11. 展示会効果の捉え方と効果測定例
さて、ここで展示会の効果測定についても考えてみたい。展示会の最終的な目的は「受注拡大(受注確保)」にあるだろうが、それ以外にも展示会は様々な機能を保有している。集客ありきの考え方も、展示会を広告媒体として見るなら否定はできない。要は、展示会を「広告媒体」として捉えるか「営業の場」として捉えるかによって、その効果に対する概念は変わってくる。
展示会には多くの来場者があり、当然そこではブランドの露出が行われ、認知度向上の効果がある。また、ブース内で顧客や見込み客とのコミュニケーションやソリューションの提示を通じて、顧客満足度の向上や需要創造の機会もある。展示会効果測定において、明確に数字として捉えることができるのは、「投資コスト」「来場者数(自社ブース・会場全体)」「商談額(受注額)」となる。これらの数字を用いて展示会効果測定の基準を作ることになるが、この数字以外の見えない効果、つまりブランドイメージやすぐには受注には結びつかないが、好意的な受注予備軍をどのように取り扱うかが課題として残る。
ここで端的な展示会効果測定の一例を示す。
まず展示会効果を「PR効果」と「セールス効果」の二つに分けて捉える。
a.PR効果=PR効果は来場者数を投資コストで除したものであり、単位コストでどれだけ多くの来場者が得られたかを示す。
PR効果=来場者数÷投資コスト → 認知効率
b.セールス効果=セールス効果は受注額(引き合い額・商談額)を来場者数で除したものであり、来場者ひとりあたりどれだけの受注が得られたかを示す。
セールス効果=受注額(引き合い額・商談額)÷来場者数 → 受注効率
このように展示会には二つの効果があると考えられ、最終的な展示会効果はこの二つの効果を掛け合わせることによって得られると理解することができる。つまり、
展示会効果=(来場者数÷投資コスト)×(受注額÷来場者数)
展示会効果=PR効果×セールス効果
となるが、ここではそれぞれの効果測定で分子と分母になる「来場者数」が相殺され、結果的には「受注額(引き合い額・商談額)」を「投資コスト」で除した数字となる。
展示会効果=受注額÷投資コスト
こうしてみれば展示会効果は単純に投資コストと受注額によって算出できるようであるが、実は相殺された「来場者数」の「量」ではなく「質」に大きな意味があることを忘れてはならない。この「質」の表現は数字では困難であるが、来場者の「質」の向上によってPR効果面でのブランド認知の「質」が向上する。また当然来場者の質が向上すれば結果的に受注額も増加し、セールス効果も向上する。
前述したように、展示会のROIを向上する条件として説明員の質の問題を取り上げたが、同時に来場者の質もまたROIに大きく影響する。この来場者の質を高めることが、6項で述べた集客の課題に合致する。またここでの来場者を、「展示会場全体の来場者」と設定した場合と「自社ブース来場者」と設定した場合とではやや意味合いは異なってくる。さらに、「受注額」を「引き合い額」や「リード件数(カタログ請求件数)」と置き換えることもできるが、各企業それぞれに営業形態や企業運営形態に沿った形で独自の効果算出式を構築すればよいと考える。
重要なのは展示会効果算出式で得られた数字は絶対的なものではなく、各展示会や年ごとの変化率の把握(トレンドの把握)として位置づけた方が良い。なお、受注成立にはセールスコールの質(引き合い処理の仕方)が大きく影響するため、多面的な営業活動の一環としてこの数式を捉えることも重要である。
また、数字では表れない様々な要素、例えば顧客創造やリレーションシップなども、最終的には後々の受注額に寄与するものと考えられ、またとりわけBtoB分野では受注成立までに長期間要することもあるため、この効果測定算式は継続的に使用しその結果のトレンドを数年に渡って把握していくことが重要と考える。