河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

受注

展示会の効果測定手法について

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉕

《質問》
 

弊社は鋼材を主とするメーカーで年商500億円規模の中堅企業です。2015年は合計で12件の展示会に参加しました。ところがどうもその展示会の効果が有ったのかどうかよく分かりません。私は広報部門ですが営業担当者に問いただしても展示会効果はよく分からないという回答でした。ただ2014年に比べて展示会での引き合いは着実に増加しているため、社内では一応展示会の効果はあったと理解されているようです。しかし私は本当に展示会の効果がどのようにして測定できるのかまだ疑問点も多く社内の意見には懐疑的です。信頼できる展示会効果測定手法についてご教授いただければ幸いです。(鋼材メーカー・広報宣伝部)
 

《回答》
 

展示会効果については多くの企業で未だに明確に把握されていないのが実情です。その原因は展示会をPR(広告)と位置づけるかセリング(営業)と位置づけるか、が極めて曖昧なところにあります。
 

1990年代以前は展示会は主に広報宣伝部門の所轄になっていました。それはまだメディアが現在ほど発達しておらず、展示会もまた広報の一端を担っていたことがその理由です。ところが1990年代中盤以降展示会のあり方は大きく変化してきました。インターネットやWEBサイトの普及によって、展示会における広報の役割はほとんどなくなってしまったのです。未だにこの現象に気づかない企業が少なくありませんが、おそらくどの展示会でも1995年前後を境界にして来場者数は減少傾向にあったと考えられます。それは展示会で情報収集(出展社から見れば広報の役割)がWEBサイトで充分まかなえるため、あえて時間やコストを負担してまで展示会に行く必要がなくなったからです。
 

最近の展示会来場目的を各展示会ごとに見ても、情報収集は急減しています。それに代わって現れたのが商談や新技術の探索と言ったより実務的な目的なのです。
 

ここでよく考えてみれば、情報収集を目的とした来場者はほとんど購買意思はもとより購買決定権のない人たちばかりです。展示会をPRの場として捉えるならこれらの人たちにアピールするのは意味もありますが、展示会でのPR活動がいかに非効率的かは後ほど述べます。
 

このように現在の展示会はPRの場から営業やマッチングの場へと変化して来つつあることに気づかなければなりません。
 

さて前置きはこのあたりにして展示会の効果測定を明確に理解できる考え方を述べたいと思います。

展示会の効果として見なされるのは二通りあります。一つはみなさんご存じの「PR効果」です。これは来場者に社名や商品を見てもらい認知されることが前提になります。いわば企業PRや商品PRを行うことで、カタログ請求などの引き合い(リード)を得ることによって完成されます。これは大凡ブースへの来場者数に比例します。この意味でもブース来場者が多ければ多いほど展示会は賑わいを見せるのですが、このことが来場者重視の幻想が未だに払拭できない要因となっています。
 

もう一つの効果は「セールス効果」です。これは来場者から得られた引き合いを、後の営業活動によってどれだけ受注に結びついたかが問題になります。ここで重要なのが以前この稿でも述べた展示会終了後のトラッキングシステムなのです。とりわけBtoB分野では引き合いから受注まで最短で数ヶ月、長ければ数年かかるケースもありますが、いくら期間が長くてもきちんとトラッキングしておく必要性はセールス効果を明確にするためには欠かせないのです。
 

このセールス効果はほとんどの企業で曖昧に扱われてしまっています。その理由はトラッキングが徹底されていない事が最大の原因です。面倒なトラッキングはさておいて展示会の効果を来場者数でお茶を濁す傾向が、いつまでたっても止まらない理由がここにあります。
 

本来、展示会効果は「PR効果」と「セールス効果」の掛け算によって決定されます。
 

ではそれぞれの効果測定式を見てみましょう。まずPR効果は単一コストあたりの来場者によって計算できます。つまり投下コストでどれだけの来場者を得られたか、が基本的なPR効果となります。算式で表せば、分母にコストを、分子に来場者数を置きます。来場者が多くなればなるほどPR効果は増大することがこの算式で理解できます。
 

一方セールス効果は、来場者一人当たりどれだけ受注できたかによって決定されます。いくら来場者が多くても受注が少なければセールス効果は少なくなってしまいます。したがってここでは分母に来場者数、分子に受注金額(成約額)を置くことになります。受注額が増えれば当然セールス効果は増加します。
 

そして重要なのは展示会効果はこれら二つの効果の掛け算であることです。もう既にここまで記せばある程度の方はおわかりいただけると思いますが、この二つの算式をよく眺めてみれば、来場者数はPR効果式では分子に置かれ、セールス効果式では分母に置かれます。と言うことは二つの効果を掛け算すると分母と分子は同数ですからそれぞれ消去されます。その結果成り立つ算式は、分母にコスト、分子に受注金額(成約額)と変化します。この算式は言うまでもなくセールス効率(営業効率)を表しています。ここから導かれるのは、展示会はもはや来場者数は問題ではなくコストと受注金額という単純な要素によって決定されると言うことです。
 

このことが展示会は既にPRの場ではなくて営業の場であることを実証していると言えます。これを十分ご理解いただきたいと思います。
 

さて、とは言っても展示会でのPRも重要な目的ではないか、と反論があると思いますが、様々なメディアのPRコストを比べてみればいかに展示会でのPRは無意味かが理解できます。CPMで換算してもいいですがここではより簡単にオーディエンス一人当たりのPRコストを見てみましょう。電波メディアでは一人当たりの到達コストは0.5円〜3円程度ですし、新聞広告だと2.5円〜5円となります。WEBサイトの場合はサイト構築コストが大きくばらつきがあり明確ではありませんが、おそらく50円〜1000円程度でしょう。これに比べて展示会の場合は5000円から1万円もかかってしまいます。これだけ見ても展示会でPRするのはいかに非効率的かが理解できるかと思います。
 

ただ重要なのは電波メディアでもマス広告でもその目的は見込み客の獲得にあり、展示会の目的は見込み客の刈り取りの場(受注に寄与する場)であることです。したがって自ずとコストが大幅に異なるのは当然と言えましょう。
 

そして最も気をつけなければならないのは、見込み客の獲得を目的とするマス広告やWEBサイトでいかに質の高い見込み客を得るかです。そのために広告やWEBコンテンツは充分考慮しておく必要があります。つまり事業のクロージングの場である展示会のために、受注確度の高い見込み客を得る広告活動が連携していなければならないのです。
 

やみくもに来場者数を気にしたりせず、優秀な見込み客だけを展示会に来てもらうことを心がければ、上述した算式から必ず展示会効果は急増するはずです。

結論は、展示会効果は当該展示会が関与した受注をコストで割った数字と言うことになり、その推移を毎年監視していくことが大切です。

 

広告効果測定についてのご相談

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑥
 

《質問》

我が社では年々広告宣伝費が削減され、満足できる広告活動ができない状況です。その理由は弊社の経理部が「宣伝部はコストセンターだから極力広告コストを削減することが会社の利益に貢献できるため。さらに広告は効果があるのかどうかも曖昧であり、そのような不確実な業務に多大なコストは割けない」ということです。ここで質問なんですが、経理部を説得するために広告効果の測定をきちんと行い、そのデータをもとに予算折衝に臨みたいと考えており、そのための有効な効果測定手法があればご教示いただきたいと思います。(機械メーカー)

 

《回答》

広告宣伝費の削減は所轄部門にとっては悩ましい課題であり、近年ますますその傾向が強くなっていますね。その要因は何もかも「数字」で把握したがる経理部門の特性にあるようです。

まずご質問の広告効果測定についてですが、現在さまざまな効果測定手法が存在・提唱されています。しかし私はそのいずれもが明確な「広告効果」を測定するものではなく、特定の数値やデータを効果と称してカムフラージュしているに過ぎないと考えています。

たとえば広告のリーチやCPMなどの測定などは簡単にできますが、だからといってそれが効果に直結するものではありません。単にどれだけリーチしたか、あるいはどれだけ安価に到達させたかを見る指標としては理解できますが、それがどうした、と言うのが私の考えです。

広告効果の理解の仕方は比較的簡単です。というより、広告の特性を難しく考えず単純に割り切って役割分担に応じた効果指標を設定すればいいだけのことです。

まずマス媒体。とりわけBtoB企業ではマス広告によって商品が売れることはまずありません。したがってマス広告の効果測定指標は「引き合い件数(カタログ請求/問い合わせ)」と割り切るべきです。これは後に述べる最終の効果指標となる「受注額」の基盤である「見込み客」の獲得数を意味します。

次に広告かどうか微妙なメディアにカタログがありますが、これは広告と言うよりむしろセールスのための補助資材と理解できます。BtoB企業で素晴らしいカタログがあれば受注に結びつく可能性はあります。しかし大部分はカタログを補助資材として使用する営業担当の商談スキルによって受注の可否が問われます。

 したがってカタログの効果指標は「営業担当がどれだけ有効に商談できるか、の全体構成やデザイン/コピー」になってきます。しかしここで問題なのは、各社によって営業スキルも違えば営業スタイルも異なります。それぞれの営業風土に合致したカタログづくりがじつは最も重要なのですが、残念ながらどの企業も同じように製品説明に終始しているのが現状です。

WEBサイトの効果もマス広告と同様に「引き合い件数」が効果指標になります。オンラインショップサイトを持つ企業があるかも知れませんが、オンラインサイトは営業の場そのものであり、広告とは理解できませんので効果指標は単純に営業成績(受注額)となります。

そして展示会はもっとも効果が明確になりやすいメディアと言えます。展示会での効果指標はズバリ「受注額(商談額)」です。とかく展示会では自社ブースや展示会全体の来場者数を効果指標にしがちですが、これは明らかに間違っています。

そして重要なのは展示会での効果を上げるにはどうすればよいか。上述したマス広告やWEBサイトでの引き合い、つまり見込み客をどれだけ展示会に呼び込めるかにかかってきます。

簡単に言えば、マスメディアやWEBで得られた見込み客(潜在顧客)を「顧客」に転換する、言いかえれば見込み客の「刈り取り場」がじつは展示会なのです。したがって、展示会でいくら来場者が溢れかえって一見繁盛しているように見えても、彼らが見込み客でなければ何の意味もありません。

一昔前までは展示会は広報の場としても捉えられていましたので、来場者が多ければ社名や商品の露出機会が増えたことによるPR効果があったとされていましたが、結局刈り取り場の認識がなければ受注には結びつかず、展示会には人は来るが売上げにはあまり寄与しない、といった短絡的な理解に結びついてしまいます。

ところが展示会での効果指標が受注額となればまた厄介な事柄が生じてきます。BtoCならともかくBtoBの場合は、引き合いから受注まで1年以上かかるケースが少なくありません。そのために展示会事業で重要なのは、展示会での商談結果とその後のフォローを追跡できる「引き合いトラッキングシステム」の構築が重要なポイントになります。これを行わないと、結局当該商品の受注の根拠が不明確になり、展示会効果が明確に把握できないことになってしまいます。

こうやって考えてみるとすべての広告効果指標は「受注額」になります。マス広告はその前衛の役割を果たしており、展示会が最終ゴールと言えるでしょう。

ここで広告効果指標を「受注額」とすると、大きな問題が立ちはだかります。

前述のカタログの部分でお話しした営業担当の商談スキルが受注に大きく影響するからです。このスキルは数値として明確にできない「変数」ですから、効果測定の方程式には組み込むことはできません。私は広告効果測定をあまり重視しない理由がここにあります。乱暴な言い方かも知れませんが、商談スキルの低い営業担当を抱えている企業は、どんなに優れた広告を行っても最終目標である受注確保には繋がらず、結局その結果が広告を悪者扱いにしているのが正直なところです。

さてご質問の前段にある宣伝部はコストセンターという考え方は間違っています。経理部門は単純に宣伝費というコストを管理する部門だからそのように理解しているのでしょうが、広告はたとえばブランド広告や展示会での説明員の応対など、ブランドイメージの形成に大きな役割を果たしています。今やブランドはエクイティ(資産)と理解されています。しかしブランド価値やレピュテーションは数字には表れてきませんから、宣伝業務のコストばかりに目が行ってしまいそのように捉えられるのでしょう。

宣伝部はコストセンターではなくプロフィットセンターであることを再認識すべきだと思いますし、予算折衝時にもこのあたりをもっと協力に説得することが不可欠です。

ご質問の回答になっているかどうか心許ないですが、要するに各メディアの特性から効果指標がそれぞれ異なることと、展示会での効果がじつはマスメディアの広告効果に依存していることをきちんと整理してデータ化すべきだと考えます。そしてくどいようですが、広告効果の最終目標は数字では把握できない商談スキルに依存いていることが、広告効果測定をいまいち信用できない要因になっていることをもっと経理部門にアピールすべきだと考えています。

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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