5.BtoBとBtoCの違いはどこにあるか

ここで、BtoBとBtoCの違いを今一度考えてみたい。一般的にはBtoBは組織対組織取引、BtoCは組織対個人取引と見なされている。取引形態から見れば妥当な捉え方ではあるが、そもそも組織自体にコミュニケーションスキルが存在するのか、という疑問がわいてくる。組織といえども結局のところその組織に所属する個人から別の組織に所属するの個人へのコミュニケーション形態ということになる。つまるところ、BtoBであってもBtoCであっても結局は個人対個人(PtoP)コミュニケーションという様式が浮かび上がってくる。ただ重要なのは「B」は個人によって構成されているとしても、それは「組織人」としての個人であり決して市井人としての個人ではない。もっとも組織自体に個人と類似した心理や意識が存在することも考えられ、じつのところこの研究は筆者の最大の課題でもあるが、これについてはまた別の機会に述べてみたい。 このようにコミュニケーション形態から捉えた場合、BtoBは組織人対組織人、BtoCは組織人対市井人という見方が正直なところだろう。

6.購買プロセスモデルからみたBtoBとBtoCの違い

そしてこの「組織人」がもつ特殊性こそが、新たな広告モデルの構築に大きなヒントを与えてくれる。これをわかりやすく理解するために、BtoBとBtoCの違いを、もう一つの側面から考えてみよう。 上述のようなコミュニケーション形態の違いではなく、商品やサービスの購買資金からその違いを見てみると明確な結論が得られる。 ある商品を購入する場合、BtoCでは当然のことながらその購入資金は個人の金であり、その使途については当該個人の裁量に任される。AIDMA理論でいうところの「A」で注目し、「I」でその商品に興味を感じ、「D」で欲しいという気持ちが表れればいとも簡単に購入(A)できる。それが衝動買いかどうかは「D」の記憶段階でどれだけ購入検討がなされるかによって決定されるが、いずれにしても欲しい商品は自らの決断(決裁)で購入できる。これらの購入プロセスで最も大きな役割を果たすのが個人の「欲しいという気持ち」であり、それを補足する要素として資金力がある。昨今のカード決裁の増加を見れば、資金力はさておき「欲しいという気持ち」が断然優先され、そこには経済合理性はほとんど無視されるケースも多く見られる。だからこそ最近ではマーケティング分野において、個人の「気持ち」の側面からアプローチを試みる「神経経済学」や「ニューロマーケティング」が注目されているのである。 一方BtoBではどうだろう。商品の購入資金は個人ではなく「組織(会社)の金」である。当然組織の金は当該年度の予算という形で厳重に管理されている。いくら組織を構成する個人が「欲しい」と思っても、そう簡単に購入できるわけではない。というより、そもそも個人が購買決定を行うのではなく、組織としてその商品が必要かどうかに基づいてなされることになる。この段階では経費や固定資産などの予算はもとより、その商品を購入することによるメリットが様々な側面から検討されることになる。そして十分に経済合理性(効率)がもたらされると判断されて、ようやく購買決定となるわけである。ここで組織として検討・決定するということは、そのプロセス上で複数の個人が参画し、それぞれに関連する分野から商品購入の妥当性について決断を下すことになる。そのためにBtoCではまったく見られないBtoBの特性として「承認・決済」というプロセスが生じてくる。しかもこの「承認・決済」はほとんどの場合、商品を「欲しい」と思っている個人とは別の個人が行うことになる。ここにBtoCとBtoBを明確に差異化する要素がある。つまりBtoBにおける「組織人」はBtoCでの「個人」とはまったく異なり、商品の購入意欲(物欲)はほとんど表には出ず、常に組織を構成する他の個人の意見や予算、承認などを意識せざるをえないと言うことになる。これが「組織人」の特性である。いわばこのプロセスは「企業購買のプロセスモデル」と理解することができ、AIDMAの「消費者心理プロセス」とはまったく異なるものである。