他決の恐れがあるからです。承認決裁者向けのメディアは特に存在しませんが、ここではブランディング広告などで決裁者の潜在意識に植え付ける手法が有効です。また我が国ではあまり見かけませんが、社長向けのカタログなども効果的です。さらに現在どの企業も経理部門が力を持っています。企業成長を考えるとあまりよい傾向ではないのですが、時代の趨勢と見れば致し方ないことでもあります。それならば経理部門向けのカタログを企画しても面白いと思います。カタログは本来商品の特異性や優位性などを述べますが、経理部門にとってそんなことはどうでもいいのです。当該商品を導入することで顧客企業にどれだけの利益がもたらされるのか、を数式などを駆使して丁寧に述べることができれば最高です。
 

こうしてコンセントが上手く達成できれば晴れて購買(アクション)に繋がってくるのですが、ここで重要なメディアを忘れてはなりません。展示会です。本来展示会はPRの場ではなく受注の場なのですが、なぜか展示会に決裁者や検証者の来場を促す企業が皆無なのが不思議です。展示会はASICAモデルのすべてのプロセスに対応できますし、とりわけ実機を前にして検証作業や決裁の動機付けには他のメディアにはない力を持っています。展示会の有効性をASICAモデルからも再認識すべきでは、と考えています。

 

BtoB企業での新聞広告やテレビCMの活用効果

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉖


《質問》

弊社は建設機械や運搬関連器具を製造販売していますが、現在ほとんど広告活動を行っておりません。その理由は弊社のようなBtoB企業ではマスメディアで広告を行っても受注にはあまり寄与しないという昔からの感覚があるからです。私は個人的にはもっとマスメディアを活用して知名度を上げることも企業として重要なのではないか、と思っているのですが、上司からは「そんな無駄なことは必要ない」のひと言でなかなか広告予算が配分されないのが悔しく思っています。そこで質問したいのですが、本当にBtoB企業ではマスメディアを活用しても効果は期待できないのでしょうか? もし活用するとすればどのような広告展開が可能なのかご教授いただくようお願いします。(建設機械メーカー・営業企画部)

 

《回答》

大変貴重なご質問を頂戴しありがとうございます。

確かに多くのBtoB企業はマスメディアを軽視する傾向が非常に強いのが現実の中で、貴方の広告に対する前向きな姿勢に敬服します。

まず新聞広告の価値については、本Q&Aシリーズ④で述べておりますので、併せてご覧いただければより詳しくご理解いただけるかと思います。

今回は少し視点を変えてお答えしたいと思います。

まずBtoB企業における新聞広告やテレビCMに対する取り組み姿勢は、はっきり言って間違っています。貴方の考え方の方が正しいのです。このことについてしばらくお話しします。

企業の上層部が「受注への寄与率が低いからマスメディア広告を控えたい」という気持ちはよく分かります。しかしとりわけBtoB企業はその商材の購買プロセスが非常に複雑で多くの組織にまたがって決裁される傾向があります。マス広告が受注に寄与しないと言う理由は、まず広告ターゲットを間違っているからです。最も購買に関与するターゲットは顧客企業の決裁権を持つ上層部です。最も強い決裁権を持つのは「社長」です。こういった人たちをターゲットにせず、ただ漠然と企業PRに終始している広告が少なくありません。情報過多の現在ピンポイントでターゲティングしなければ、広告という情報は単なるノイズとして受け流されてしまいます。

したがって新聞広告で重要なのは顧客企業や社会に対するブランディングを意識した広告です。ターゲットは社会ではオピニオンリーダー、企業では決裁権を持つ上層部となりますが、ひと言で言えば社長向けの広告とも考えられます。ここでは商品のPRに終始するのではなく、社会や顧客企業が抱えている課題もしくは将来課題に発展するであろう問題点に対するソリューション、つまり御社がこれらの課題にどのような技術や商品で解決できるのか、を明確にメッセージすることが大切です。つまり美辞麗句満載のPR広告ではなく、社会も顧客企業も気づいていない課題に対するメッセージを発信するのです。

人でも企業でも自分たちが気づかない課題とソリューションを明示されれば、その企業の信頼性は急激に向上するものです。この「社会や企業が気づいていない課題」がポイントになります。

このような新聞広告はまだ現在は極めて少ない状況ですが、将来、新聞広告の大きな役割は社会(企業を含めて)が抱える課題の提示とそのソリューションをメッセージする広告スタイルが主流になってくると思います。

また新聞そのものの価値については前述した過去の本欄をご覧いただければ理解できると思いますが、ネットが普及した現在でも印刷媒体としての新聞の価値は決して衰えてはいません。確かに新聞の販売数量は徐々に低下していますが、それはBtoB分野に限れば一社あたりの購読数がインターネットの影響で低下しただけのことで、メディアとしての新聞の価値が低下したものではありません。

一方テレビCMについても前述とまったく同様のコンセプトで問題ありません。社会に対するメッセージCMは新聞以上に到達率は高いでしょう。しかしここで気をつけなければならないのは、単に視聴率を気にしてくだらないバラエティ番組に関与しないことです。BtoB分野であってもテレビは一人の心理変容が影響します。テレビCMは番組の流れを引きずった状態で見られます。その意味では番組の流れを邪魔しないテイストで構成しなければなりません。バラエティ番組であればバラエティ風のCMになってしまいます。そこで小難しいメッセージを発信してもおそらく視聴者はトイレに行くだけでしょう。テレビCMでの狙い目は、視聴ターゲットが明確で「ながら視聴」の少ないBSCSを選択した方がいいでしょう。広告料金も地上波に比べると格安ですから。

新聞広告にしろテレビCMにしろ、そこで商品が売れることは期待できません。そのことが御社の上層部が言われる「マス広告をしても受注に結びつかない」と思われている所以です。メディアはそれぞれ役割分担を持っています。マス広告で注目された後はほとんどの場合WEBサイトにアクセスされます。したがってWEBサイトの構成も上述したメッセージ広告をさらに詳細に述べたサイト構成は不可欠となります。この件に関しては紙幅の関係上Q&Aシリーズ⑲の「プロモーションサイト」について言及した本欄をご覧ください。


 新聞広告は確かに最近は低調気味ですが、それはまず新聞の価値を正確に把握していないことと、昔のようなダイレクトに新聞広告からの引き合いが低下したのが主な要因です。新聞広告は社会に対する自社からのメッセージであること、そして引き合いや意見はWEBを通じて行われていることを充分把握しておくべきでしょう。

ところで新聞広告に代わってインターネット広告が主流だと言われていますが、それこそBtoB企業でインターネット広告はあまり効果はありません。単に価格が安いだけでどこもかしこもインターネット広告に躍起になっていますが、BtoB企業でのネットアクセスの目的を考えると画面にちらちら出てくる広告をクリックする暇などないのです。それよりも、昨年末話題になった「vvvウィルス(ランサムウェア)」が気がかりです。当初はインターネット広告にウィルスが仕込まれていたと言われていましたが、実際はそうではなくメールの添付ファイルが原因でした。しかしよく考えればデジタルの世界はもうなんでもありです。インターネット広告にウィルスを仕込ませる事はそんなに難しいものではありません。それが現実になるとインターネット広告そのものの価値が急減してしまい、おそらく最も安全な新聞広告やテレビCMに回帰してくるはずです。ちなみに私はウィルスが恐いと言うより、前述したネットアクセスの目的に関係ない広告が煩わしく「広告ブロッカー」をブラウザに搭載していますから、インターネット広告は一切目にすることはありません。今後広告に興味ない人やとりわけセキュリティにうるさい企業でも広告ブロッカーを搭載する事が考えられますし、そうなればインターネット広告はまったく本来の機能は果たせなくなってしまうのです。

いずれにしても、新聞の価値は低下したわけではなくこれからは各企業ともメッセージ主体の広告が主役になってくると思います。これこそが本当のCSRなのです。

このようなマスメディアの活用を行えば、結果的に御社の信頼度は向上し受注にも貢献できると考えています。

マーケティング業務におけるビッグデータの有効性についての質問

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉒

《質問》
 

弊社では今後マーケティングリサーチの一環としてビッグデータの取り扱いを検討しています。その理由は、データから得られる様々な要因を元に、新技術や新製品の開発に生かそうというものです。昨今ビッグデータが宝の山のように言われ、弊社としてもその貴重なデータをなんとか自社の企業価値向上のために生かせることができないか、と考えています。そこでビッグデータをマーケティングに応用する場合の注意点や課題などがありましたら教えていただきたく、ご相談する次第です(電気機器メーカー・マーケティング本部マーケティング担当)
 

《回答》
 

最近話題になっているビッグデータをマーケティングに応用する傾向は今後様々な企業で普及してくると思います。しかし結論を申し上げますと、まだ時期尚早です。
 

おそらく現状のデータでは、あまりにも巨大すぎて各企業がマーケティングに生かそうとしても、コストばかりかかって有意義な結果は見いだせないでしょう。その理由は、まずビッグデータと称されるものはすべて「過去」のデータであり、必ずしも将来の需要動向を表しているものではないと言うことです。
 

もし仮にビッグデータがマーケティングに有効性を持つなら、それを活用したすべての企業がヒット商品を連発するはずですが、資本主義社会はある意味で競争社会ですから全企業がヒット商品に恵まれて勝ち残ることは現実的ではありません。と言うより、ヒット商品はそんなに簡単に生まれるものではありません。まして過去のいわば客観的最大公約数としてしか見られないようなデータを元に、売れる商品を開発すること自体コスト効率が良いとは思えません。
 

そもそもビッグデータは、その規模の違いこそあれほとんどが前述したように過去の人間や企業の購買形態や嗜好、属性、行動様式をデータ化したものです。その意味では、統計分野や役所での過去データの把握や解析には役に立つかも知れません。しかし民間企業で未来をめざすマーケティング分野では、おそらくほとんど役に立たないか、そのデータの取り扱いに四苦八苦するでしょう。
 

そこで、「いやそんなことはない。データ解析はすべてコンピュータで行えば抜群の効率化が期待できる」と言った反論が予想されます。しかしここにデジタル社会の大きな落とし穴が潜んでいるのです。仮にデータ解析用のアルゴリズムを設計したとしても、それは単なるプログラムにしか過ぎません。つまり同じようなプログラムを使用すればどんな企業でも同じ結果が現れてくるのです。それが競争社会におけるマーケティングに本当に役立つでしょうか?
 

もっとも分かりやすい例は、ネットショップ大手が行っている「リコメンド機能」です。今や多くのネットショップが行っていますが、これは過去の購買データを元にして「あなたの好みはこの商品でしょう」のように、聞きもしないのにうるさく画面に表示されるものです。それが「あっ、そうだ。これが欲しかったんだ」というのであればいいですが、現状では過去に購入した商品と似たような商品しか表示されません。ある意味ではユーザーに購入意欲の限定を強いることにもなりますし、むしろセリングとしてはマイナスの要因となります。
 

これがビッグデータの限界です。つまり購入者の過去の嗜好は解析できても、未来の嗜好まではデータとして出せないのです。こんな状況でマーケティングに役立つはずがありません。
 

さらに問題だと思われるのが、ビッグデータは誰もがどんな企業もが入手できる汎用的なデータだと言うことです。だからこそできるだけ早くビッグテータを取り込んでマーケティングに役立てたい、と言う気持ちが逸るのは理解できます。しかしこれは多人数での会議や情報共有と非常に似た性格を持っています。言うまでもなく、ヒット商品は会議で多くの意見を参考にしたり情報共有したからと言って容易く生まれるものではありません。
 

アップルのスティーブ・ジョブズが述べたように「欲しいものはあなたの心の中にある」のです。言うなれば、欲しいものは本人も気がついていない心の深層分野に存在していると言うことです。データ解析でその深層心理を顕在化することは、現在の技術、おそらく将来的にも不可能に近いでしょう。それほど人間の心理は複雑で先が読めないものなのです。したがって人間不在のマーケティングやデータ解析はまったく意味がないと言えます。
 

一方BtoB分野は組織購買であるため、ある程度ビッグデータが活用できそうにも思われますが、ここでも大きな罠が潜んでいます。まず企業(組織)は個人の集合体です。そして最終的な購買決裁は個人(組織人)が行います。組織購買の場合は個人の嗜好や感情は無視すべきですから、前述のような人間の複雑性の影響は受けないように思われるでしょう。だからビッグデータは役に立つと短絡的に考えがちですが、重要なのは取引企業の将来の開発志向や設備投資の傾向を解析することです。しかしこのような重要事項をビッグデータから解析されるような危険な情報を企業自らが発信するはずはありません。したがってBtoB分野においてもビッグデータの活用によって、期待するほどの効果は得られないと考えます。
 

ビッグデータの導入やマーケティングに生かすことについて、否定的な意見ばかり述べていますが、データの使いようによっては極めて有効な場合も考えられます。
 

前述したようにビッグデータは過去のデータであり、いわば過去の社会状況を表しているとも言えます。
 

売れる新商品開発で最も大事なことは、消費者も気がついていない「課題」を解決する商品であることは言うまでもありません。ビッグデータを元にして、社会における将来の課題を探索することはある程度可能ですし、それを新商品(ソリューション)開発に生かすことも興味深いことです。しかしここで気をつけなければならないのは、データ解析をプログラムで行ってしまうことです。そうすれば確かに過去の課題は明確化されるでしょう。でも競合企業が同じようなことをすれば、結局同じ結果を持つことになります。
 

重要なのはここからです。自社独自の技術や他企業とのアライアンスによって課題に対するソリューションをどのように開発していくのか、が企業に課せられた大きな課題でもあるのです。しかもソリューション開発はもうプログラムでは不可能です。結局は企業に属する個々人の勘や未来を見通す能力がものを言うのですが、残念ながら最近それらの劣化が著しく、その能力開発は至難の業と言わざるをえません。
 

したがってビッグデータをマーケティングに活用するには、まず困難であるにせよデジタルに頼らない個々人のスキルアップが先決で、それとワンセットで導入しないことには膨大なデータに手をこまねくだけになってしまいます。
むしろマーケティング分野ではなく、ビッグデータの特性から施設管理やパレートの法則等とリンクさせた生産性の向上をめざす方が現実的だと考えます。     

新BtoB社会の到来とマーケティングの行く末

昨年チュニジアのジャスミン革命に端を発した北アフリカの民主化運動は、BtoB社会のこれからのありかたを見る良い機会だった。ソーシャルメディアが急速に普及しながらも、それが企業あるいは国民一人一人にどのような影響を与えるのか、明確な結論を得ない中でおこったこの事件は、Twitterなどが持つメディア力をまざまざと見せつけた。

まったく面識のない人々同士がTwitterを触媒としてあたかも一つの頭脳を持ったような行動パターンを誘発する。この現象は独裁国家のみならず一応民主的だと思われている我が国も含めて、先進諸国でも最大の組織である国家の運営において大きな課題を投げかけた。ここまで行かなくてもすでに我が国ではBtoC社会が崩壊し、新たなBtoB社会が到来しつつあることを機会あるごとに述べてきた。

「個」の組織化(BtoB化)を行う触媒となるのは何もTwitterだけではない。あらゆるメディアが交錯している現在、しかもCGMといわれる誰もが情報発信できる仕組みの中では、個人個人が無意識下で特定の思想や見識に誘導される可能性は十分ある。原発事故後のマスコミ対応とは裏腹にCGMによってさまざまな情報が公にさらされ、その真偽が問われているが、今となってはどうもCGMに分がありそうだ。

マスメディア全盛の時代は、良い意味でも悪い意味でも世論誘導は比較的簡単だった。一時期話題になった劇場型政治などその典型だろう。しかしCGMが今後ますます普及することを考慮すると、もはやマスメディアによる世論誘導はまったく不可能になる。それがマスメディアの信頼性低下につながり、替わって人々は独自に構築した自分だけのネットワークにある情報だけを頼りにする。こうしてさまざまなネットワークにつながれた見ず知らずの人たちが、無意識下で組織化されてしまうのだ。もうすでに若年層では携帯ネットワークなど極めて強固な組織が出来上がっている。

こうなればBtoC分野では今までのような「個」の価値観を重視したコミュニケーション活動はほとんど効力がないと考えて良い。最近広告が効かないとかものが売れないという声を耳にするが、すでに社会全体がBtoB化し、個の意識が希薄になりつつあることを考えれば当然とも言える。

メディアの多様化に伴い縦横無尽に生成される虚構の組織化、つまりBtoB化がすでに始まっている。ここでは純粋な個の意識はさして重要ではなく、組織化された個がどのような意識を持つのか、が今後広告やマーケティング分野での大きな課題になる。何とも頼りないあの人が、どうして国をひっくり返す闘志を持ったのか、など群衆心理の研究は、BtoBコミュニケーションの魅力あるテーマだ。
こうなるとBtoBマーケティング分野では今までのように経営学一辺倒ではなく、社会心理学や組織心理学、さらには個と組織を絡めた精神分析学などの学際的な取り組みが求められてくるだろう。

宣伝力変革の時代(1/5)

①展示会が変わった。潜在顧客の発掘の場に。

10月ともなれば展示会シーズンたけなわで、マーケティング担当にとって最も多忙な季節だ。しかし昨年来展示会への出展を縮小する企業が多くなった。昨今の経済危機がその主な要因であるが、最も大きな理由は展示会への客足が遠のいたことにある。

「客が来ないから出さない」一見大義名分と思われるこの背景には、ネットの普及による展示会メディアの機能的な変化が隠れている。従来展示会は新製品発表など広報の場としての機能が優先されていた。しかしWEBサイトの活用で広報機能を持った展示会は衰退し、新たに別の機能を持ち始めた。顧客が抱える「課題」を解決する手段として実機を前にしたソリューションが提示できるメディアは展示会以外にない。展示会メディアは情報発信という広報機能からソリューション提供という顧客に対するいわばホスピタリティ機能へと変貌したのである。

もう一つ展示会に見逃せない特性がある。メールやWEBなど顔の見えないコミュニケーション形態が主流である現在、展示会だけはフェースツーフェースコミュニケーションが実現できる希有なメディアである。これに気付かない多くの企業は、客が来ないから出さないというが、自ら出展して客を呼ぶ姿勢が過剰なネットメディアの依存によって欠落してしまったのだろうか。

企業はそれぞれ膨大な見込み客(潜在顧客)リストを持っている。この見込み客に一人一人地道に声をかけ、展示会への集客を促しそこで有能な説明員(技術者)によるソリューションを提示する。これがホスピタリティマーケティングの第一歩と言える。いつまでも主催者の集客力に甘えるのではなく、自らの力で集客しなければならない。客が来ないと言って展示会に出さない企業でも、相変わらず通常の客先訪問には熱を入れているのだから。

米国の展示会リサーチ会社のデータでは、展示会営業は通常営業とくらべて2倍以上のセールス効率があるという。質の高い見込み客を招くことが前提であるならこの数字は当然だろう。WEB全盛の今、フェースツーフェースメディアとして展示会は今後もっとも注目できるメディアでもある。にもかかわらず展示会を衰退させているのはネットメディアの進化でも主催者の怠慢でもなく、出展企業の見当違いなマーケティング戦略によるものかも知れない。客が来ないから出展しないのではなく、客を呼ぶために参加することが、マーケットそのものを活性化することになる。

 

展示会



ASICAモデルからみた展示会の可能性(8/8)

12.ASICAモデルとこれからの展示会


BtoBコミュニケーションの過程であまりメディアの関与がない「I:inspection検証」や「C:consent同意/承認」のプロセスにおいても、展示会は有効だ。顧客企業の担当窓口との間で一通りの商談を済ませば一段落ではあるが、じつは顧客企業側ではその後の検証作業(製品の導入効果)や同意形成(決裁者による承認)プロセスが残っている。ここで十分なフォローがないと、一発逆転で他決してしまうことすらある。もし商談途中の案件があるなら、顧客企業の担当窓口だけでなく、上位の決裁者などを展示会に招くことも商談成立に効果がある。


ASICAモデルの最後の「A:action(購買/行動)」レベルでは、展示会は顧客の囲い込みに大きな役割を果たす。商談が成立した以降も次の商談に繋がるように、常に展示会に招いて課題探索を行う仕組みづくりが重要である。顧客は次の見込み客であることと、従来顧客の囲い込みよりも新規顧客の開拓の方にはるかにコストが掛かることを考えれば、むしろ展示会は従来顧客(将来の見込み客)のために用意されたホスピタリティの場と言えるのである。
 

BtoBの購買プロセスとASICA

今後さらなるネットの進化によって、BtoB分野においてもSNSやツイッターなどのソーシャルメディアが台頭してくるだろう。とかくこれらの目新しい手法に目が行きがちであるが、その根底に潜む要因にも目を向ける必要がある。インターネットが普及し、WEBサイトやブログで誰もが情報受発信することが可能になった後、SNSやツイッターが出現したことは、メディアがどんなに進化しても、最終的には人々が「対話」を求めていることを意味する。さらにSNSなどで、匿名ではなく実名でのディスカッションの重要性が議論されていることを考えれば、いずれリアルなFace to Faceコミュニケーションのありかたが再認識されてくるだろう。

そんな中にあって「接触メディア」として特異な性格を持つ展示会は、 Face to Faceマーケティングにおける将来もっとも注目されるべきメディアだと考える。
このように書けば昔返りのように思われるかも知れないが、文明は螺旋階段のように進化し、その過程で幾度となく原点回帰を繰り返すものである。

ASICAモデルからみた展示会の可能性(7/8)

11. 展示会効果の捉え方と効果測定例


さて、ここで展示会の効果測定についても考えてみたい。展示会の最終的な目的は「受注拡大(受注確保)」にあるだろうが、それ以外にも展示会は様々な機能を保有している。集客ありきの考え方も、展示会を広告媒体として見るなら否定はできない。要は、展示会を「広告媒体」として捉えるか「営業の場」として捉えるかによって、その効果に対する概念は変わってくる。


展示会には多くの来場者があり、当然そこではブランドの露出が行われ、認知度向上の効果がある。また、ブース内で顧客や見込み客とのコミュニケーションやソリューションの提示を通じて、顧客満足度の向上や需要創造の機会もある。展示会効果測定において、明確に数字として捉えることができるのは、「投資コスト」「来場者数(自社ブース・会場全体)」「商談額(受注額)」となる。これらの数字を用いて展示会効果測定の基準を作ることになるが、この数字以外の見えない効果、つまりブランドイメージやすぐには受注には結びつかないが、好意的な受注予備軍をどのように取り扱うかが課題として残る。

展示会効果測定の一例(1)
展示会効果測定の一例(2)

ここで端的な展示会効果測定の一例を示す。
まず展示会効果を「PR効果」と「セールス効果」の二つに分けて捉える。


a.PR効果=PR効果は来場者数を投資コストで除したものであり、単位コストでどれだけ多くの来場者が得られたかを示す。

PR効果=来場者数÷投資コスト → 認知効率

b.セールス効果=セールス効果は受注額(引き合い額・商談額)を来場者数で除したものであり、来場者ひとりあたりどれだけの受注が得られたかを示す。

セールス効果=受注額(引き合い額・商談額)÷来場者数 → 受注効率

このように展示会には二つの効果があると考えられ、最終的な展示会効果はこの二つの効果を掛け合わせることによって得られると理解することができる。つまり、

展示会効果=(来場者数÷投資コスト)×(受注額÷来場者数)

展示会効果=PR効果×セールス効果

となるが、ここではそれぞれの効果測定で分子と分母になる「来場者数」が相殺され、結果的には「受注額(引き合い額・商談額)」を「投資コスト」で除した数字となる。

展示会効果=受注額÷投資コスト

こうしてみれば展示会効果は単純に投資コストと受注額によって算出できるようであるが、実は相殺された「来場者数」の「量」ではなく「質」に大きな意味があることを忘れてはならない。この「質」の表現は数字では困難であるが、来場者の「質」の向上によってPR効果面でのブランド認知の「質」が向上する。また当然来場者の質が向上すれば結果的に受注額も増加し、セールス効果も向上する。

前述したように、展示会のROIを向上する条件として説明員の質の問題を取り上げたが、同時に来場者の質もまたROIに大きく影響する。この来場者の質を高めることが、6項で述べた集客の課題に合致する。またここでの来場者を、「展示会場全体の来場者」と設定した場合と「自社ブース来場者」と設定した場合とではやや意味合いは異なってくる。さらに、「受注額」を「引き合い額」や「リード件数(カタログ請求件数)」と置き換えることもできるが、各企業それぞれに営業形態や企業運営形態に沿った形で独自の効果算出式を構築すればよいと考える。

重要なのは展示会効果算出式で得られた数字は絶対的なものではなく、各展示会や年ごとの変化率の把握(トレンドの把握)として位置づけた方が良い。なお、受注成立にはセールスコールの質(引き合い処理の仕方)が大きく影響するため、多面的な営業活動の一環としてこの数式を捉えることも重要である。

また、数字では表れない様々な要素、例えば顧客創造やリレーションシップなども、最終的には後々の受注額に寄与するものと考えられ、またとりわけBtoB分野では受注成立までに長期間要することもあるため、この効果測定算式は継続的に使用しその結果のトレンドを数年に渡って把握していくことが重要と考える。

展示会効果測定の基本的な考え方

ASICAモデルからみた展示会の可能性(6/8)

9.説明員のスキルアップが展示会のROIを改善する


さて、唐突ですが「あなたがもっとも好きな企業は?」「その企業が好きになった理由やきっかけは?」と問われたらどう答えるだろう。BtoB分野では、おそらくほとんどの人がまず製品(技術)を思い浮かべ、その次にそれを購入したりサービスを受けた際の担当員の対応や、経営者の人柄がポイントになるだろう。広告がきっかけと答える人はごく僅かと思われる。

展示会においてこれを証明するようなデータがある。米国の Exhibit Surveys 社 が2006年まで毎年発表していた「Best-Remembered Exhibits」である。


展示ブースにおける記憶再生率と記憶の理由

これは展示会効果を、記憶される割合のレベルで測定し、展示会を構成する各要素との関係を定量的に把握したデータである。ここでは、展示会を構成する要素として「製品デモンストレーション」「製品そのもの」「文献(説明パネル)」「展示デザイン」「説明員」「ブランド認知度」などとし、一年間に開催された様々な展示会の終了後ある一定期間経ってから、「あなたがもっとも記憶している展示会」「その展示会の中でもっとも記憶している企業ブース」「その企業ブースがもっとも記憶される理由(要素)」についてアンケート調査を行ったものである。


表からわかるように、当然製品そのものに対する興味や製品のデモンストレーションおよびブランド認知度が高いポイントを占めているが、意外なのは、展示会の演出に重要な役割を持つと考えられる「展示デザイン」よりも「説明員の応対」の方が高いポイントを獲得していることである。これは今後展示会を運営していく中で非常に重要な課題になってくる。
従来、展示会には高いコストをかけて装飾を施し、どこよりも目立つように、またどこよりも格好良くデザインするのが広告マンとしてのプライドでもあった。その一方で、営業担当や技術者に対して、多忙な日常業務を割いて展示会の説明員として参加要請する後ろめたさもあった。


このデータを見る限り、展示会でのそれらの取り組みはまったく無意味であったことがわかる。もっともコストの掛かる展示ディスプレイに注力するのではなく、あくまでも製品とデモンストレーションが主役になるようなシンプルな装飾に止め、代わりに固定費として捉えられる説明員の応対の質を改善することが、展示会のROIを向上させる最大の近道なのである。
Face to Faceマーケティングや、人を集める重要性を述べた6項から8項までの内容とこれらを照らし合わせると、これからの展示会でいかに「製品」と「人」がその成否を握っているのか理解できる。


10.展示会のROI向上に寄与する説明員の条件

 

展示会を成功させる要因として、「説明員」の重要性が理解できたが、だからといって大勢の説明員をブース内に立たせるだけではかえって逆効果になる。よく目にするほとんどの説明員が待ちの姿勢で通路側を睨んでいる光景には尻込みしてしまう。そもそも自ら見込み客を招いたなら、待っているのではなく迎えに行かなくてはならない。来場者から話しかけられるのを待つような姿勢では、到底ホスピタリティは提供できないし、来場者の記憶にも残らない。


それではどのようなスキルが説明員に求められるのだろうか。まず来場者からの質問や課題に的確に答えられる技術的な知識を持っていること。話し上手であるが薄っぺらな知識しかない営業担当よりも、少々口べたでも自らの技術に誇りを持つ技術担当の方が説得力はある。
次に来場者の抱えている課題が十分に把握でき、場合によっては気付かれてない課題すら提示できるような当該分野での基本知識を備えていること。そして、課題に対して自信を持って明確なソリューションを提示できること。

ここまで行けばASICAモデルの「A:assignment課題」「S:solution解決策」「I:inspection検証」「C:consent同意/承認」のプロセスが満足できる。

展示会での説明を、単に製品説明という側面ではなく、来場者の持っている課題を引き出し、ともに考え、解決策を提示するという姿勢、つまり提案営業の心構えが展示会のROIを高める最大の要因なのである。そのため説明員には、単に自社の製品や技術だけでなく、顧客企業も含めた業界全体の動向を常に把握する能力が欠かせない。説明員と言うより、顧客企業のコンサルタンシーとして取り組む意気込みが求められる。

ASICAモデルからみた展示会の可能性(5/8)

7.ホスピタリティ・マーケティングから見た展示会


ASICAモデル提唱の際、BtoBビジネスの原点はホスピタリティにあると述べた。詳しくは「産業広告」の40周年記念号(2009年10月)をご覧いただきたいが、BtoBを構成する組織間の良好な関係性の維持にホスピタリティは不可欠である。では、展示会におけるホスピタリティとは何だろう。ホテルなどのサービス業界で通常用いられているこの概念は、客人をもてなすと言う意味があるため、米国の展示会でよく見られるギブアウェイ(景品)やブース内での飲食物の提供などと思われがちであるがそうではない。ホスピタリティの概念をもっとシンプルに「人に喜んでもらう」と理解すればわかりやすい。


自らが顧客側に立って考えればよく理解できるが、BtoB分野での顧客にとっての最大の喜びは、業務を遂行する上での難題(課題)の解決である。様々な課題を抱えた来場者が、展示会の場で課題解決できるのは最高のホスピタリティと言えるだろう。しかもWEBサイトなどビジュアルや音声だけに頼るのではなく、技術者と直に接して解決策を議論できるメディアは展示会以外には考えられない。だからこそ出展社側は、展示会で単に製品を並べるだけではなく、当然のことながら製品のデモを含めたスタッフ(技術者)から的確なソリューションを提供できる体制で臨まなければならない。


刺激反応型パラダイムの時代に流行っていた、コンパニオンにお仕着せのセリフを覚えさせて製品紹介するなどの手法は、現在の展示会では時代錯誤と言えるし、ホスピタリティの観点から見れば何の価値もない。くどいようではあるが、どんなにネットが普及しても技術者からFace to Faceでホスピタリティが提供できるのは、通常営業と展示会だけであり、営業効率から見れば展示会に勝る場はないと考えられる。
 

展示会におけるホスピタリティとは

8.セールス効率から見た展示会の価値


展示会を行動科学とマーケティングの両面から科学的にデータ解析する分野は、我が国では未成熟であるが、米国ではある程度研究されている。展示会におけるセールス効率についても詳細に研究されたデータがある。残念ながら原本は見あたらないが、過去に産業広告誌で紹介された石川忠弘氏の訳文をそのまま引用したい。


Business Marketing誌の記事から、「米国では、一回あたりの平均セールスコール費用は、292ドルかかり、取引成立までに平均3.7回のセールスコールを必要とする。したがって、成約取引一件あたり計1,080ドルかかる計算である。一方、展示会の場合、展示ブースへの入場者一人あたりのコストが185ドル、取引成立までの平均セールスコール回数が0.8回、一回あたりの平均セールスコール費用が292ドルだから234ドル、合わせて419ドルと、半分以下の費用で済んでいる。平均コール回数が一回未満なのは、取引がコールしないまま成立する場合があることを示唆している(産業広告vol.25 No.2)」


広大な国土をもつ米国でのセールスコールは確かにコストが掛かるだろうし、我が国ではまた違った解析結果になるのかも知れないが、少なくとも展示会でのセールス効率は通常営業のそれとくらべてはるかに高いことが見て取れる。また前述の記事紹介で重要な部分は、「取引がコールしないまま成立する場合があることを示唆している」のくだりである。つまり、様々な手段で得られた見込み客を、最終的に展示会というトレードの場で顧客に変えるビジネスモデルが米国では日常化していると考えられる。


その前提には、日頃から営業担当は見込み客のデータベースをしっかり把握し、効率の悪い客先訪問ではなく、展示会の場で取引を成立させると言ったビジネスモデルが必要になってくる。これはまさに「市」が営業効率を求めた結果として形成されたケースと同じと言える。
 

セールス効率からみた展示会の位置づけ

ASICAモデルからみた展示会の可能性(4/8)

6.人が集まるのか、人を集めるのか


昨年来我が国に限らず世界的に展示会の集客が低下してきている。もちろん不景気の影響が大きいと思うが、その原因は他にもある。

「この展示会は来場者数が少ないから出展しない」という声が当たり前のように聞こえてくるが、そこには集客は誰か(展示会主催者)がやってくれるはず、という甘えが隠れている。じつはこれが大きな勘違いであることに、多くの人は気付いていない。刺激反応型パラダイムの時代では、当然ながら刺激を求めてあちこちからわざわざ展示会に人はやってきた。しかしパラダイムが変化した今、交通費を払ってまでむやみに展示会に出かける人は少ないだろう。

展示会は、もはや黙っていては人は来てくれないものと認識すべきである。

経費削減の中、展示会に出展しなくても顧客訪問を中止する企業はない。それは課題を抱えた見込み客が存在するからで、その見込み客を展示会に誘うのがじつはマーケティング力なのである。どんなに頑張っても1日に訪問できる顧客数はせいぜい10件程度だろう。そんなに効率の悪い営業活動を行いながら、その何倍もの見込み客と接することができる展示会になぜ人を呼ばないのか。

自社が持っている膨大な見込み客にどれだけアプローチがかけられるか、それを出展企業すべてが行えるかによって展示会の価値が決まってくる。他社が集客した見込み客のおこぼれを期待するようでは、先が知れている。アプローチの仕方も案内状だけを送付して後はなしのつぶて、というのはほとんど効果がない。展示会直前には少なくとも電話やメールで顧客に来場を促すくらいの通常営業と同じ心遣いが必要である。

ちなみに筆者が以前行った自社の調査では、同じ展示会で案内状だけを送付した年と、開催直前に電話フォローした年とを比較してみると、電話フォローの年に25%の集客向上があった。

ここでもう一度展示会の原点である「市」の成り立ちについて振り返ってみよう。「市」が、物を探し歩く非効率の改善と物財交換のための効率的な「場」として成立し、そこで情報交換もなされたことを考えれば、顧客側からは、あちこちソリューションを探し回らなくてもそこに行けば様々な課題解決策が一堂に得られる場として展示会を捉えることができる。また出展企業側から見れば、あちこちに顧客訪問しなくても、そこに行けば見込み客が一堂に会している場として展示会の価値を認めることができる。つまり展示会構成企業がそれぞれに、見込み客への集客に最大限の努力を払うことは「市」の形成要因であった価値交換効率改善の最大の条件なのである。

ASICAモデルからみた展示会の可能性(3/8)

5.インターネット時代の展示会の役割と本来の価値(Face to Faceマーケティング)

インターネットの普及によって広報メディアとしての展示会は、ほとんど価値がなくなった。だからと言ってこれから展示会は発展しない、と考えるのはあまりにも早計である。とりわけ景気が低迷している時期には、展示会に参加しない理由に広報メディアとしての効果論をアリバイにする場合が多いが、そこでは展示会の本来持っている価値がほとんど議論されていない。
WEBサイトをいくら充実させても、そこで顧客と握手ができるのか?最先端のツイッターなどの手段を用いても、WEBサイト上で顧客の目を見ながら直接会話ができるのか?さらに顧客はWEBサイト上で実際に製品を手にとってその機能を確認できるのか?
様々な分野でネット至上論が展開されているが、唯一展示会だけはネットで代替できない機能を持っている。「接触メディア」としての機能である。Face to Faceマーケティングの一環として、顧客と直接面と向かって話せるメディアは展示会以外にない。もとより我々は五感を駆使して情報処理している。この五感がバランスよく機能して初めて正確な情報処理が可能になる。インターネットなど新しい技術が旧来のメディアを駆逐するような論調を目にするが、じつは五感を完備したメディアは旧来のリアルメディアである場合が多い。逆に言えば、インターネットメディアには視覚と聴覚の二感しか備えていない危うさがある。さらに旧来メディアのなかでもオーディエンスに対する広義の触覚を備えているメディアは展示会だけである。
この「接触メディア」機能が、展示会の本来の価値なのである。今後ますますネットの普及に伴って、やがて五感が満足できないネットに飽き足りた時、Face to Faceマーケティングの重要性が必ず見直される。ASICAモデルから見ても、Aから最後のAまですべてのプロセスをカバーできるメディアは展示会以外にない。インターネットの普及で代替できるのは展示会場で集めたカタログであり、展示会そのものではない。むしろ顧客との接触が最大の機能である展示会では、情報発信機能ではなく顧客とのコミュニケーション機能を重視した方が良い。 
そのコミュニケーションの核になるのが、ASICAモデルの課題(Assignment)探索であり、課題解決策(Solution)の提示である。一般に公開されている情報は展示会では必要ない。WEBサイトにも公開していない「顧客企業それぞれが持つこれからの課題と解決策」について顧客と議論できる場として展示会を運営すべきである。そのため、展示会には製品展示の場だけでなく、セミナーやワークショップなど双方向の仕掛けを導入しなければならない。つまり、五感をフル活用できる場として展示会を演出することが重要になってくる。
WEBの普及による展示会価値の変化

ASICAモデルからみた展示会の可能性(2/8)

3.マーケティングパラダイムの革新が展示会を変えた
 
消費行動プロセス「AIDMA」がローランド・ホールによって提唱されたのが1920年代であり、この一世紀近くにわたっては広告界やマーケティング界には新しい理論が満ちあふれ、それぞれが確固たる地位を築いた。そしてその根底にあった概念が、AIDMAモデルからもわかるように「刺激によるAttention」であった。これを後押ししたのが、物や便利さへの憧れであり、物に関する情報への切実な欲望であった。これらに対する刺激的なビジュアルやコピーが広告をいきいきとさせ、展示会でもことさら他社よりも目立つことが要求された。
刺激反応型パラダイムと称されたこのマーケティングの枠組みは、先進諸国では大量消費絶調の1990年代に最高潮に達した。我が国では○○博覧会と銘打ったイベントがあちこちで開催され、通常の展示会でも、主役であるはずの製品(物)はさておき、コンパニオンや映像を多用した派手な演出が目立っていた。やがて物が充足し、情報に飽き足りた社会は、もはや小手先の刺激には反応しなくなった。代わって物の価値表示(価格)と本来の価値との妥当性が問われ、その選別が慎重に行われるようになった。価値交換パラダイムへの変貌である。あわせて、物に充足した我々は物の活用や効用に対して新たな課題を持つようになる。飽食の時代を経て、食べることよりもダイエットや健康食品に課題の矛先が代わった現代のように。
しかし課題そのものと解決策の提示がマーケティングの新たな枠組みとして成り立ちつつある今でも、依然として広告や展示会で、従来のような刺激反応型のパラダイムに準拠した手法をとることが現在でも多く見られる。展示会は博覧会に代表される刺激反応型パラダイムから、課題解決のための価値交換型パラダイムへと変貌したことを念頭に置くべきである。
 
4.インターネットの普及が展示会の役割を変えた
 
マーケティングパラダイムの変化に呼応するかのように現れたインターネットによって、展示会の役割は大きく変わった。従来、展示会は情報収集の場として重要な役割を担っていた。新製品や新技術の調査と言う目的が展示会にはあったが、それ以上に我々が血眼になったのは、自社に関連する製品や技術のカタログ集めだった。各ブースで集めたカタログを、両手一杯にぶら下げて会場を後にする光景は当たり前で、展示会場では、持ちきれないカタログを発送する宅配便の受付があった。展示会は情報収集の名を借りたカタログ集めの場であったのだ。
それがインターネットによって一変する。1995年から翌年にかけて普及しだしたインターネットは、企業の情報発信機能を根底から変えた。さらに情報の受け手側であるオーディエンスもWEBサイトを訪問することによって主体的に情報収集することが可能になった。こうなれば情報収集の場としての展示会の機能はもはや意味をなさなくなってくる。高額なコストをかけてブースディスプレイを行った結果、得られた1件当たりのリード(引き合い)コストは、他の広告メディアの到達コストと比較すると圧倒的に不利なのは誰の目からも明らかであった。「これからはWEBが展示会の代わりになる」とか「これからはオンライン展示会だ」といった声が聞かれ、さらにはインターネット時代に展示会は不要とまで言われるようになってきた。
確かに広報機能としての展示会の役割はWEBサイトに代替されるが、そもそも展示会の機能がそれだけだったのだろうか。逆に考えれば、我々は刺激反応型パラダイムの中で、展示会の本来機能を忘れ、とにかく目立つことや誰でもいいから人を集め、ブースが賑わっていることが展示会の価値であるという勘違いをしていたのかもしれない。

ASICAモデルからみた展示会の可能性(1/8)

1.展示会の原点は「市」にあった

古代、人がまだ貨幣を持たず、物財のみの取引を行う場として生まれたのが「市(いち)」であった。これは物財交換を行うのに適当な場所として、交通の要所や寺院、神社の近辺に自然発生的に生じたものであり、ここで商取引の原型となる行為が行われていた。我が国では西暦210年に大和国(奈良県)で開かれた軽の市や、469年に河内国(大阪府)で開かれた餌香の市がよく知られている。この市の成立要件としては、まず人と物財が集まることにある。あちこちに物を探し歩くのではなく、そこに行けば様々な物があると言うように物財交換のための効率的な「場」として成立した。そこでは物財交換に合わせて情報交換もなされただろう。コミュニケーション手段がほとんどなく、どこに何があるのかさえもわからない情報が枯渇したなかで、この市の存在は商売の場としても情報メディアとしても価値があったと推測できる。そして等価交換が行われていた時代を経て西暦700年頃に貨幣が誕生した後は、物財を持たなくても商取引ができる場として市は劇的に進化していった。市がビジネスの場として市場(いちば)に、さらに現代に繋がる市場(しじょう/マーケット)へとその姿を変えていったのである。物財交換の効率性を求めて人が集まり、物が集まる。このことが現在の展示会のあり方を示唆しているし、展示会が見本市と言われる所以でもある。
展示会の原点

2.仮想市場としての展示会

市がさらに進化し都市が形成されるとますます経済は発展し、こんどは交換する物財そのものを効率的に製造する工業が誕生する。ここで生み出された工業製品は市場(マーケット)で交換され、さらに経済の発展に寄与することになるが、こんどは固定的なマーケットに限界が生じてくる。つまり、市の形成要因となった、「あちこちに売りに行く非効率」の是正である。市がこの是正のために物財を一箇所に集めたのと同様に、工業製品と人を一堂に集める仕組みが考えられた。その結果1756年には世界初の博覧会として「英国産業博覧会」が開催された。産業革命の足がかりとなる出来事だった。続いてナポレオンによってパリ工業博覧会が執り行われ、1851年にはイギリスで世界初の万国博覧会(ロンドン万国博)が開催されることとなる。このように地理的に固定化されたマーケットへのコミュニケーション効率の改善と、よりセグメントされた新たなマーケットを作り上げるために、仮想的なマーケット(市/市場)として博覧会は存在していたのだろう。これが、現在の展示会の原点である。つまり、展示会は仮想マーケットであり、物と人が集まるコミュニティとして成長した市の成り変わりと言える。
仮想マーケットである展示会(コミュニティ)では、ASICAモデルのトリガーであるA(Assignment/課題探求)が行われる。その結果はリアルなマーケットへのフィードバックを通じてさらに新しい技術や製品を誕生させる。そして経済の発展を促し、また新たな課題探求のために仮想マーケットが構築される、と言うようにリアルなマーケットと仮想マーケットがワンループとなってともに経済成長を促していった。博覧会や見本市は単に商取引の場としてだけでなく、課題探求とソリューション提示の場としても存在価値があったのである。
WEBの普及による展示会価値の変化

変革期におけるBtoB企業のコミュニケーション戦略と課題(4/4)マーケティングコミュニケーション

4.マーケティングコミュニケーション

セールスプロモーションの側面から見れば、マーケットの限定されたBtoB企業が、展示会やカタログなどのプロモーションにその多くのコストを費やすのは当然のことである。

ここで展示会でのコミュニケーションについて少し考えてみたい。BtoB企業の展示会はBtoC企業ほどではないが、相変わらず展示ブースのデザインに力点を置く場合が多い。展示会場の中でいかに目立つか、いかに人を呼び込めるかが重要な課題となっている以上それを否定はしないが、実は展示会において意外と知られていないのが「説明員の質」が来場者の記憶残留度にかなりの影響を与えていると言うことだ。

米国ののリサーチでは、来場者にとってもっとも記憶残留度の高い企業は、まず新製品の展示など製品に纏わるデモンストレーションが効果的であったかどうか。その次は説明員の対応が適切であったかどうか。3番目と4番目はブースデザインとプレゼンテーションが拮抗している。

意外にもオーディオビジュアルを使用したプレゼンテーションは記憶残留度にはあまり大きな効果は与えていないと言う結果が出ている。説明パネルに関してはほとんど影響を与えない最低点となっている。

これから分かるように展示会では製品のデモンストレーションと合わさって説明員がいかに来場者の問題解決に適切なサポートを行うか、が最大効果を発揮するポイントだと思える。展示会場はまさに顧客とBtoB企業とのコミュニケーションの場であるということなのだろう。

しかもエキジビットサーベイ社は展示会でのリード(引き合い)を元にした成約コストは、広告のそれとくらべて半分以下で達成できるとしている。マーケティングにおいて、展示会での説明員と顧客との充実したコミュニケーションはそのまま受注という対価に反映されるのである。その意味でも、展示会ではいかにして自社技術を熟知し、なおかつ適切なソリューションの提供と言うコンサルタント的な能力を備えた説明員を動員するか、が大きな課題と考える。

これと同じことがおそらくカタログにも言えるのではないか。とかく商品の特徴やセールスポイントを羅列してカタログとしての体裁を保とうとするが、今日ではもはや製品情報伝達メディアとしての機能はカタログでは薄れ、代わりに顧客の問題解決に対する明確な回答がその中に潜んでなければならない。こうして企画されたカタログは、展示会の説明員と同様にまたそれを駆使する優秀な営業担当によって、そのメディアとしての価値が増幅され、マーケティングコミュニケーションを完遂することができるのである。

2005年、ARF(米国広告調査財団)他はメディア評価に際し、従来の露出や到達率に替わって「エンゲージメント」を指標とする旨の提言を行った。このエンゲージメントは我が国では約束とか絆と解釈されているが、私は「共鳴」と理解している。つまり露出に意味があるのでなく、いかに社会やエンドユーザーの共鳴を得られるか、が今後の広告に課せられた命題なのである。さらにARFはエンゲージメントを得るためにコンテキスト(文脈)が重要であるとしている。

クロスメディアによってあらゆるステークホルダーへメッセージする場合、それぞれのメディアで展開されるコンテンツの意味的な関係性が大変重要であると言うことだろう。その意味でも前述のブランド、プロダクト、マーケティング(人)の織りなすコミュニケーションが、一貫した文脈をもってなされて初めて社会の共鳴を得ることが可能となり、共鳴によってそのメッセージの持つ力はますます強化され、成長していく。今、まさにコミュニケーションパラダイムの変革が始まったのである。

変革期におけるBtoB企業のコミュニケーション戦略と課題(3/4)プロダクトコミュニケーション

3.プロダクトコミュニケーション

BtoB企業にとって商品やサービスが最大の露出機会であることは意外と見過ごされている。BとC企業には遠く及ばない広告宣伝予算で、そのほとんどがカタログや展示会などのプロモーションツールで消化され、必然的にマスメディアを利用したブランド露出は制限されてしまう。

そんな中で、実はもっともエンドユーザーとの接触を保っているのがこの商品やサービスなのである。これはブランドコミュニケーションにも大いに関係するのだが、たとえば、「あなたは昨日見たテレビや新聞で、○○会社はどんな広告をしていましたか?」と問われた場合、ほとんどの人は明確に答えられないであろう。ここで言う○○会社がたとえBtoC分野の誰もが知っている企業であったとしてもだ。

言うまでもなくブランド形成における広告の役割は、その累積記憶度が大きく影響する。ブランド認知から記憶にまで昇華させるには、気が遠くなるほどの広告露出機会があって初めて可能になる。

一方上記の質問に代えて「あなたは○○会社にどんなイメージを持っていますか?」との質問では、接触機会のある企業に対してはほとんどの人が答えることができる。しかしここで想起されるブランドイメージはどのようにして形成されているのだろう。

おそらく過去に購入経験があった商品やサービスに対する何らかのイメージが、潜在的に影響しているものと思われる。あるサービスマンの理不尽な対応や想定外の商品の不具合がその企業のイメージを著しく損なってしまうのは誰もが経験することである。

このように商品やサービスが我々に与えるブランドイメージは、広告のそれとは比較にならないくらい重要な役割を演じている。その意味でも、商品やサービスに対する質の向上はブランド形成の最重要課題と言える。

またたとえBtoB商品であっても、心地よい作業空間の提供という観点から製品デザインにも一通りの質を与えるべきだろう。潤沢な広告宣伝予算を持たないBtoB企業にとっては、製品やサービスそのものがマスメディアであると捉えることができるし、それと接触したエンドユーザーそのものがまたメディアとなってブランド形成に一役買ってくれるかも知れない。

変革期におけるBtoB企業のコミュニケーション戦略と課題(2/4)ブランドコミュニケーション(2)

2.CSRの一環としてのブランドコミュニケーション

最近CSRや企業の説明責任ということが注目されているが、実はこの「企業の説明責任」が従来はほとんど行われていなかった。説明責任というと、事故や事件などネガティブな事柄に対しての説明責任と捉えられがちであるが、企業活動そのものに対して、また商品や技術そのものについて消費者に限らず社会全般にわたってきちっと説明する責任が、企業にはある。

そんな企業PRをしてもものは売れないよ、というのが企業経営者の常であろうが、口喧しくCSRなどというのならまず社会に対して自社の技術や優位性を分かり易く伝えるのが先決だろう。20世紀はとにかくマスメディアによる露出で商品の販売優先だったが、21世紀は各企業の持つ独自の技術や開発姿勢を、せめて高校生でも分かるような平易なメッセージで企業を売る時代だと言える。

いわゆるエクセレントカンパニーとか多額の資本を担保としたマスメディアでの露出によって注目される企業が多い一方、我が国にはほとんどブランド露出が行われていないにもかかわらず、世界でもまれに見る高度な技術を持った中小の企業が多く存在する。これらの企業がもっと自社の説明責任を果たしてもらいたいし、そうすることによってとかく物づくりの疲弊が云々されている中で、国民の企業を見る目や我が国の技術力への自信も深まってくると思われる。

WEBサイトを利用したこれらの情報開示は、極めて低コストで可能であり、しかもサイトへのアクセスが今ではURLの打ち込みよりもグーグルなどの検索サイトからの訪問の方がはるかに多いことを考えると、知名度のほとんどない企業でも十分な効果をもたらすだろう。

「いやあ、うちはネジしか作っていませんから、そんな情報誰も見ませんよ。」といわれるかも知れないが、BtoCの分野で我々が日常目にする商品には必ずこのネジなどの部品を含む。部品の優秀さが最終商品の品質を決定づけることは言うまでもなく、似たり寄ったりの過剰な商品に囲まれた現代は、むしろ部品の優位性がその商品の価値を差別化する時代とも言える。

事実最近は最終商品のメーカでさえ、商品の差別化のために使用部品の特異性を売りにしているケースを見受ける。こんな中で部品メーカがその技術を分かり易く社会にアピールすることは、ブランドコミュニケーションの第一歩だろう。

ではブランドコミュニケーションにおける演出はどうすればいいのか。マスメディアでのそれは、情報発信者である企業側がある意味では情報操作することができたし、実態にそぐわない華美なブランド演出が横行していた。しかしネット時代ではむしろ情報の受け手側、つまり社会や消費者の側にその判断が委ねられることになる。

ここではまず正確な情報を分かり易く伝える、というコミュニケーションの基本が最も重要になってくる。そのバックボーンには、企業自らの技術や商品に対する思い入れと自信があってこそ、初めて可能になる。

最近はブランディングコンサルタントなどにブランド演出を丸投げするケースが見受けられるが、まずは自社で今一度独自の技術とそれが社会に与える影響や効果を見つめ直すことが必要であろう。

ネジ1本でも技術の進歩や社会の発展に欠かせない力を持っているのであるから。自社の思い入れそのものがブランドであり、ブランドコミュニケーションとは、その思いを企業の説明責任と言う側面から社会にメッセージすることだと思う。

変革期におけるBtoB企業のコミュニケーション戦略と課題(1/4)ブランドコミュニケーション(1)

1995年頃から普及しだしたインターネットによって、コミュニケーションメディアのあり方が大きく変わった。とりわけ、BtoB企業にとって、今までは先端の営業担当でしか接触し得なかったエンドユーザーから、直接コンタクトを得ることができるこの仕組みの誕生は、企業活動にも少なからず影響を与えつつある。

しかし一方で、今までいわば密かに顧客と接触して与え与えられた情報を、誰が見るかもわからないネットで公開することに大きな抵抗感を持つ企業も見受けられる。BtoB企業は言うなれば今まで極めて閉鎖された社会の中で、その存在価値を維持していたとも言えるだろう。確かにセキュリティをはじめとしたネット社会特有の問題を抱え、いまだに社内LANから動画などの閲覧は禁止という企業も少なくない。

重要なのは、ネット社会の弊害というネガティブな側面を眺めつつ、50年に一度あるかないかのこのコミュニケーション変革を自社の企業システムにどのように植え付けていくか、が課題となる。

今後インターネットはまた新たな進化を遂げ、いわゆるWEB2.0に代表されるような社会や顧客を巻き込んだコミュニケーションダイナミズムが展開されようとしている。ここでも企業がもっとも嫌う情報のリークや個人認証の問題を抱えているが、時代は急速に移り変わろうとしているのも事実である。

いずれにしても、従来のいわばリアルな営業(コミュニケーション)活動と、ネットでの先端的な営業活動とのけじめを明確につけ、それぞれを共存させる仕組みづくりが必要となる。ここでは、このような社会的な背景を睨みながら、BtoB企業がなし得る4つのコミュニケーション(ブランドコミュニケーション・プロダクトコミュニケーション・マーケティングコミュニケーション・ヒューマンコミュニケーション)の形態とその課題について述べてみたい。

1.ブランドコミュニケーション

BtoB企業の多くは売上高広告宣伝費率が低く、マスメディアを駆使したブランド戦略はどうも敷居が高い。ブランディングに成功しているBtoB企業もあることはあるが、そのほとんどは企業規模も大きく多額の広告宣伝予算に裏付けられたマスメディアでの露出の効果と言える。もちろんその背後には綿密なブランド戦略が存在するのだろうが、要は予算の問題が欠かせない。ほとんどのBtoB企業はとてもマスメディアを利用したブランド戦略など考えられないと言うのが正直なところだろう。

しかしインターネットはこの難問を見事に打開する。WEBサイトの構築はそのデザインや仕組みによってコストにも大きな幅があるが決して多額の費用を必要とするものではない。このWEBサイトを利用したブランドコミュニケーションは、コストパフォーマンスから見ても妥当性が極めて高い。しかしここで壁になるのが前述した情報公開での及び腰の姿勢である。情報公開に対してこのアレルギーがある以上、これからますます進化するネットコミュニケーションから置き去りにされるのは目に見えている。今の時代はいくら隠そうとしても自然と漏れるものであり、むしろ漏れる以上に新しい情報をどんどん公開していく企業姿勢そのものが、ブランド形成の大きな要因となるのである。

一方、新聞広告やテレビCMなどでも最近BtoB企業が活発にメッセージしているのを見かける。これはBtoBよりむしろBtoS(Society)と言った方が適切と思うが、特定の人(C--Consumer)や企業(B--Business)にではなく、社会全般に対して企業の存在意義を訴えていこうとするものだ。

実は私自身は今後マスメディアではこのBtoSコミュニケーションが主流になってくるものと考えている。その背景にはやはりインターネットの存在がある。ネットによってあらゆる情報を入手することが可能となった。そこには正確な情報もあり当然間違った情報もあるが、受け手はそれぞれの情報を自在に組み合わせてひとつのイメージを自らの中に構築する。

BtoC分野ではたとえば価格comなどによって使用者からの新鮮な情報を得ることもできる。これは企業が発信する情報よりもむしろ信頼度が高く見なされる傾向があり、こと商品情報に関していえば、最近問題視されている広告の売る機能が低下しつつあることにも関連していると考えられる。もはや広告によっていくら商品の優位性を伝えようとも、使用者の正直な評価には太刀打ちできない構図がここにある。

それに替わってBtoSでは、社会に対して企業の存在意義や社会が抱えている様々な課題に対しての企業としての考え方などを独自のメッセージとして提示し、オーディエンスとともに考えると言う姿勢がこれからは重要になってくる。

つまり、企業側から一方通行的にブランド認知を強制するのではなく、オーディエンスとの共通課題に対する理解のプロセスで、ブランド認知という付加価値を得る手法である。

売りに結びつくBtoB広告の実践

(4)広告(独自メッセージの発信メディアとして)

BtoBマーケティングでは複数の組織人の関与がある、と述べたが、実はこれからの広告の役割として最も重要なポイントが、そこにある。巷で言われているように、広告ではものは売れない。広告で売るのではなく、売れる仕組みを作るのが広告のメディアとしての価値でもある。BtoBビジネスでは製品購買に際して多様な立場の組織人(決裁者)の関わりを受ける。購買担当窓口と決裁者の当該製品に対する価値認識も当然異なる。

購買プロセス

ここで重要なのは、製品そのものではなく、製品を提供している企業に対する認識の度合いである。この認識の度合いであるが、得てして認知度や知名度が重視されるが、そうではなく企業の独自の価値観や哲学と言った、人に置き換えれば人格に相当するような部分がどの程度認識されているか、と言うことである。

マス広告での対応は、下記の2点がこれから重要になる。

(a)売るためでなく、売れる仕組みづくりのための広告

(b)独自メッセージの発信がCSRに結びつく

正直なところ、最近の広告はどれも100%は信用されていない。当たり前のことであるが、企業は自社や自社製品を悪く言うはずはない。そのことをマーケットや社会は充分理解して、広告を見ているのである。「この製品は凄いですよ!」とか「我が社は素晴らしいですよ!」と言っても、それを頭から信じる人はまず無いだろう。これからの広告では、自社や製品の優位性を口うるさくアピールするのではなく、「我が社はこんな考えを持っています」とか「この課題に対して我々はこう考える」といったその企業独自のメッセージを発していくことが重要になる。

近頃目にする地球温暖化に対する各企業のメッセージが、あたかも申し合わせたかのようなお決まりの文句で体裁を整えられているのを見ると、その企業独自のメッセージを伝えるには相当な勇気がいるのかも知れない。しかし、もう横並び感覚は捨てて、もっと自信を持って発信したい。初めは気にも留められなかったメッセージが、何かのきっかけで頭をもたげてくることもあるし、この方が記憶定着度は高くなる。

最近、WEBの普及で新聞は読まれなくなったと言われるが、企業内の上位決裁者である社長やその周辺は、むしろWEBよりも新聞を見る機会の方が多い。社用車の中でインターネットは難しいが、新聞は読める。地下鉄の中でWEBブラウジングは厄介だが、新聞は読める。

こうしてその企業の為人が組織人を含むあらゆる人々に理解され、信頼され、記憶されることで、ひいてはBtoBビジネスでの購買決裁に有利に働くと考えるべきであろう。

最近はレピュテーションが注目されているが、好ましい評判を意識して力づくでプロモーションするのではなく、このような根気強い独自のメッセージの継続がレピュテーションに繋がると理解した方が良い。

その意味では特に新聞広告はこれから注目に値すると考える。

従来のような「売り」を前面にした広告でなく、「独自のメッセージ」を伝え合うような場にしていきたい。つまり、企業が保有する独自の技術や製品、人材で、社会をどのように発展させようとしているのか、どのような世の中にしていきたいのかを提言する広告である。いうまでもなく資本主義社会では、企業が最も力を持っている。それを広告というメディアを通して、社会づくりに活かしていくべきであり、これこそが真のCSRと言えるのではないだろうか。現在では公共広告機構が最もこれに近い活動をしているが、できれば各企業が自社の独自技術に根ざしたメッセージが欲しい。

こんな広告が乱舞する新聞ができれば、確実に企業がリードして社会を変えていくことも可能になる。

なお、このメッセージは企業独自の技術や製品から生まれている以上、マス広告だけでなくあらゆるメディアで整合性を持たなければならない。それによってクロスメディアは自然と達成できるものである。

6.もう一度ホスピタリティを。

広告が効かないことを新興メディアの台頭のせいにしてはならない。

この項では、企業購買のプロセスモデルとして提唱したASICA理論」については言及しなかったが、選択可能情報量の爆発的な増加とメディアの進化によって、確実に購買モデルに変化が生じてきている。また最近は特に経済合理性を追求するあまり、「人」と言う数字では語れない要素を無視するかあるいは無理矢理押し込んだ広告評価システムによって、間違った数字で広告を路頭に迷わせているふしがある。血眼になって数字を追いかけるのではなく、BtoBビジネスの原点に立ち返って、もう一度「真のホスピタリティ」を考える柔らかな気持ちを持ちたい。それによって必ず広告は、また新たな進化を始めると確信する。(完)

売りに結びつくWEBサイトの実践

(3)WEBサイト(ビジネスSNS)

WEBサイトはもはや広報メディアではない。すでにサイバーコーポレーションの域に達しつつある。企業とそれを取り巻くあらゆる情報が網羅され、自由に閲覧できるはずだが、残念ながらまだ情報の出し惜しみをしているサイトが少なくない。BtoBに限らずビジネスの場面では、いかに素早く情報がゲットできるかで勝敗は決まる。とにかく考えられる情報はすべて搭載すべきであろう。その情報を顧客が必要としているかどうかなどとか、競合企業の出方を探るとか、そんなことをしている暇はない。後は顧客や社会が必要とする情報に効率よくたどり着けるユーザビリティとSEOに専念すればよい。

WEBサイト運営での売りに結びつく対応は、下記の2点が考えられる。

(a)ソリューションサイトによるオンデマンド・ホスピタリティ

(b)ビジネスSNSの導入

WEB

サイバーコーポレーションである以上、現実の企業と同様の運営が必要となる。現在はまだWEB専任部署などで運営している企業が多いと思うが、将来的には、従業員一人一人が何らかの形でWEBに関与することになるだろう。ビジネス面で捉えれば、まず営業担当がそれぞれに自分のサイトを持ち、ここでWEBマーケティングを行う手法が早晩確立されてくると考える。ここでもオンデマンド・ホスピタリティの考え方が活かされ、営業が自分の担当している顧客ごとに異なったサイトを開設し、担当企業に適したソリューションを提示することで達成できる。ちょうどMyYahooのような仕組みを、BtoBサイトで実現することになる。そして最終的には、SFA(セールス・フォース・オートメーション)の一翼を担うことになる。ここでの課題は、いかにして顧客を自社のWEサイトで囲い込めるか、に重点が置かれる。ビジネスSNSの導入によって、ある程度それは解決できると考えられる。SNSPtoPCtoCの分野ではかなりの普及を見せているが、むしろクローズネットワークと言えるこの仕組みは、もともと閉鎖的なビジネス様式をもつBtoBでこそその真価を発揮することができるだろう。(続)

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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