④ホスピタリティ・マーケティング。
喜ぶ広告、喜ばれる広告。
 

B2Bは企業や組織同士の係わりを示すが、この関係を良好に保つキーワードがある。「ホスピタリティ」だ。ここでのそれはサービス業で言われている「もてなし」とは異なり、単純に「相手に喜んでもらう」と理解したい。ASICAモデルでの課題探索もソリューションの提案も、最後の段階である購買後のフォローも、難しい理屈は抜きにして顧客に喜んでもらうことを念頭におくとわかりやすい。

ASICAモデルでホスピタリティが最大に生かされるプロセスは「解決の提示」だが、そのメディアとして展示会が有効であることはすでに述べた。しかし、最近の展示会では決してホスピタリティを要に取り組んでいるとは思えない光景に出くわす。似たようなタイプの営業担当による画一的で形式的なプレゼンテーションは、展示会に限らず通常の営業でも辟易とすることがある。相手の特性や隠れた課題を真剣に見極めて、最適なソリューションを顧客ごとに提示する気配りが不可欠なはずだ。

今、各企業とも社員研修には熱心だが、それによって画一的な人材を大量生産し、結果として顧客の心に響かない形式化されたメッセージを乱発するのでは本末転倒だろう。昔の様な「泣き落とし戦術」「ダボハゼ戦術」「スッポン戦術」など多様な営業スタイルとまでいかなくても、スマートさより個性を重視するプレゼンテーションスキルが求められる。
これは広告でも同じことで、他社に横並びのメッセージではなく、顧客に喜んでもらえる独自のソリューションを提示するために、前稿で述べたプッシュ型とプル型の特性を生かしたクロスメディア戦略が重要になってくる。

ホスピタリティは通常営業はもちろんだが、広告分野では展示会やカタログメディアで際立った効果を見せる。例えば、ASICAの検証・同意段階で顧客ごとに異なったカタログや、最高決裁者であるマネジャー・経営者向けのカタログなども、今ではオンデマンド印刷によって低コストで作れる時代になった。

もともと家庭を最小単位としてコミュニティを形成し、それに深く浸透した商店を軸に、御用聞きなど独自のビジネスモデルでB2B社会として進化した我が国は、ユニークなホスピタリティ概念を持っている強みがある。マーケティングでも広告の分野でも、もっとホスピタリティを注入できれば、感動的で説得力のある広告に生まれ変わるだろう。自分や社内が喜ぶのではなく、顧客や社会が喜ぶ広告創りを目指したいものだ。

ホスピタリティ