BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㊾

《質問》
 

我が社では年に数回展示会に参加しています。それぞれの展示会で案内状を送っているのですが、どうも集客に結びついていないような気がしています。たとえば昨年末の展示会では2000部の案内状を配布し、ブースでカタログ請求があったお客様は100人程度でした。この数字をどのように読めばいいのかよく分かりません。展示会での案内状の機能と効率よく集客に結びつける案内状の内容や配布方法などについてご教授いただきますようお願いします。(食品製造機械メーカー・マーケティング部)

 

《回答》
 

 展示会において案内状は最も集客に寄与できるメディアであることは間違いありません。したがって御社が2000部配布されて100人のリードが得られたのは決して効率の悪い結果ではないでしょう。しかしこの効率をもっと上げる方法があることも事実であり、この点についてお話しします。
 

 一般的な展示会では来場者の50%から70%が主催者や出展者からの案内状が来場のきっかけになっています。この数字からすれば御社には2000部の50%として1000名のブース訪問があり、100人のリード獲得は極めて効率が悪いと理解されがちですが、ここに大きな落とし穴があります。まず来場者の5070%の来場契機が案内状によるものとなっていますがじつはこの数字は案内状の総配布部数の3%程度にしかなりません。

 言い換えれば案内状のリーチはわずか3%にすぎないのです。来場契機の5070%と3%の数字を見れば大きな開きがあり違和感を覚えますが、膨大な数量を配布する案内状のコスト効率は決して良くないと言えます。この数字から読み解くと御社が2000部の案内状を配布されて100名のリードが得られたことはリーチ率が5%ですので決して悪い数字ではありません。おそらく実際に案内状によって御社のブースに来られたのは60名程度であり、リードまで達したのは40名程度だと考えられます。残りの60名は同業他社や主催者からの案内状によって来場されたお客様がたまたま御社のブースに立ち寄られた結果でしょう。
 

 この数字で案内状のコスト計算をしてみましょう。2000部をすべて郵送されたとすれば郵送料だけで164千円かかります。その結果40名の実質リーチだとすれば一人あたり4,100円のコストがかかっておりけっして安くはありません。CPMから考えると他のメディアに比べて極端にコスト効率が悪い数字になってしまいます。
 

 一般的にDMのリーチ率は3%と言われています。それだけを見れば御社の結果は安心できるのですが、じつはこの3%という数字はもう230年前からほとんど変化がありません。ということは展示会集客の手法が数十年にわたって全く改善されていないとも言えます。
 

 そこでネットを利用したメルマガやWEBサイトが集客改善につながると考えられがちですが、メルマガやWEBサイトによる集客率はDMの数分の一であることも忘れてはなりません。
 

 その意味ではさらに効率よく案内状で集客する方法を考えなければなりませんが、ここで少し横道にそれたお話しをします。
 

 BtoC分野ではありますが購買形態はBtoBと同じと考えられる住宅の状況を見てみましょう。住宅展示場での来場者分析によるとチラシのリーチ率はなんと0.5%程度しかありません。展示会に比べて遙かに効率が悪いと言えます。しかも成約率となると気が遠くなるほど低い数字になります。しかしこのような状況の中でもリーチ率20%以上成約率が75%と言う信じられない数字を出している住宅販売会社が存在します。
 

 この住宅販売会社が行っているプロモーション手法が非常に参考になると思いますので紹介します。この企業ではまずチラシを無造作に配布するのではなく、見込み客の中で当該販売住宅の特性に合致したターゲットを厳選してチラシを郵送し、直後にセールスコール(顧客訪問)をかけているのです。ここでのキーワードは「見込み客の厳選」です。見込み客はさまざまなメディアや販売活動で得られた購買予備軍と言えますが、重要なのは購買動機付けがすでに行われていることと予算の裏付けがあることです。これらのターゲットに集中してプロモーションすることで、コスト効率は最大化されます。
 

 さてこの手法を展示会の案内状に当てはめて見ましょう。まず案内状の配布先は見込み客に限定することが重要です。展示会でよく勘違いされるのはリードが多く集まったら大成功、のようなとらえ方をしてしまうことです。いくら多くのリードが得られてもまず導入予算の裏付けのないリードは成約には至らないか、果実を得るまでに大変な時間を要することになり、結果的にコスト効率は悪くなってしまいます。したがって案内状を送付する際は見込み客の中でも導入予算の裏付け(具体的には予算執行時期が1年以内)がありお客様の課題解決に合致した商材を展示することが前提になります。
 

 さらに大切なのは、先の住宅販売会社のように、案内状を送付した後必ずセールスコールをかけることです。顧客訪問が難しければ電話でもいいですから展示会開催の3週間前から最低1週間に一度は電話することで集客率は見違えるように向上します。
 

 今はデジタルの時代だからと言って間違ってもメルマガで膨大な量を送りつけることは避けた方がいいでしょう。メルマガの到達率の悪さは前述しましたが、最も大きな問題はこのようなプロモーションの自動化は顧客接点も自動化されてしまうことです。情報量が膨大に増加した現在では、自動化された接点は直ちに消去されてしまいます。それでもメルマガを送信して1週間以内にセールスコールをかければこの接点は持続し結果的に集客に寄与できます。しかしメルマガは送信量が膨大でありそれぞれの送信先にセールスコールをかけるのも限界があります。したがって効率を考慮すれば、案内状を厳選された見込み客に送付することが最も効率が良いと言うことに落ち着くのです。
 

 さらに重要な点をひとつお話しします。業界展はもちろんですが一般的な展示会は広義では競合会社の集まりであることに留意すべきです。つまり、展示会の案内状は御社だけでなく競合会社からも同じお客様に送られているのです。実際に私も同じ展示会の案内状が異なった企業から何通も送られてくることがあります。ここで大切なのは競合会社の中でもひときわお客様の心を引く案内のしかたを考えなければなりません。
 

 最も効果があるのはすべて手書きの案内状ですがこれには数をこなすのに限界があります。つぎは主催者の準備した案内状に加えて独自の案内状を作成することです。当然厳選された見込み客に送付するわけですから、案内状に記述する内容も明確になるはずです。そしてできれば短冊状の手紙用紙でいいですから、手書きで一筆書き添えておく心遣いが集客に大きな効果をもたらします。
 

 おたずねの結論は、まず展示会の案内状は厳選された見込み客のみに送付することと見込み客との接点をより強固にするために手書きでメッセージを添え、さらに事前のセールスコールを訪問や電話で行うこと。そして最後に重要なポイントですが、送付元には必ず個人名を記載しておくこと。これによって案内状での集客効果は見違えるほど大きくなるはずです。