7.組織の把握と専門性を持った課題探索

このように社会がBtoBに方向転換しつつあるとしたら、我々広告人は何をすればよいのか。BtoB業界では従来から企業間取引の一環として相手企業の特性をある程度把握するスキルは持ち合わせているが、一歩進んで相手企業の風土やトップの性格なども解析する必要性がでてくる。ル・ボンが「個人はその意識的個性を失うと、それを失わせた実験者のあらゆる暗示にしたがって、その性格や習慣にまったく反する行為をも行うような状態におかれることがある」と言っている。ここで言う実験者とは組織のリーダーのことであり、トップが変われば企業風土が大きく変わる可能性は十分にあるからだ。さらに同じ企業であっても、ターゲットとなる窓口担当者が企業内に形成されているどんな組織に属しているかも見極める必要がある。そのほか購買センターや最終決裁者然りである。 また「課題」は「ニーズ」とは異なり、現時点での顧客が抱える課題だけでなく、将来にわたって顧客が対面するであろう課題の予測も含む。そのためには顧客企業と同等以上の専門性が不可欠で、顧客企業のコンサルタンシーという位置づけがこれからのBtoB企業には要求される。 BtoC業界ではまず社会にどのような組織が存在し、その組織にはどんなパラダイムが支配的なのか、を見極めなければならない。従来からよく言われている世代や趣味と言った単純なくくりではなく、隠された組織形成要因を見つけ出すことが重要になってくる。以前は限られた情報によって比較的世論誘導は容易であったことから、組織の把握もそんなに困難ではなかった。しかし現在、無尽蔵に発せられる情報によって、形成される組織もそのパラダイムも極めて複雑化しつつあり、それを理解するのは非常に難しい。そんな中で組織ごとにどのような課題を持っているのかを把握することは、広告と言うよりマーケティング活動のもっとも初歩的な段階であると思われ、今後各企業ともこのための体制を整える必要性に迫られるだろう。

8.ソリューションの源はホスピタリティ

さてASICAの第二段階のプロセスである「解決(solution)」においては、前述の八百屋の御用聞きで取り上げたように、組織の維持に欠かせないポイントとしてホスピタリティがある。簡単に言えば、いかに相手に喜んでもらえるかと言うことである。広告の世界ではとかく企業の独りよがりのメッセージを提供しがちであるが、本来は相手が抱えている(であろう)課題に対して、的確な解決策を提示することが必要であり、その根底にあるのがホスピタリティだと言うことを忘れてはならない。相手を重んずるホスピタリティを徹底すれば、意外とソリューションは簡単に見つかるものであるが、自社ありきのスタンスではなかなかうまくいかないものである。 ソリューションを提供するメディアとしてはWEBサイトが有効だが、なにぶんアクセスさせるための仕掛けが心許ない。なんと言ってもこの場面は展示会しかないだろう。Face to Faceマーケティングが今後注目されると思うが、まさに展示会はソリューション提示の貴重なメディアである。現在不況の影響で展示会は総崩れであるが、これは展示会を広告と同列に情報提供の場として捉えているからであり、課題解決の場としてみればこれから間違いなく発展していくメディアである。展示会では製品を並べるだけでなく、課題解決を前提としたFace to Faceマーケティングの場、あるいはホスピタリティの場として活用すべきである。