河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

インターナルマーケティング

インターナルマーケティングについてのご相談

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑦
 

《質問》

現在トップダウンでインターナルマーケティングに取り組むよう指示が来ました。どうやら弊社の社長がどこかの講演会で感激したらしく、我が社にもそのまま導入したいことがその理由のようです。プロジェクトには外部のコンサルタントが主導するように聞いていますが、正直なところインターナルマーケティングがどのようなもので、どんな効果があるのかよく分かりません。我が社ではお恥ずかしいですが巷で評判になっている新しい考えや仕組みづくり(特にカタカナ用語が多いです)に即座に反応して社内に大号令が発せられるのですが、未だにそれといった効果があるようには思えません。このインターナルマーケティングがどのようなものかご教示いただくようお願いします。(建材メーカー人事部)

 

《回答》

御社の事情はよく理解できます。最近マーケティングやブランディング分野に於いても新しい仕組みがどんどん提示され、それをいち早く導入しなければ、という焦燥感に惑わされている企業が少なくありません。

まず結論を申し上げますと、インターナルマーケティングはとりわけBtoBビジネスを展開する上で予想以上の効果を生むことが可能です。しかしそれにはプロジェクトの完全性が要求されますし、中途半端な活動ではかえって企業効率の低下をもたらしますので注意が必要です。

インターナルマーケティングに取り組む上での課題や取り組み体制についてお話しする前に、まずインターナルマーケティングそのものについて説明しておきます。

インターナルマーケティングはその言葉通り、社内の各部署を顧客と見なして接するコミュニケーション活動の一環として捉えられます。その結果がマーケティングに寄与すると考えて良いかと思います。

 たとえば貴方は人事部に所属されていますが、その隣にはおそらく総務部や企画室などがあると思います。それらの部署を社内の同僚や一員としてみるのでなく、顧客として接するのです。ここでは社内の仲間同士によるいいかげんなコミュニケーションや仕事は許されず、顧客に対するそれと同様に真剣勝負が要求されます。このように書くとなんだか堅苦しくてむしろ社内の人間関係そのものがぎくしゃくするように思えますが、そんなに難しく考える必要はありません。

拙著「ASICAれ!」に詳しく述べておりますが、顧客に対して最も重要な接し方は「いかに顧客に喜んでいただけるか」というホスピタリティが原点になります。この考えをそのまま社内に持ち込むわけです。貴方の隣の部署がどのようにすれば喜んでもらえるのか、それを考えながら通常業務を行っていくことが前提になります。もっと簡単に言えば、隣の部署が仕事をしやすいように、あるいは成果を上げやすいように関連情報や資料を提供したり、場合によれば作業の手助けをすることになります。

重要なのは単なる活動ではなくあくまでも企業の活性化と業績によい結果をもたらすことですので、「相手部署の成果が上がる」ことを目的にサポートしていくわけです。「自部署ではなく他部署の成果を上げる」ことがキーポイントになります。

このように自分のまわりの部署にいかに喜んでもらえるかを念頭において仕事を進めることで、お互いのコミュニケーション効率は格段に向上しますし、なんと言っても社内に活気が出てきます。そして相手に喜んでもらえるように仕事をすれば、今度は相手がこちらを喜ばせるようにさまざまな協力をしてくれるようになってきます。所謂互恵精神が自然に定着してくるようになり、それが社内風土にまで昇華する可能性もあります。

前段でインターナルマーケティング活動には完全性が要求されると言いましたが、それについてお話しします。これは大変重要なことです。

まず企業には多くの部署がありますが、中心には言うまでもなく社長が存在し、その外側には社長室や財務部があります。企業によってその解釈は違うかも知れませんが、一般的にはその後人事部や総務部が位置し、それに続いて開発部や製造部、そして広報部や宣伝部があり最後にもっとも企業の外側に営業部やサービス部が存在すると思われます。

 つまり、社会やマーケット、顧客に最も近いところに位置する部門は営業部やサービス部なのです。この流れ、要するに社会やマーケット、顧客に近い部署から中心に位置する社長までの組織フローをまず明確にすることがインターナルマーケティングを行う出発点になります。

そして重要なポイントは、前述した「喜んでもらう」つまりホスピタリティを提供するのは必ず自部署よりも外側(社会やマーケットに近い)の部門に対して行うことです。たとえば仮に前述のような組織フローであれば、人事部や総務部はその外側にある開発部や製造部、広報部、宣伝部、営業部、サービス部に対してホスピタリティを提供することになります。

 簡単に言えば内側の自部署よりも外側の部門がいかに仕事をやりやすくできるかの手助けをすると言うことです。こうして考えてみると組織の中心(もっとも内側)に存在する社長は、言うまでもなくすべての部門にホスピタリティを提供することになりますが、じつはこれが企業運営で最も重要な要素なのですが、意外とこれを重視している企業はそんなに多くはありません。

このように進めていけば最終的には顧客に最も近い場所にいる営業やサービス部門は全社からホスピタリティを受けることになり、そして営業やサービス部はその外側、つまり社会やマーケット、顧客にホスピタリティを提供する理想的な企業体制が完成するわけです。

このホスピタリティフローをよく見れば経営トップから最終ターゲットである社会や顧客にホスピタリティの「風」を送るという意味で「高気圧型ホスピタリティ」と言えます。しかし一方で現在多くの企業は逆の流れになっていないでしょうか? 社長はともかく財務部が最近は大きな力を持ち、各部署は予算獲得などで財務部に頭を下げて回ったり、顧客はそっちのけで社長や役員の意見に右往左往させられる光景はまさにインターナルマーケティングには無縁のフローなのです。私はこれを上層部に向かってホスピタリティの「風」を送る「低気圧型ホスピタリティ」と言っていますが、こうなれば企業は間違いなく凋落の一途を辿ります。

よく「内向きの社風」だとか「外向きの社風」などといった言葉を耳にしますが、それは上述したホスピタリティフローのことを言っているのです。

高気圧型のインターナルマーケティングは企業を発展させますが、低気圧型のそれは企業活動を硬直化することを充分念頭において取り組まれた方が良いと思います。

最後に、一言。外部コンサルを使って活動をはじめると言うことですが、インターナルマーケティングは社内だけで十分対応できる活動です。

ホスピタリティ・マーケティング

3.「ホスピタリティ」がBtoBマーケティングのキーワード。

上述のように、BtoB社会を進化させたエンジンは「ホスピタリティ」にある。これは現在のBtoBマーケティングを考える上で非常に重要なポイントとなる。最近当たり前のように言われている顧客第一主義とか市場志向主義が、真のホスピタリティに根ざしたものだろうか?。単に「市場に向かって」もっともらしく叫んでいるだけではないのか。顧客企業に何を提供すれば喜ばれるのか、顧客企業の発展のためにどんな貢献ができるのかを、損得抜きでまず考えることからBtoBマーケティングはスタートすると言っても過言ではない。

単に叫んでいるだけなら、八百屋の店先で「今日は大根安いよ−!」と大声で言っているにすぎない。八百屋の御用聞きのように、顧客企業の風土や技術レベル、将来に対する課題などを充分把握したうえで、その時々に応じて最適なソリューションを提供することが、本来のBtoBマーケティングなのである。そしてその原点には必ず、コミュニティ(顧客企業も含めた大組織)の維持を前提とした「ホスピタリティ」の概念がなければならない。

最近あちこちでWIN-WINの関係と言って、いかにもホスピタリティをかざしたかのような掛け声を耳にするが、所詮ビジネスは、詐欺でない限り価値交換と言うWIN-WINの関係が当たり前である。したがってWIN-WINGive and Takeは、ホスピタリティとは本質的に異なる関係性である。真のホスピタリティとは相手の懐に奥深く入り込んで、その実情を踏まえた上でいかにすれば喜んでもらえるか、貢献できるかに取り組むことであり、いわば顧客企業のコンサルタンシーとしての位置づけにあると考えられる。これがBtoBマーケティングの基本となる。

4.「インターナルマーケティング」でBtoBマーケティングを学ぶ。

BtoBマーケティングを学ぶ絶好の手法がある。「インターナルマーケティング」と呼ばれる企業内マーケティング活動がそれである。これは企業を構成する各部署をそれぞれ顧客とみなして、どうすれば相手部署に喜んでもらえるか、あるいはどのようにサポートすれば相手部署が動きやすくなって成果を出せるかを、各部署間で取り組むものである。

我々広告宣伝部門は、常々経理部門や営業部門との関わりが多いが、たとえば経理部門は宣伝部門に対し、今、多くの企業が行っているような一律に予算を削減する方向ではなく、むしろ可能な限り予算をつけて宣伝活動をサポートする。宣伝部門は、営業部門ができるだけ顧客と接しやすいプロモーションツールを開発し、営業とシンクロして受注に貢献する、と言う具合に各部門でサポート合戦を行うことになる。

実はこのサポートが、「ホスピタリティ」そのものなのだ。単にある部署を外から眺めて適当にお付き合いするのでなく、その部署が今何にチャレンジしようとしているのか、どんな課題を持っているのかを充分把握した上で、動きやすくなるようにサポートすることが、インターナルマーケティングである。

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このインターナルマーケティングを行うに当たって、忘れてはならない重要なポイントがある。それは、必ず企業の内側から外側に向かってホスピタリティを提供することである。企業それぞれに組織形態は異なるが、大まかには、まず企業の最も内側には人事部門や財務部門がある。その外側に、総務部門が、またその外側に製造部門や開発部門があり、顧客と最も近いところには営業部門がある。だから、インターナルマーケティングでは、たとえば人事部門や財務部門であれば、ほぼすべての部署にホスピタリティを提供しなければならないし、営業部門は他にその内側の開発部門からもホスピタリティを得ることになる。

では最も内側にある人事部門や財務部門は、どの部署からもホスピタリティは得られないのかと言うと、そうではない。企業の中心部には「経営」があり、人事や財務部門は経営トップからホスピタリティを受けることになる。

ちなみに宣伝部門は二つの顔をもつ。販売促進(プロモーション)のポジションでは、営業よりも内側に属する。したがってこの場合は営業活動にホスピタリティを提供しなければならない。一方広報的な側面では企業の最も外側に位置し、より外側の社会に対してホリピタリティ提供することになる。このことから企業広告では単に企業をアピールするのではなく、社会に貢献できる情報提供を行うことが重要だと理解できるだろう。

こうして見てみると、多くの企業が外に向かってではなく、むしろ内側に向かって動いていることに気付く。社内営業に時間が掛かるとか、無条件に行われる人員削減や予算削減要求は、まさしく内向きの代表的な形であり、これではホスピタリティを学ぶことなど到底不可能で、ひいてはBtoBマーケティングとは無縁の世界にいることになる。

インターナルマーケティングで、社内ホスピタリティの風土が醸成できれば、顧客に対するホスピタリティ意識も自然に芽生えて来るものである。インターナルマーケティングは、BtoBマーケティングそのものなのである。(続)

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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