3.グローバル・コンパクトから見たCSR

 

さて企業の社会的責任は、国連グローバル・コンパクトで提唱されている次の項目が根拠となっている。

人権

②労働基準

③環境

④腐敗防止

いずれも極めてシリアスな課題であるが、まず①については単一民族といわれているわが国では馴染みが少ない。一方出自などによる差別が未だに存在していることも事実であり、将来否応なく中国や韓国、東南アジアなどからの移民受け入れが促進されるとなれば、大きな悩みを生み出すだろう。

②は結社の自由、強制労働の排除、児童労働の排除、雇用と職業の差別撤廃が求められているが、主に児童労働については発展途上国のみならず貧富の格差が拡大した諸国では古くから重大な問題を提起している。強制労働や雇用差別に対しては、わが国では法令で厳しく制限されており、CSR以前の問題として各社ともこの課題には熱心に取り組んでいるところだ。

しかし結社の自由についてはどうだろう。確かに現在でも多くの企業に労働組合は存在する。しかし一昔のそれとは明らかに異なった様相を呈している。以前の労働組合が資本に対する労働者側の立場を適切に保全する砦であったのに対し、現在では資本と労働の間にいささか生ぬるい関係が否定できない。極端な場合会社の方針に異議を唱える組合活動に熱心な社員に対して、組合の力も及ばず不利な会社生活を強いる企業が少なくないのも現実だろう。

③の環境についていえば「地球温暖化防止条約」に基づいた温暖化防止のための脱炭素が現在の最大のテーマであるが、そもそも温暖化と炭酸ガスとの因果関係がある種の政治的・経済的な目論見による作為であるといった論議が大勢を占めつつあり、より慎重な科学的根拠が求められるところである。

むしろ「環境汚染・環境破壊」をなすことなく企業活動を継続することへの必然性がここでは重要なテーマとなる。地球温暖化防止条約と同時期に制定された「生物多様性条約」の拡張解釈によって、このミッションはより具体性を帯びてくるだろう。「省エネルギーや省資源・リサイクル問題」はCSRというよりむしろ利潤追求のための営業・生産活動の延長線上にあると考える。

④の腐敗防止はいわゆる賄賂の強要などを戒めたものであるが、これも法令で十分対処できる課題である。一方で東南アジアなどでは未だに、というより今後も更にビジネスにおける賄賂の必要性が切っても切れない難しい現実がある。しかしもし仮に日本企業が海外で賄賂罪を犯した場合でも、国外犯の適応を受け不正競争防止法や背任罪で処罰されることになるだろうから、ここでもわが国の法体制で対応できる。

こうして見てみると、要するにほとんどの項目はコンプライアンスの徹底によってカバーできるものと考えられるし、コンプライアンスは企業活動の根幹でもあるため、何も取り立ててCSRを声高に叫ぶ必要もないように感じられる。