⑤インターナル・マーケティング。

高気圧型で広告の変革を。

組織間のホスピタリティを実感できる身近な方法がある。「インターナル・マーケティング」は社内の様々な部署を顧客と見なして対応する活動だが、ここにホスピタリティの概念を持ち込むのだ。「相手に喜んでもらう」ことを前提に全ての業務に取り組むが、重要なポイントは喜んでもらう相手部署は必ず自部署よりも外側、つまり顧客や社会に近い部署であることだ。

最も外側に位置するのは言うまでもなく営業やサービス・広報部門である。その内側にある開発・製造や販促部門は、営業に喜んでもらうために力を尽くす。さらに内側の総務・人事や経理部門は、開発・製造や販促部門に対してホスピタリティを提供すると言う具合になる。

では会社の中枢にいる総務・人事や経理部門はどこからホスピタリティを受けるのか。経営トップからである。トップを頂点にして企業の外側の部門に対してホスピタリティが広がって行く様から、このスタイルは「高気圧型ホスピタリティ」と呼べる。

一方でこれが逆になっている企業を目にする機会が少なくない。社内交渉に手間がかかるとか、顧客をさしおいてまず上司や社長のご機嫌を伺う企業風土は、ホスピタリティの流れが外側から中心の上部に向かう「低気圧型ホスピタリティ」である。組織同士の関係を良好に維持して行くためには、常にホスピタリティの先端が社会に接している高気圧型がよい。

しかし広告の現場で興味深い事実がある。多くの企業は広告計画に際し、役員会などに上程しご意見を伺うことがあるが、これこそが低気圧型なのである。自社の役員よりも顧客や社会からの評価の方が重要なのにもかかわらず、低気圧型を維持せざるを得ない難しさが企業論理としてある。

低気圧型の組織はいずれ社会から孤立する様に、こうして作られた広告は顧客などお構いなしに、社内だけが盛り上がっているという奇妙な現象を生むこととなる。広告担当は、まず顧客や社会に視点を置き、徹底的に課題探索をした上で自信を持ってソリューションをメッセージすべきであり、内向きのご意見伺いは無意味だろう。

ネットを始め多様なメディアが乱立する今、宣伝力の変革が求められとかくメディア論や広告手法に矛先が向かいがちだが、その前に広告主はトップを頂点に顧客や社会に向かって、ホスピタリティを送る高気圧型の企業風土に変革すれば自ずと広告も変わる。その糸口がインターナル・マーケティングにある。

インターナルマーケティング