昨年チュニジアのジャスミン革命に端を発した北アフリカの民主化運動は、BtoB社会のこれからのありかたを見る良い機会だった。ソーシャルメディアが急速に普及しながらも、それが企業あるいは国民一人一人にどのような影響を与えるのか、明確な結論を得ない中でおこったこの事件は、Twitterなどが持つメディア力をまざまざと見せつけた。

まったく面識のない人々同士がTwitterを触媒としてあたかも一つの頭脳を持ったような行動パターンを誘発する。この現象は独裁国家のみならず一応民主的だと思われている我が国も含めて、先進諸国でも最大の組織である国家の運営において大きな課題を投げかけた。ここまで行かなくてもすでに我が国ではBtoC社会が崩壊し、新たなBtoB社会が到来しつつあることを機会あるごとに述べてきた。

「個」の組織化(BtoB化)を行う触媒となるのは何もTwitterだけではない。あらゆるメディアが交錯している現在、しかもCGMといわれる誰もが情報発信できる仕組みの中では、個人個人が無意識下で特定の思想や見識に誘導される可能性は十分ある。原発事故後のマスコミ対応とは裏腹にCGMによってさまざまな情報が公にさらされ、その真偽が問われているが、今となってはどうもCGMに分がありそうだ。

マスメディア全盛の時代は、良い意味でも悪い意味でも世論誘導は比較的簡単だった。一時期話題になった劇場型政治などその典型だろう。しかしCGMが今後ますます普及することを考慮すると、もはやマスメディアによる世論誘導はまったく不可能になる。それがマスメディアの信頼性低下につながり、替わって人々は独自に構築した自分だけのネットワークにある情報だけを頼りにする。こうしてさまざまなネットワークにつながれた見ず知らずの人たちが、無意識下で組織化されてしまうのだ。もうすでに若年層では携帯ネットワークなど極めて強固な組織が出来上がっている。

こうなればBtoC分野では今までのような「個」の価値観を重視したコミュニケーション活動はほとんど効力がないと考えて良い。最近広告が効かないとかものが売れないという声を耳にするが、すでに社会全体がBtoB化し、個の意識が希薄になりつつあることを考えれば当然とも言える。

メディアの多様化に伴い縦横無尽に生成される虚構の組織化、つまりBtoB化がすでに始まっている。ここでは純粋な個の意識はさして重要ではなく、組織化された個がどのような意識を持つのか、が今後広告やマーケティング分野での大きな課題になる。何とも頼りないあの人が、どうして国をひっくり返す闘志を持ったのか、など群衆心理の研究は、BtoBコミュニケーションの魅力あるテーマだ。
こうなるとBtoBマーケティング分野では今までのように経営学一辺倒ではなく、社会心理学や組織心理学、さらには個と組織を絡めた精神分析学などの学際的な取り組みが求められてくるだろう。