①展示会が変わった。潜在顧客の発掘の場に。
10月ともなれば展示会シーズンたけなわで、マーケティング担当にとって最も多忙な季節だ。しかし昨年来展示会への出展を縮小する企業が多くなった。昨今の経済危機がその主な要因であるが、最も大きな理由は展示会への客足が遠のいたことにある。
「客が来ないから出さない」一見大義名分と思われるこの背景には、ネットの普及による展示会メディアの機能的な変化が隠れている。従来展示会は新製品発表など広報の場としての機能が優先されていた。しかしWEBサイトの活用で広報機能を持った展示会は衰退し、新たに別の機能を持ち始めた。顧客が抱える「課題」を解決する手段として実機を前にしたソリューションが提示できるメディアは展示会以外にない。展示会メディアは情報発信という広報機能からソリューション提供という顧客に対するいわばホスピタリティ機能へと変貌したのである。
もう一つ展示会に見逃せない特性がある。メールやWEBなど顔の見えないコミュニケーション形態が主流である現在、展示会だけはフェースツーフェースコミュニケーションが実現できる希有なメディアである。これに気付かない多くの企業は、客が来ないから出さないというが、自ら出展して客を呼ぶ姿勢が過剰なネットメディアの依存によって欠落してしまったのだろうか。
企業はそれぞれ膨大な見込み客(潜在顧客)リストを持っている。この見込み客に一人一人地道に声をかけ、展示会への集客を促しそこで有能な説明員(技術者)によるソリューションを提示する。これがホスピタリティマーケティングの第一歩と言える。いつまでも主催者の集客力に甘えるのではなく、自らの力で集客しなければならない。客が来ないと言って展示会に出さない企業でも、相変わらず通常の客先訪問には熱を入れているのだから。
米国の展示会リサーチ会社のデータでは、展示会営業は通常営業とくらべて2倍以上のセールス効率があるという。質の高い見込み客を招くことが前提であるならこの数字は当然だろう。WEB全盛の今、フェースツーフェースメディアとして展示会は今後もっとも注目できるメディアでもある。にもかかわらず展示会を衰退させているのはネットメディアの進化でも主催者の怠慢でもなく、出展企業の見当違いなマーケティング戦略によるものかも知れない。客が来ないから出展しないのではなく、客を呼ぶために参加することが、マーケットそのものを活性化することになる。