BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉖


《質問》

弊社は建設機械や運搬関連器具を製造販売していますが、現在ほとんど広告活動を行っておりません。その理由は弊社のようなBtoB企業ではマスメディアで広告を行っても受注にはあまり寄与しないという昔からの感覚があるからです。私は個人的にはもっとマスメディアを活用して知名度を上げることも企業として重要なのではないか、と思っているのですが、上司からは「そんな無駄なことは必要ない」のひと言でなかなか広告予算が配分されないのが悔しく思っています。そこで質問したいのですが、本当にBtoB企業ではマスメディアを活用しても効果は期待できないのでしょうか? もし活用するとすればどのような広告展開が可能なのかご教授いただくようお願いします。(建設機械メーカー・営業企画部)

 

《回答》

大変貴重なご質問を頂戴しありがとうございます。

確かに多くのBtoB企業はマスメディアを軽視する傾向が非常に強いのが現実の中で、貴方の広告に対する前向きな姿勢に敬服します。

まず新聞広告の価値については、本Q&Aシリーズ④で述べておりますので、併せてご覧いただければより詳しくご理解いただけるかと思います。

今回は少し視点を変えてお答えしたいと思います。

まずBtoB企業における新聞広告やテレビCMに対する取り組み姿勢は、はっきり言って間違っています。貴方の考え方の方が正しいのです。このことについてしばらくお話しします。

企業の上層部が「受注への寄与率が低いからマスメディア広告を控えたい」という気持ちはよく分かります。しかしとりわけBtoB企業はその商材の購買プロセスが非常に複雑で多くの組織にまたがって決裁される傾向があります。マス広告が受注に寄与しないと言う理由は、まず広告ターゲットを間違っているからです。最も購買に関与するターゲットは顧客企業の決裁権を持つ上層部です。最も強い決裁権を持つのは「社長」です。こういった人たちをターゲットにせず、ただ漠然と企業PRに終始している広告が少なくありません。情報過多の現在ピンポイントでターゲティングしなければ、広告という情報は単なるノイズとして受け流されてしまいます。

したがって新聞広告で重要なのは顧客企業や社会に対するブランディングを意識した広告です。ターゲットは社会ではオピニオンリーダー、企業では決裁権を持つ上層部となりますが、ひと言で言えば社長向けの広告とも考えられます。ここでは商品のPRに終始するのではなく、社会や顧客企業が抱えている課題もしくは将来課題に発展するであろう問題点に対するソリューション、つまり御社がこれらの課題にどのような技術や商品で解決できるのか、を明確にメッセージすることが大切です。つまり美辞麗句満載のPR広告ではなく、社会も顧客企業も気づいていない課題に対するメッセージを発信するのです。

人でも企業でも自分たちが気づかない課題とソリューションを明示されれば、その企業の信頼性は急激に向上するものです。この「社会や企業が気づいていない課題」がポイントになります。

このような新聞広告はまだ現在は極めて少ない状況ですが、将来、新聞広告の大きな役割は社会(企業を含めて)が抱える課題の提示とそのソリューションをメッセージする広告スタイルが主流になってくると思います。

また新聞そのものの価値については前述した過去の本欄をご覧いただければ理解できると思いますが、ネットが普及した現在でも印刷媒体としての新聞の価値は決して衰えてはいません。確かに新聞の販売数量は徐々に低下していますが、それはBtoB分野に限れば一社あたりの購読数がインターネットの影響で低下しただけのことで、メディアとしての新聞の価値が低下したものではありません。

一方テレビCMについても前述とまったく同様のコンセプトで問題ありません。社会に対するメッセージCMは新聞以上に到達率は高いでしょう。しかしここで気をつけなければならないのは、単に視聴率を気にしてくだらないバラエティ番組に関与しないことです。BtoB分野であってもテレビは一人の心理変容が影響します。テレビCMは番組の流れを引きずった状態で見られます。その意味では番組の流れを邪魔しないテイストで構成しなければなりません。バラエティ番組であればバラエティ風のCMになってしまいます。そこで小難しいメッセージを発信してもおそらく視聴者はトイレに行くだけでしょう。テレビCMでの狙い目は、視聴ターゲットが明確で「ながら視聴」の少ないBSCSを選択した方がいいでしょう。広告料金も地上波に比べると格安ですから。

新聞広告にしろテレビCMにしろ、そこで商品が売れることは期待できません。そのことが御社の上層部が言われる「マス広告をしても受注に結びつかない」と思われている所以です。メディアはそれぞれ役割分担を持っています。マス広告で注目された後はほとんどの場合WEBサイトにアクセスされます。したがってWEBサイトの構成も上述したメッセージ広告をさらに詳細に述べたサイト構成は不可欠となります。この件に関しては紙幅の関係上Q&Aシリーズ⑲の「プロモーションサイト」について言及した本欄をご覧ください。


 新聞広告は確かに最近は低調気味ですが、それはまず新聞の価値を正確に把握していないことと、昔のようなダイレクトに新聞広告からの引き合いが低下したのが主な要因です。新聞広告は社会に対する自社からのメッセージであること、そして引き合いや意見はWEBを通じて行われていることを充分把握しておくべきでしょう。

ところで新聞広告に代わってインターネット広告が主流だと言われていますが、それこそBtoB企業でインターネット広告はあまり効果はありません。単に価格が安いだけでどこもかしこもインターネット広告に躍起になっていますが、BtoB企業でのネットアクセスの目的を考えると画面にちらちら出てくる広告をクリックする暇などないのです。それよりも、昨年末話題になった「vvvウィルス(ランサムウェア)」が気がかりです。当初はインターネット広告にウィルスが仕込まれていたと言われていましたが、実際はそうではなくメールの添付ファイルが原因でした。しかしよく考えればデジタルの世界はもうなんでもありです。インターネット広告にウィルスを仕込ませる事はそんなに難しいものではありません。それが現実になるとインターネット広告そのものの価値が急減してしまい、おそらく最も安全な新聞広告やテレビCMに回帰してくるはずです。ちなみに私はウィルスが恐いと言うより、前述したネットアクセスの目的に関係ない広告が煩わしく「広告ブロッカー」をブラウザに搭載していますから、インターネット広告は一切目にすることはありません。今後広告に興味ない人やとりわけセキュリティにうるさい企業でも広告ブロッカーを搭載する事が考えられますし、そうなればインターネット広告はまったく本来の機能は果たせなくなってしまうのです。

いずれにしても、新聞の価値は低下したわけではなくこれからは各企業ともメッセージ主体の広告が主役になってくると思います。これこそが本当のCSRなのです。

このようなマスメディアの活用を行えば、結果的に御社の信頼度は向上し受注にも貢献できると考えています。