BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉔

《質問》
 

最近弊社のWEBサイトへの訪問数が停滞気味です。現状ではWEBからの引き合いを元にした営業活動によってかなりの受注額を確保しています。そんな中で訪問数がここ1年間ほど停滞気味なのが気になっています。訪問数をもっと増やす有効な手法があればご教授いただきたいのですが。(機械部品メーカー・広報室)
 

《回答》
 

WEB訪問数の停滞あるいは減少は、最近おそらくどの企業でも見られるはずです。その要因としてもうすでにWEBは普及し尽くしたことにあります。
 

WEB訪問数の減少が引き合いや受注額の減少にも関連してくるとなると、簡単に見過ごすことはできませんし、何らかの手立てが必要となってきます。
 

まず訪問数を増加させるための手法について述べてみます。
 

言うまでもなく現在はある企業のURLを打ち込んでトップページから入ってくることは極めて希です。おそらく20%もないと考えられます。ほとんどはGooglYahoo等からのキーワード検索によってジャンプしてきます。その意味ではまず検索にかかりやすいコンテンツ構成が必要となってきます。いわゆるSEOと呼ばれる手法を徹底させることが肝要ですが、その前に重要なことがあります。
 

我が国の企業サイトは,あまりにも技術的なコンテンツが少なすぎます。製品紹介のページであっても単に特徴や応用範囲、仕様などを述べているだけです。一方訪問者から見れば様々な要件で言葉を探し検索します。どういう訳かそのキーワードが一般的な製品紹介ページでは掲載されていないケースが少なくありません。
 

この違いはまず製品紹介ページがカタログ的なコンテンツになっていることが最も大きな理由だと考えられます。商談の現場ではカタログをベースにして営業担当が顧客とやりとりを行うのですが、その状況がコンテンツに反映されていないのです。簡単な例で示しますと、カタログ商談の際にほとんどの場合顧客側から質問がなされます。質問があると言うことはカタログには掲載されていないからなんです。そんな状況を無視してカタログ的なコンテンツをアップしたところで、訪問者が質問内容のキーワードで検索してもヒットしないのは当たり前です。
 

まず製品ページではカタログの焼き直しのようなコンテンツではなく、現実の商談内容に沿った形できめ細かくコンテンツづくりをする必要があるでしょう。そのためにはあらかじめ対象マーケットや顧客がどのような課題を抱えていて、どんな質問をしてくるのかを検証しなければなりません。つまりメーカー目線ではなくユーザー目線でサイト構築する必要があるのです。
 

そうすれば自ずとコンテンツ量は増加してきますし、それに伴ってコンテンツに含まれるワードも様々に展開され、結果的に検索ロボットにヒットさせやすくなるのです。
 

次に重要なポイントをお話ししたいと思います。
 

我が国の企業はどうも閉鎖的でなかなか実現しづらいとは思いますが、技術者や開発担当者のブログを構築することです。ブログと言えば日記的な簡単な記述を思い浮かべますが、そうではなく論文調の詳細な内容に踏み込んで記述することが重要です。米国ではこの手法は当たり前になっていますが、我が国ではまだ本格的な技術ブログサイトを目にしたことがありません。これは企業内の人材に対する考え方や社員の考え方によるところが非常に大きく影響しています。
 

米国ではまず企業よりも自身を売り込むことが社員にとって大切な心構えになっています。その根底にはあわよくば今の企業よりももっと条件の良い企業にヘッドハントされることを望むスタンスが、特に技術系の社員に多く見られます。
 

一方我が国はとかく企業機密保持の観点からコンテンツ内容も顧客から見れば中途半端で、まして技術的な詳細内容など書こうものなら即座に会社からストップがかかってしまいます。しかしもうそんな時代ではないのです。訪問数の停滞は別の言い方をすればコンテンツの停滞とも言えます。したがってこれからのWEBサイトでは超企業機密以外の情報はすべてアップすることが重要なポイントとなります。
 

そこで有効なのが技術者や開発担当者の生の声で構成したブログなのです。具体的には1テーマあたり3000字くらいで書き上げればいいと思います。もし論文などで長文であれば、それをいくつかに分割して掲載すればいいでしょう。
 

それによってカタログには決して掲載されない様々な文言が乱立し、結果的に検索ロボットにヒットされやすくなります。ただその場合は当然技術者のブログサイトにアクセスされるのですが、インターフェイスを考慮してそのアクセスをメインサイトに誘導する工夫も必要です。いわゆる企業内インバウンドマーケティングがこれであり、訪問数を増加させる重要な手法でもあります。
 

次に今後重要視されるコンテンツとして「映像」が考えられます。基本的にはYouTubeに連動させる方法が有効ですが、この場合には必ずYouTubeに投稿する前に「タグ」を設定しておくことが肝要です。なぜなら映像そのものは検索ロボットではヒットされずあくまでもそこに埋め込まれた「タグ」によって検索されるからです。さらに御社の商品でなく、似たような商品の映像を閲覧された場合、タグが明確であれば必ずYouTubeの右側に関連動画として紹介されますので非常に有効です。このタグはあまり多くても意味がなくせいぜい10個くらいが適当かと考えられますし、顧客やマーケットを意識して顧客目線で文言を設定することが大切です。そしてYouTubeの映像を自社サイトにリンクしておけば立派なサイト構築が可能になります。
 

ただ問題点もあります。我が国の多くの企業は未だに社内からYouTube等の動画サイトへアクセスすることが禁じられています。それだったら意味がないだろうと思われがちですが、じつは最近はPCよりもスマホからのアクセスが急増しており、スマホの場合には自由に閲覧可能です。その意味ではこれからのサイト構築はスマホやタブレットでの閲覧を考慮したRWD(レスポンシブWEBデザイン)を基本に考えておかなければならないと思います。
 

そのほかにはSNSFacebookTwitter)を利用して訪問数を上げる手法もありますが、まずインフルエンサー(購買影響力を持つ人たち)に彼らのブログやTwitter等で紹介されなければなりません。しかしとりわけBtoB分野ではこのインフルエンサーを探し出すのが厄介なのと、これもまた社内からSNSへのアクセス制限がなされていることを考えると、有効に活用できるのはまだ少し時間がかかるかと考えています。
 

いずれにしても重要なポイントは顧客目線に従った文言を利用して、できるだけ多くのコンテンツでサイト構築することが訪問数を稼ぐ第一歩となります。 

ここでは決して美辞麗句に飾られた宣伝文句は、くれぐれも使用しないように努めなければなりません。