河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

2012年08月

新BtoB社会におけるコミュニケーションとASICAモデル(4/5)

4.ASICAモデルにおける広告の役割

 

ASICAのトリガーが課題探索であることはくどいほど述べた。
であるならば、企業としてもう一つの組織である社会に対してどのような取り組みが必要なのか、広告に絞って考えてみたい。

広告でモノを売る、企業を売る時代は終わったことはすでに何度かの拙稿で述べた。
そしてそれに替わっていわゆる企業広告は社会の隠れた課題を掘り起こし、国民にそれを気づかせる大役が待っている。
情報が過度に氾濫した今、企業の本当の姿を知ろうとすればいくらでも可能になった。
こんな中で声高に「私どもは世界でも優れた技術を持っていて、なんとかかんとか、すばらしい企業なんです」といった自画自賛広告はもう恥ずかしくてやる気にもならないし、たとえ広告したところでそんな美辞麗句は誰も信用しない。そんな時代だ。

つまりいわゆる「アピール広告」はもう過去のものとなりこれからは社会に埋もれた課題発掘のための「メッセージ広告」が主流とならなければならない。
「メッセージ広告」といいながらよく見てみると未だにアピールから抜け切れていない広告が少なくないが、そもそもメッセージというのは「見えない部分をわからせる」ところに真骨頂がある。

つまりアピールはオーディエンスに考える余裕を与えず広告主のいいたいことをそのまま刷り込むことを目的としているのに対して、メッセージはオーディエンスに考える余裕を持たせなければならない。
そしてオーディエンスから発せられた二次メッセージが広告主のメッセージに作用するという双方向性を有する。ここから社会に横たわった課題が徐々に際立ってくるのである。

ではどのようにしてメッセージ広告を企画すればよいか。企業には経営理念のもっと奥底に経営に対しての思想や哲学の核がある。その核を包み込むようにして経営理念が生まれ、経営理念によって企業風土が形作られる。そして企業風土がアピールの源泉(企業の癖)となるのだ。

哲学は昔も今も替わらないが企業理念は時代に応じて変える場合がある。流行に即するためだ。CIが流行った時代には多くの企業で創業の哲学は蔑ろにされ美辞麗句の企業理念がアピールされた。
人間でいえば哲学は心や人格であり企業理念は化粧である。そして多くの人前で振る舞うことがアピールと理解できる。で、そんな厚化粧のまやかしはもう誰も信じない、となった。企業の「心」を真摯に社会に対して示すこと。これがメッセージなのだ。

アピール広告とメッセージ広告

したがってメッセージ広告を企画するに当たって最も重要なのは、いったん世の中の流行や異説は忘れて企業自ら社会に対して独自の意見を述べることだろう。
そのためにはまず自社の心が何なのかを知ることから始めなければならない。十人十色というように企業にもそれぞれの特色がある。その結果メディアを通じたメッセージ広告によって、社会にはさまざまな意見が飛び交うようになる。

今のようにどの企業も似たような広告、という不思議な現象もなくなる。もちろんオーディエンスから同意されないメッセージや敬遠されるメーセージもあるだろうがそんなことは気にする必要はない。決して社会に媚びることなく企業独自の意見を発すること。これがメッセージ広告の根幹になる。
 

広告に携わっておられる読者ならすでによくご存じだと思うが、放送禁止や掲載禁止になったCMや広告が少なからずある。
もとより広告制作クリエイターは日頃から広告倫理規定を熟知しながら対応している。それにもかかわらず、くだらない言葉狩りや過剰な良い子主義のあおりで致し方なく日の目を見なかったのだろうが、中にはどうしてこんなすばらしい広告が、と思う作品もある。

その多くは紛争や戦争をモチーフにしたものである。たとえば子供が銃を抱えた映像があるだけで、子供に銃を持たせることを容認している、だから広告としては許せない、という短絡思考が生まれるらしい。
子供が戦士として否応なく駆り出されている国が現実に存在しているにもかかわらず、だ。

白い犬が喋っても、犬が喋るわけがないそんな広告はおかしい、と目くじらたてるわけでもなく単純に受け入れる一方で、現実にある負の光景を見せることに躊躇する。
最大の環境破壊や社会崩壊の要因である紛争が大きな課題であるならば、それをテーマにした広告は平和ボケした我が国でこそ価値があると思うのだが。
メディア側の広告倫理規定をはじめ、企業側の神経質なくらいの事なかれ主義や臭物蓋体質は、これからの広告のありかたに重要な課題を提示しているように思う。メディアや広告主こそまずASICAの課題探索から始まって、将来の広告を見直さなければならないのかも知れない。

 

新BtoB社会におけるコミュニケーションとASICAモデル(3/5)

3.閑話休題。フェイスブックの隠れた潜在力(2/2)。

 

そこで二つ目の機能。文字入力など面倒なことは一切する必要なし。
独居老人問題の最大の課題は、今現在の健康状態や精神状態がどうなのか、である。それを別の手法で満たせばよいのであり、そのための機能開発が重要になる。

たとえば、トイレのドアを開けたら自動的にフェイスブック上にマーキングされるとか、玄関のドアを開けたら「外出」欄にマーキングされるなどいくらでも方法はある。
したがってフェイスブックのスタイルシートは主に二種類必要となる。従来のタイムラインに加えて「行動監視チャート」が新たに加わるのだ。


今までも似たような仕組みは確かにあった。ポットの電源を入れるだかお湯の量が減るだかしたらあらかじめ設定した人のところに連絡が行って、安否が確認できるという類がそれだが、あくまでも連絡先は身内や親戚に限られる。
身内に面倒を見てもらってはいるがあまりにも狭い範囲での監視体制では少々心許ない。重要なのは地域社会で面倒を見たように、いつも誰かが看てくれているという安心感だ。

それがフェイスブックでは可能になるかも知れないのだ。ただし前述のドアと連動した安否シグナルの送信と表示など、まったく新しい技術やアプリの開発は必要となるが、それもまた新たなビジネスチャンスと受け止めることもできるだろう。

そこでここまで書くとまた否定的な意見も推察できる。個人を「監視」とはどういうことだ。これは国民監視、さらには監視社会につながるのでは、とか、個人情報がどうがこうだでプライバシーの問題など。しかし今現在の重要課題を解決するのに、しかも人命に関わるような大きな課題解決のためには法律もへったくれもないだろう。法律にあわなければ法を変えればいい。


さらにデジタルデバイドの観点から見れば、今後音声入力や特定のボタンを押すことで安否シグナルが送信できる簡便さが必要になってくる。
専用リモコンの赤ボタンを押せば「ちょっとやばい。助けてくれ!」のシグナルになるとか、青のボタンなら「今日も元気だ。安心してくれ」というふうに。

老人向けFB画面

ディスプレイもパソコンでは敷居が高すぎる。普通のテレビをインターフェイスにした方がいいし、通常番組とフェイスブックの二画面同時表示がもっとも好ましいだろう。
つまりフェイスブック専用のテレビ、ということだ。こうすれば、老人のお友達仲間全体で誰が今どんな状況にあるのかをお互いに把握しあえる。

これはまさに地域社会そのものではないか。また監視の話になるが、もっと言えば行政がこれに荷担して複数のフェイスブックサイトを監視し、適切なアドバイスを記入してもいいし、赤ボタンが押された場合にのみ行政にアラートが出る仕組みにしてもいい。
フェイスブックを単に新しいメディアとするのでなく、社会インフラの一つとして捉えることだ。
 

で、こんなフェイスブックを立ち上げたところで何のビジネスにもつながらないじゃん、といったお決まりの経済合理主義が頭をもたげてきそうだが、どうしてどうしてここは将来最大の組織である老人社会そのものであるから、考えようによっては効率の良い老人マーケットと考えられる。
したがってスポンサー欄には現在のような訳のわからない広告ではなく、介護やホームヘルパー、出前、老人向けカルチャースクールなどいくらでもスポンサーは見つかる。
 

話はずれるが筆者は1997年に「マーネット」という概念を提唱した。数年前まで筆者のセミナーを受講された方にはそのさわりを紹介していたと思うが、要はリアルなマーケットが将来ネット上に形成される時代が来る、ということだ。
 

老人向けフェイスブックが軌道に乗れば、独居老人の悲劇もある程度回避されるだろうし、意外にも早々とマーネットが現実のものとなるのか知れない。
 

閑話休題と言いながら長々と書き綴ったが、BtoBコミュニケーションは組織対組織コミュニケーションであることから見ると、単にビジネスに直結したテーマだけでなくこのような最大の組織である社会が抱える課題解決も気にとめていきたいという思いからあえて紙幅を割かせていただいた。

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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