BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑱

《質問》

私どもは従業員20名程度のごく小規模な中小企業です。樹脂成形やその応用商品を作っています。今般ある中小企業を集めた展示会に参加することになりました。参加の目的は大企業とのマッチングです。しかし懇意にしている大企業もなく、どのようにして集客すればよいのか分かりません。ちなみに予算の関係で今まで広告などのメディア展開は一切行っていません。こんな状況ですが、展示会の集客方法とマッチングが期待できる効果的な展示について、ご教授いただければ幸いです。(樹脂応用メーカー)

《回答》

おそらく出展される展示会は一般の商業展ではなく、大企業や中小企業同士のマッチングを目的とする展示会だと認識します。

本来、展示会はその他のメディアから得られた「見込み客」に対して、最後の刈り取り(商談・受注)の場として機能するものです。マッチングについても日頃から大企業や関連企業とのコンタクトがあれば、それらを見込み客として集客することが可能です。

しかし御社の場合は、マスメディアは一切使っておられないようで、メディアからの見込み客はほとんど期待できません。一方で「だからこそこの機会で展示会を用いてPRする」という考えもありますが、いわゆるPR効果は展示会については極端に非効率的です。つまり一人当たりの認知にかけるコストがあまりにも大きすぎるのです。

展示会はPR効果を期待するのではなくあくまでも受注額や受注に結びつくリード(引き合い)件数が展示会効果の要因となります。当該展示会ではこれらに加えてマッチング先の件数も効果指標として認められるでしょう。

ところで御社はWEBサイトを開設されていますね。拝見したところ、そこそこの製品紹介や企業紹介はなされていますが、まだまだ情報が不足しています。他メディアからの見込み客が期待できない現状では、唯一WEBサイトからの引き合いが見込み客として見なすことができるのですが、一ヶ月あたりどのくらいの引き合いがありますか? もし仮に一ヶ月に100件程度の引き合いがあるなら、充分見込み客としてここ1年くらいの引き合い社に対して出展の案内をすることがまず重要です。

とかく企業(大企業でも同様)は顧客は大事にしますが、見込み客の管理が非常に疎かになっているのが現状です。見込み客は潜在顧客とも理解でき、顧客なみに重要な位置づけにあることをもっと認識すべきでしょう。

ところで、WEBサイトは現在はトップページからアクセスされるのは極めて希です。ほとんどの場合、検索キーワードによって当該サイト(ページ)にジャンプしてきます。と言うことは、まず検索された場合、できるだけ上位に表示されるような工夫が必要です。SEOなどという難しい手法がありますが、まず重要なのはできるだけ多くの情報をWEBサイトに盛り込むことです。上述したように御社のサイトはあまりにも情報量が少なすぎますし、これでは検索をかけても上位に表示されないでしょう。

そこで有効な手法を紹介したいと思います。たとえば社長や技術者・職人のブログをビジネスサイトに並行して開設することです。ブログと言ってもよく社長ブログなどにあるような当たり障りのない日記的な内容では全く意味がありません。そこでは技術的な内容や御社に直接関係なくても御社の製品や技術の周辺情報などを記述していくのです。その意味から言えば社長よりも技術者のブログの方が効果的かも知れません。社長ブログの場合は業界の情報や将来性などに対するビジョンなどを主体に記述すればいいと思います。

こういった技術者などのブログは我が国では(とりわけ大企業では)ほとんど見られません。その一番の理由は機密が漏れることを警戒するあまり、できるだけカタログ情報以外は公開しないと言う悪弊があるからです。一方米国では技術者がなかば自己PR的にどんどん自己主張しています。まあ、国民性の違いもあり難しい側面があると思いますが、このブログを構築することで一気に御社のサイトへの訪問は増え、結果的に引き合い件数も増加すると考えます。ちなみに私ごとで恐縮ですが、拙ブログは1ヶ月に一回程度の更新しかしていませんが、毎日2040名程度の訪問があり、ページビューは1ヶ月に1000ページに達しています。ただ内容はマーケティングや広告宣伝についてかなり詳細に踏み込んでいますので検索にヒットしやすいのでしょう(キーワードが多く盛り込まれている)。

この技術者や社長ブログの効果は言うまでもなくインバウンドにあります。前述のようにトップページから訪問される機会がほとんど無く、失礼ながら中小企業で知名度も少なければ企業名で検索されることは皆無に等しいと思います。それをブログに記述された様々なキーワードから、本来のビジネスサイトに誘導するわけです。

余談ですが私のブログでログ解析をすると過去に検索ワードが「政治」でヒットしたときがありました。政治の話など書いた覚えが全くないため不思議に思って過去の原稿を見直してみると、マーケティングを論じた際に現在(3年前)の日本の政治家による経済政策を批判している記事があったのです。「政治」はこの一箇所だけです。それでも検索でヒットしたわけですから、いかにWEBサイトに多様なキーワードをちりばめるのが重要なのか理解できます。

とはいうものの展示会まで時間もありませんので、まずは今までのWEBサイトからの引き合い社に案内すること(できれば手書きの挨拶状を添えて)が第一のポイントです。

そして展示手法についてですが、私もたぶん御社が出展される展示会を見学したことがありますが、まず気づいたのは説明パネルがあまりにも疎かにされていることです。あんなものは誰も読みません(実際に私が1時間程度あるブースをテストした結果です)。しかも米国の展示会調査でも来場者の記憶再生率で説明パネルの効果はほとんど無いと報告されています。読まれないから記憶されないし、記憶されないから記憶再生されないのは当たり前ですが。

それよりも大事なのは、説明パネルは一切やめて壁面全体をインフォグラフィックスで構成することです。何もかも述べるのではなく、製品や技術が持っている特性をピンポイントでグラフやデータ、図などで表現するのです。欧米ではかなり普及していますが、我が国ではまだ展示会でインフォグラフィックスを有効に利用している企業はあまり見かけません。それだけでも稀少価値がありインパクトは期待できます。インフォグラフィックスについては分かりにくいようでしたらそれこそGoogleなどで検索をかけてみて下さい。

最後に一言、大企業であれ中小企業であれ「広報」をもっと重視すべきです。それも単にリリースを記者クラブに投げ込むのではなく、日頃から特定の新聞記者と懇意にしておくことです。そうすれば「今度○○展で面白い製品出すから、ちょっと書いてよ」とお願いできますし、広報の威力は広告以上ですからかなり効果が期待できるものです。