BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉙

《質問》
 

弊社はグローバルに事業展開している機械メーカーです。おもに工作機械や産業ロボットを開発・販売しています。従来から専門紙や業界紙を中心に広告展開しています。しかし広告効果が本当にあるのかどうか社内でも議論になることがあります。営業部門はBtoB企業では広告効果はあまり期待できない、それよりも展示会やカタログに注力すべきだという意見が強くなりつつあります。私は各メディアを万遍なく利用して広告展開すべきだと思っているのですが、効果が云々と言われるとどうしても営業部門を説得することができません。我が社のようなBtoB企業での製品広告を効果的に展開するにはどのような取り組みが重要なのでしょうか。(機械メーカー・コーポレートコミュニケーション部)
 

《回答》
 

最近はインターネット広告などネットを主体としたプロモーションが注目され、旧来の印刷メディアでの広告展開にネガティブな意見が少なくありません。その要因として、新聞や雑誌メディアの購読部数の減少が上げられますが、もっと重要なのは広告効果測定での引き合い件数の出所が不明確なことが問題視されているのでしょう。
 

ここではインターネット広告は除外して、新聞広告や雑誌広告などの旧来のメディアでの広告展開について述べていきたいと思います。
 

まず広告効果測定の重要な係数になる引き合い件数のカウントの仕方ですが、最近はメディアからの引き合いはほとんどないと考えられます。1990年頃から普及しだしたインターネットによって印刷メディアでの引き合いはWEBサイトを通じて得られることがその要因です。したがって新聞や雑誌メディアからの引き合いがないからといって、広告効果が少ないとは言い切れないことを充分認識しておく必要があります。つまり、現在は印刷メディアに限らずほとんどのメディアからの引き合いは、一旦WEBサイトを通じて得られると考えなければなりません。
 

WEBサイトから得られた引き合いがどのような経路を辿って来たのかはログを解析すればある程度分かります。おそらく何らかのメディアでの情報が起点となって検索されWEBサイトに到達していることが理解できると思いますが、どのようなキーワードでどのページにアクセスされたかによってそれが広告によるものなのか他のメディアによるものなのかはかなりSEO対策を綿密に施しておかなければ判別できません。
 

御社の営業部門が「BtoB企業では製品広告の効果はあまり期待できない」と思われるのは以上のような現象が元になっていると考えられますが、決して製品広告の効果がないのではなく、効果測定の係数が変化していることを充分理解すべきです。
 

ところで、ではどのような製品広告が効果的なのか、についてお話ししたいと思います。

 すでに御社では専門紙や業界紙を利用されていますので、メディアの選択に関しては大きな問題はないと思います。問題はどのような広告クリエイティブなのかですが、とかくBtoB企業が行う製品広告はいわゆる「カタログ広告」になる場合が多く見受けられます。これは充分気をつけた方がいいでしょう。

 とりわけ営業部門が主体になって広告展開する場合、幾つものセールスポイントを列挙したり、細かなスペックを記載してまるでカタログのようになってしまっている広告を見かけることが少なくありません。要するに新聞や雑誌メディアに「チラシ」を掲載しているのとほぼ同じ考え方です。広告をこのように煩雑な特徴やスペック、写真で盛りだくさんにしたくなる気持ちは、少なくとも営業サイドに立てばよく理解できますが、最早このような広告は広告とは呼べない代物になってしまっています。
 

広告の重要な役割は「引き合いを得ること」です。一方でカタログの役割は「製品を販売すること」です。ただカタログの場合はそこに営業担当が介在しますから、あくまでもセールスツールとしての役割になります。

このように役割が明確に違うにもかかわらず、広告にカタログ機能を持たせることは非常に効率が悪くなります。まずポイントが明確でなく多くの特徴が列挙されたり細かなスペックが記載されてしまうと、営業サイドとしては「ん、これで十分だ」と思いがちですが、広告で製品が売れることは期待できないことは以前本欄でも述べています。
 

BtoBにおける購買プロセスから考えると。まず重要なのは広告で購買を期待するのではなく見込み客を得ることなのです。それが広告でほとんどカタログの焼き直しのようなクリエイティブであれば、そこで良くも悪くもある程度製品が理解されWEBサイトに誘導することができません。一方で、WEBのプロモーションサイトに比べるとあまりにも広告の内容では貧弱になってしまいます。したがって、中途半端に理解されてWEBサイトにも誘導できない、つまり見込み客が得られないという最悪のケースが待ち受けているのです。
 

つぎに製品広告の効果的な取り組み方、についてお話ししたいと思います。
 

まず重要なポイントは「語りすぎないこと」です。広告でカタログのようにすべてを語るのではなく、一つか二つのセールスポイントに絞ってそれを印象的なビジュアルや場合によればインフォグラフィックなどを駆使し、さらにオーディエンスの心に訴えるヘッドラインで構成することです。たとえば新聞で全15段という大きなスペースであったとしても決して語りすぎてはなりません。言い方を変えれば「?」や「なぜなの?」「なるほど」といったオーディエンスの心理変容を起こさせ間髪を入れずにその「?」を理解させるためにWEBサイトに誘導できる広告が現在では優れた製品広告だと言えるでしょう。
 

すべてを語らずなかば中途半端な広告にはおそらく営業部門から猛烈な拒否反応が出てくると予測されますが、何度も述べるようにどんなに頑張っても広告ですべてを理解させるには限界があり、しかもBtoB分野ではいわゆる衝動買いが期待できないため、広告で製品が売れることは皆無と言えます。製品広告の役割はWEBサイトへの引き合いを得ることを営業共々充分認識しておかなければなりません。
 

ではどのようなコンテンツが製品広告に有効なのか、ですがこれはターゲットによって異なってきます。ターゲットが顧客企業の現場サイドであれば、顧客企業が抱えているであろう課題に対するソリューションを前面に出すべきでしょう。課題とソリューションを上手く一体化して広告展開できれば最高です。ここでは当該製品の特徴やスペックなど必要なく、その製品を導入することでどんな課題が解決できるのかを端的に示唆すべきです。ターゲットが顧客企業の決裁者の場合は上記の他に、導入効果を具体的に理解されるヘッドラインが生きてくるでしょう。ここでも細かな製品特徴やスペックは必要ありません。詳細はWEBサイトで説明できますから。
 

 紙幅の関係上あまり多くは述べられませんが、BtoB企業における製品広告の最も重要なポイントは、「語りすぎないこと」なのです。その一方でWEBサイトのランディングページやプロモーションサイトを充実させておくことが重要なのは言うまでもありません。つまり印刷メディアの広告とWEBサイトが一体化されたプロモーションが最も効果的な広告だと言えるのです。