河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

2010年11月

ASICAモデルからみた展示会の可能性(4/8)

6.人が集まるのか、人を集めるのか


昨年来我が国に限らず世界的に展示会の集客が低下してきている。もちろん不景気の影響が大きいと思うが、その原因は他にもある。

「この展示会は来場者数が少ないから出展しない」という声が当たり前のように聞こえてくるが、そこには集客は誰か(展示会主催者)がやってくれるはず、という甘えが隠れている。じつはこれが大きな勘違いであることに、多くの人は気付いていない。刺激反応型パラダイムの時代では、当然ながら刺激を求めてあちこちからわざわざ展示会に人はやってきた。しかしパラダイムが変化した今、交通費を払ってまでむやみに展示会に出かける人は少ないだろう。

展示会は、もはや黙っていては人は来てくれないものと認識すべきである。

経費削減の中、展示会に出展しなくても顧客訪問を中止する企業はない。それは課題を抱えた見込み客が存在するからで、その見込み客を展示会に誘うのがじつはマーケティング力なのである。どんなに頑張っても1日に訪問できる顧客数はせいぜい10件程度だろう。そんなに効率の悪い営業活動を行いながら、その何倍もの見込み客と接することができる展示会になぜ人を呼ばないのか。

自社が持っている膨大な見込み客にどれだけアプローチがかけられるか、それを出展企業すべてが行えるかによって展示会の価値が決まってくる。他社が集客した見込み客のおこぼれを期待するようでは、先が知れている。アプローチの仕方も案内状だけを送付して後はなしのつぶて、というのはほとんど効果がない。展示会直前には少なくとも電話やメールで顧客に来場を促すくらいの通常営業と同じ心遣いが必要である。

ちなみに筆者が以前行った自社の調査では、同じ展示会で案内状だけを送付した年と、開催直前に電話フォローした年とを比較してみると、電話フォローの年に25%の集客向上があった。

ここでもう一度展示会の原点である「市」の成り立ちについて振り返ってみよう。「市」が、物を探し歩く非効率の改善と物財交換のための効率的な「場」として成立し、そこで情報交換もなされたことを考えれば、顧客側からは、あちこちソリューションを探し回らなくてもそこに行けば様々な課題解決策が一堂に得られる場として展示会を捉えることができる。また出展企業側から見れば、あちこちに顧客訪問しなくても、そこに行けば見込み客が一堂に会している場として展示会の価値を認めることができる。つまり展示会構成企業がそれぞれに、見込み客への集客に最大限の努力を払うことは「市」の形成要因であった価値交換効率改善の最大の条件なのである。

ASICAモデルからみた展示会の可能性(3/8)

5.インターネット時代の展示会の役割と本来の価値(Face to Faceマーケティング)

インターネットの普及によって広報メディアとしての展示会は、ほとんど価値がなくなった。だからと言ってこれから展示会は発展しない、と考えるのはあまりにも早計である。とりわけ景気が低迷している時期には、展示会に参加しない理由に広報メディアとしての効果論をアリバイにする場合が多いが、そこでは展示会の本来持っている価値がほとんど議論されていない。
WEBサイトをいくら充実させても、そこで顧客と握手ができるのか?最先端のツイッターなどの手段を用いても、WEBサイト上で顧客の目を見ながら直接会話ができるのか?さらに顧客はWEBサイト上で実際に製品を手にとってその機能を確認できるのか?
様々な分野でネット至上論が展開されているが、唯一展示会だけはネットで代替できない機能を持っている。「接触メディア」としての機能である。Face to Faceマーケティングの一環として、顧客と直接面と向かって話せるメディアは展示会以外にない。もとより我々は五感を駆使して情報処理している。この五感がバランスよく機能して初めて正確な情報処理が可能になる。インターネットなど新しい技術が旧来のメディアを駆逐するような論調を目にするが、じつは五感を完備したメディアは旧来のリアルメディアである場合が多い。逆に言えば、インターネットメディアには視覚と聴覚の二感しか備えていない危うさがある。さらに旧来メディアのなかでもオーディエンスに対する広義の触覚を備えているメディアは展示会だけである。
この「接触メディア」機能が、展示会の本来の価値なのである。今後ますますネットの普及に伴って、やがて五感が満足できないネットに飽き足りた時、Face to Faceマーケティングの重要性が必ず見直される。ASICAモデルから見ても、Aから最後のAまですべてのプロセスをカバーできるメディアは展示会以外にない。インターネットの普及で代替できるのは展示会場で集めたカタログであり、展示会そのものではない。むしろ顧客との接触が最大の機能である展示会では、情報発信機能ではなく顧客とのコミュニケーション機能を重視した方が良い。 
そのコミュニケーションの核になるのが、ASICAモデルの課題(Assignment)探索であり、課題解決策(Solution)の提示である。一般に公開されている情報は展示会では必要ない。WEBサイトにも公開していない「顧客企業それぞれが持つこれからの課題と解決策」について顧客と議論できる場として展示会を運営すべきである。そのため、展示会には製品展示の場だけでなく、セミナーやワークショップなど双方向の仕掛けを導入しなければならない。つまり、五感をフル活用できる場として展示会を演出することが重要になってくる。
WEBの普及による展示会価値の変化

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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