②課題社会の広告。「売る」から「売れる」へ。


前稿で展示会の機能が顧客の課題解決の場にあるとした。
ここでいう課題とは従来広告分野などでよく唱えられてきたニーズやウォンツとは異なった概念である。ニーズやウォンツはいわば欲望がもたらした「今、そこにある必要性」とでも理解できるが、課題(アサインメント)は「これから直面するであろう問題」といえる。場合によれば顧客ですら気付いていない将来の問題である。

ここ十数年で飛躍的に進歩したIT技術やそれに伴う情報量の急激な増加によって、もはやニーズやウォンツは十分に満たされ、替わって今までは表に出なかった潜在的な課題が問われるようになった。食欲などの原始的な欲が飽食の時代を経て満たされてくると、今度はダイエットやメタボ防止、健康食が注目されるように、文明社会では欲やニーズの充足が新たな課題を生むことになる。

最近広告が効かなくなったといわれるが、広告そのものに問題があるのではなく「今そこにあるニーズ」をキャッチコピーにしたところで、広告が陽の目を見る頃にはオーディエンスの意識の中ではすでにそのニーズは陳腐化し、新たな課題を抱えているから届かないのだろう。それほど時代は速いテンポで移り変わっている。顧客企業が抱える課題発掘と解決策の提案は、BtoB分野ではごく当たり前のビジネススタイルであった。

しかし急速な技術革新の最中にあって徐々にその手法も崩れかけ、BtoC分野では心変わりの激しい一般消費者の目先のニーズを追いかけるあまり、個人や社会の奥深くにある課題を見つけるノウハウが育っていないのかも知れない。課題の探求には多くの周辺知識が要求される。顧客企業との綿密なコミュニケーションはもちろんだが、むしろ顧客のコンサルタンシーとしてのナレッジマネジメントが不可欠になってくる。

ドラッカーは究極のマーケティングは「売れる仕組みを作ることである」といった。「売れる広告」と「売る広告」とは異なる。広告の分野で周知のAIDMAモデルにおけるアテンションやインタレストを重視して、ひたすら自己PRする広告は「売る広告」である。「売れる広告」とはBtoBBtoCに限らず顧客が将来遭遇すると予測される課題を提示し、その解決策(ソリューション)を提案する広告といえる。
高度経済成長期に端を発した欲望社会が終焉し、技術革新と情報過多による様々な問題に取り囲まれた課題社会を迎えて、広告もそろそろイノベーションが必要なのだろう。

ニーズとウオンツ