BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑤
 

《質問》

中小規模オフィス向けIP機器の販売、サポートを担当しています。今まで自社で新規顧客開拓用にパンフレット等を製作してきましたが、どうも効果があるように感じません。今個人的にコピーの勉強を始めたばかりで、早速自社製品にもコピー技術を取り入れてパンフレットやウェブサイトリニューアルを考えています。効果的なBtoB広告コピーのポイントについてアドバイス等いただけましたら幸いです。』(IT企業)

 

《回答》

 まず御社自身で広告物のデザインやコピーライティングをされていることに敬服します。やはり自社の製品やサービスをもっとも理解し、なおかつ愛情を持って取り組めるのはメーカーやベンダーでしかありませんから。

さてパンフレットの効果についてですが、おそらくどんなにがんばってパンフレットを制作してもなかなか受注に結びつかない、ということだと思います。その理由はただひとつ、パンフレットが「製品説明書」になっているからです。

 パンフレットやカタログは広告などのマスメディアと異なり、営業活動でのツールとして用いられます。とりわけBtoB分野ではその傾向は強力です。つまり営業担当と顧客との間に入り、フェース・ツー・フェースで行われる商談活動をいかにサポートできるか、がパンフレットの大きな役割になります。

 パンフレットが製品説明書の機能しか持たない場合、商談の質は主に営業担当の商談スキル(プレゼンスキル)に依存します。ここではパンフレットは商談の一助にはなっても積極的に顧客を説得できる機能はほとんどありません。したがって仮に商談が成立しなかった場合、その責任はパンフレットではなく営業担当にあるということです。営業担当の質によって商談が左右されるならパンフレットの存在価値がないのでは、と思われるかも知れませんが、そうではありません。いくら営業教育を熱心に行ってもすべての営業が優秀だとは限りません。中には入社間もない見習いのような担当者が一生懸命に商談することもあるでしょう。

 そこで威力を発揮するのが「優秀な営業担当の代替としてのパンフレット」なのです。パンフレットを単なる製品説明書ではなく、優れた営業スキルで構成されたメディアとして位置づけるのです。極端に言いますと、営業担当が側にいなくても顧客はそのパンフレットを読むだけで、あたかも営業に説得されているような迫力を感じることができる機能を持たせるということです。

 一方商談の場は様々なタイプの顧客を相手に、それに見合った語り口調でプレゼンする能力が求められます。あまり技術に詳しくない担当窓口もいれば、口うるさい決裁者も相手にしなければなりません。本来なら顧客のレベルに応じて数種類のパンフレットを準備しておくのが好ましいのですが、コストの関係上そうもいかないでしょう。仮に一種類のパンフレットで対応するなら、製品やサービスについてのわかりやすい導入から始まって、その機能や仕様などハード面の説明、そしてもっとも重要なのが当該製品の導入によって顧客企業のどんなメリットがあるか、を数字を使って述べることです。

 BtoB分野では最終的に顧客企業にどれだけ(金額)の効果を提供できるか、が勝負の分かれ道になります。したがってパンフレットでここの部分を明確に提示しなければ説得力はほとんどありません。

 BtoB広告(パンフレット)でのコピーライティングで重要なのは、極力修飾語や曖昧な表現を排し、具体的な数値を基に述べることです。私がカタログセミナーなどでお話しをするときによく使う例なのですが、「極めて高速の電車で遠距離の街に行くと、最短の時間で到着できる」というところを「時速300kmの電車で600km離れた大阪に行くと、2時間で到着できる」と言い替えることです。とりあえずコピーライティングした後、無駄な言葉は削り数字に置き換えられるものはすべて置き換える、というプロセスを踏めば説得力のあるコピーができるはずです。

 冒頭にパンフレットは優秀な営業担当の代替メディアといいました。これをぜひ実践していただきたいと思います。その手法は御社でもっとも優秀な営業担当に2時間程度付き合ってもらいます。

 まず貴方が顧客側になり営業担当に「こんな商品を我が社に導入してどんな効果があるの?」など質問するわけですが、顧客企業の状況がよくわからなければ質問内容にも四苦八苦するかも知れません。また営業担当にしても貴方が同じ社の社員であるという心の緩みも出てくるかも知れません。もしこのような模擬商談が困難であれば、もっとも難解な顧客での商談にアシスタントという名目で同席することです。

 そして営業担当が商談する内容をすべて録音します。このとき重要なのは営業担当の素振りです。話のどの部分で大げさなジェスチャーをしたかとか、真剣な目つきであったかなどをメモしておきます。そして社に返ってから録音した内容をすべて書きおこし、前述のように無駄な言葉を取り除けば立派なコピーが出来上がります。 
 対象は優秀な営業ですので起承転結も明確でしょうし説得力も十分。パンフレットデザインで生きてくるのが席上でメモした営業担当の振る舞いです。大げさなジェスチャーや声が一段と大きくなった場面は重要なところですから、この部分に関連する写真や図表をダイナミックにあしらうのです。こうすれば営業担当の替わりができる説得力のあるパンフレットを作ることができます。

 しかもこのパンフレットは御社で最高の営業スキルが入っているわけですから、未熟な営業担当にとってもそのパンフレットを基に商談することによって、自然に営業スキルを学ぶこともでき、全社的な営業のレベルアップにも寄与できます。

 ここで注意するところがひとつあります。大変失礼ですが、もし御社の営業力が貧弱な場合、つまり優秀な営業担当が見当たらない場合どうすればいいのか、ということです。その場合は開発担当などの技術屋にお願いするのがいいでしょう。開発者は製品への思い入れが強く営業担当とはまた違った内容になるかも知れません。開発担当が顧客企業に直接出向く機会がないのであれば、展示会などに開発者を引っ張り出して来場者にぶつけてみるのもおもしろい手法です。

 いずれにしても単なる製品説明書は現在ではWEBで代替できますし、ドラマチックな商談の場にはやはりドラマチックなパンフレットが欲しいところです。

 なお、WEBサイトでもこの手法でコンテンツを作ることで、滞留時間を稼ぐことが可能になりひいてはパンフレットのPDFよりもはるかに説得力が増してくると考えます。