5.売りに結びつくBtoB広告

 BtoBマーケティングの基本はホスピタリティ」にある事を前提に、それではそれぞれのメディアに対してどのように対処していけばよいのか考えてみたい。

 (1)展示会メディア(接触メディア/Face to Faceマーケティング)

昨年中盤から、景気後退による影響で展示会はことごとく規模縮小を余儀なくされている。今年開催される展示会の多くが、従来の半分程度の規模という所も少なくない。しかし、この現状とは裏腹に、展示会は将来の最も重要なメディアとして位置づけられると確信している。その根拠は、どのメディアにもない「接触メディア」としての機能を持っていることにある。面と向かって顧客と直接話しをし、握手できるメディアなどどこにもない。

にもかかわらず、展示会を縮小する理由の一つに、相変わらず展示会を広告メディアと認識していることにある。広告(広報)メディアとしての展示会の価値は、WEBの普及とともに廃れ、代わって顧客とのコミュニティー形成の場(営業の場)と姿を変えたことに、多くの企業は未だに気付いていない。展示には多くのコストが掛かる。これを広告の制作費などと同列で捉えれば、コスト削減のための展示会縮小という図式になっても仕方ない。しかし一方で、通常営業コストとくらべて、展示会での営業コストは2.5分の1で済むと言うデータがある。これはやや古い米国の調査結果であるが、要は通常の顧客まわりをしているくらいなら、展示会で営業した方がはるかに効率は良いと言うことである。つまり、コストの掛かる展示(装飾)を重視するあまり、接触メディアとしての最大のメリットを生かし切れていないのだ。装飾にコストを掛ける必要がないことは米国のExhibit Survey社のリサーチからも理解できる。ここでは、来場者の後日アンケートで、どの企業が最も記憶に残っているか、を質問しており、トップのレートはやはり製品の新規性であるが、ブースデザインよりも説明員の応対の方がレートは高いことに注目する必要がある。

展示会で売りに結びつく対応を行うためには、魅力ある製品の出品はもちろんだが、他に下記の3点がポイントとなる。

a)装飾はコストをかけずできるだけシンプルに

b)顧客にソリューションを提供できる説明員を配すこと

c)来場者は通常営業の一環として自ら呼ぶこと

展示会

展示会は直接顧客と対話して、ソリューションを提供する場である。そのためには(b)は絶対欠かせない。間違ってもにわか仕込みのコンパニオンに説明させてはならない。また、WEBの普及した現在、黙っていては来場者は得られない。待ちの姿勢でなく、(c)のように営業担当自らが、通常営業と同様に顧客に声を掛ける必要がある。当該顧客に特化したソリューションを提供する事を、あらゆる手段で告知しなければならない。展示会は顧客とのコミュニケーションの場であり、良好なコミュニケーションが受注に結びつく。その成果はどれだけの顧客を事前連絡によって呼び込めるかによって大きく左右される。そのためにはどんな展示会でもプライベートショーに臨む周到な準備が必要であり、その準備の程度が果実の大きさに比例すると言うことである。

今後WEBのさらなる普及とともに、必ず注目されるであろうと思われるのは「Face to Faceマーケティング」である。前述のようにこのマーケティング手法が実現できるのは展示会をおいて無いと断言できる。(続)