河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

ブランドコミュニケーション

変革期におけるBtoB企業のコミュニケーション戦略と課題(2/4)ブランドコミュニケーション(2)

2.CSRの一環としてのブランドコミュニケーション

最近CSRや企業の説明責任ということが注目されているが、実はこの「企業の説明責任」が従来はほとんど行われていなかった。説明責任というと、事故や事件などネガティブな事柄に対しての説明責任と捉えられがちであるが、企業活動そのものに対して、また商品や技術そのものについて消費者に限らず社会全般にわたってきちっと説明する責任が、企業にはある。

そんな企業PRをしてもものは売れないよ、というのが企業経営者の常であろうが、口喧しくCSRなどというのならまず社会に対して自社の技術や優位性を分かり易く伝えるのが先決だろう。20世紀はとにかくマスメディアによる露出で商品の販売優先だったが、21世紀は各企業の持つ独自の技術や開発姿勢を、せめて高校生でも分かるような平易なメッセージで企業を売る時代だと言える。

いわゆるエクセレントカンパニーとか多額の資本を担保としたマスメディアでの露出によって注目される企業が多い一方、我が国にはほとんどブランド露出が行われていないにもかかわらず、世界でもまれに見る高度な技術を持った中小の企業が多く存在する。これらの企業がもっと自社の説明責任を果たしてもらいたいし、そうすることによってとかく物づくりの疲弊が云々されている中で、国民の企業を見る目や我が国の技術力への自信も深まってくると思われる。

WEBサイトを利用したこれらの情報開示は、極めて低コストで可能であり、しかもサイトへのアクセスが今ではURLの打ち込みよりもグーグルなどの検索サイトからの訪問の方がはるかに多いことを考えると、知名度のほとんどない企業でも十分な効果をもたらすだろう。

「いやあ、うちはネジしか作っていませんから、そんな情報誰も見ませんよ。」といわれるかも知れないが、BtoCの分野で我々が日常目にする商品には必ずこのネジなどの部品を含む。部品の優秀さが最終商品の品質を決定づけることは言うまでもなく、似たり寄ったりの過剰な商品に囲まれた現代は、むしろ部品の優位性がその商品の価値を差別化する時代とも言える。

事実最近は最終商品のメーカでさえ、商品の差別化のために使用部品の特異性を売りにしているケースを見受ける。こんな中で部品メーカがその技術を分かり易く社会にアピールすることは、ブランドコミュニケーションの第一歩だろう。

ではブランドコミュニケーションにおける演出はどうすればいいのか。マスメディアでのそれは、情報発信者である企業側がある意味では情報操作することができたし、実態にそぐわない華美なブランド演出が横行していた。しかしネット時代ではむしろ情報の受け手側、つまり社会や消費者の側にその判断が委ねられることになる。

ここではまず正確な情報を分かり易く伝える、というコミュニケーションの基本が最も重要になってくる。そのバックボーンには、企業自らの技術や商品に対する思い入れと自信があってこそ、初めて可能になる。

最近はブランディングコンサルタントなどにブランド演出を丸投げするケースが見受けられるが、まずは自社で今一度独自の技術とそれが社会に与える影響や効果を見つめ直すことが必要であろう。

ネジ1本でも技術の進歩や社会の発展に欠かせない力を持っているのであるから。自社の思い入れそのものがブランドであり、ブランドコミュニケーションとは、その思いを企業の説明責任と言う側面から社会にメッセージすることだと思う。

変革期におけるBtoB企業のコミュニケーション戦略と課題(1/4)ブランドコミュニケーション(1)

1995年頃から普及しだしたインターネットによって、コミュニケーションメディアのあり方が大きく変わった。とりわけ、BtoB企業にとって、今までは先端の営業担当でしか接触し得なかったエンドユーザーから、直接コンタクトを得ることができるこの仕組みの誕生は、企業活動にも少なからず影響を与えつつある。

しかし一方で、今までいわば密かに顧客と接触して与え与えられた情報を、誰が見るかもわからないネットで公開することに大きな抵抗感を持つ企業も見受けられる。BtoB企業は言うなれば今まで極めて閉鎖された社会の中で、その存在価値を維持していたとも言えるだろう。確かにセキュリティをはじめとしたネット社会特有の問題を抱え、いまだに社内LANから動画などの閲覧は禁止という企業も少なくない。

重要なのは、ネット社会の弊害というネガティブな側面を眺めつつ、50年に一度あるかないかのこのコミュニケーション変革を自社の企業システムにどのように植え付けていくか、が課題となる。

今後インターネットはまた新たな進化を遂げ、いわゆるWEB2.0に代表されるような社会や顧客を巻き込んだコミュニケーションダイナミズムが展開されようとしている。ここでも企業がもっとも嫌う情報のリークや個人認証の問題を抱えているが、時代は急速に移り変わろうとしているのも事実である。

いずれにしても、従来のいわばリアルな営業(コミュニケーション)活動と、ネットでの先端的な営業活動とのけじめを明確につけ、それぞれを共存させる仕組みづくりが必要となる。ここでは、このような社会的な背景を睨みながら、BtoB企業がなし得る4つのコミュニケーション(ブランドコミュニケーション・プロダクトコミュニケーション・マーケティングコミュニケーション・ヒューマンコミュニケーション)の形態とその課題について述べてみたい。

1.ブランドコミュニケーション

BtoB企業の多くは売上高広告宣伝費率が低く、マスメディアを駆使したブランド戦略はどうも敷居が高い。ブランディングに成功しているBtoB企業もあることはあるが、そのほとんどは企業規模も大きく多額の広告宣伝予算に裏付けられたマスメディアでの露出の効果と言える。もちろんその背後には綿密なブランド戦略が存在するのだろうが、要は予算の問題が欠かせない。ほとんどのBtoB企業はとてもマスメディアを利用したブランド戦略など考えられないと言うのが正直なところだろう。

しかしインターネットはこの難問を見事に打開する。WEBサイトの構築はそのデザインや仕組みによってコストにも大きな幅があるが決して多額の費用を必要とするものではない。このWEBサイトを利用したブランドコミュニケーションは、コストパフォーマンスから見ても妥当性が極めて高い。しかしここで壁になるのが前述した情報公開での及び腰の姿勢である。情報公開に対してこのアレルギーがある以上、これからますます進化するネットコミュニケーションから置き去りにされるのは目に見えている。今の時代はいくら隠そうとしても自然と漏れるものであり、むしろ漏れる以上に新しい情報をどんどん公開していく企業姿勢そのものが、ブランド形成の大きな要因となるのである。

一方、新聞広告やテレビCMなどでも最近BtoB企業が活発にメッセージしているのを見かける。これはBtoBよりむしろBtoS(Society)と言った方が適切と思うが、特定の人(C--Consumer)や企業(B--Business)にではなく、社会全般に対して企業の存在意義を訴えていこうとするものだ。

実は私自身は今後マスメディアではこのBtoSコミュニケーションが主流になってくるものと考えている。その背景にはやはりインターネットの存在がある。ネットによってあらゆる情報を入手することが可能となった。そこには正確な情報もあり当然間違った情報もあるが、受け手はそれぞれの情報を自在に組み合わせてひとつのイメージを自らの中に構築する。

BtoC分野ではたとえば価格comなどによって使用者からの新鮮な情報を得ることもできる。これは企業が発信する情報よりもむしろ信頼度が高く見なされる傾向があり、こと商品情報に関していえば、最近問題視されている広告の売る機能が低下しつつあることにも関連していると考えられる。もはや広告によっていくら商品の優位性を伝えようとも、使用者の正直な評価には太刀打ちできない構図がここにある。

それに替わってBtoSでは、社会に対して企業の存在意義や社会が抱えている様々な課題に対しての企業としての考え方などを独自のメッセージとして提示し、オーディエンスとともに考えると言う姿勢がこれからは重要になってくる。

つまり、企業側から一方通行的にブランド認知を強制するのではなく、オーディエンスとの共通課題に対する理解のプロセスで、ブランド認知という付加価値を得る手法である。

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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