河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

代理店の使い方/専門家がいない宣伝部(中小企業)

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑮

《質問》

弊社は年間売上高100億円に満たない中小企業ですが、宣伝部員は私を含めて2名です。主な業務は製品カタログ制作ですが、現在は印刷会社にお願いしています。マスメディアの広告は業界紙における製品広告が主体ですが、広告原稿はカタログ同様印刷会社にお願いしています。展示会は通常2小間程度で、営業部隊が取り仕切っており、宣伝部員は装飾の手配が主たる業務となっています。今後業容の拡大に伴ってマス広告や展示会の拡張などが予測され、それに伴って広告代理店の使用を考えているのですが、広告代理店とお付き合いするにあたって必要な事柄や対処の仕方などについてご教示いただければ、と思います。(樹脂部品メーカー・宣伝担当)

《回答》

代理店を使うにあたってまず基本的なスタンスを明確にしなければなりません。それには2つあります。

まず、宣伝業務を通常の仕事と考えてとりあえずうまくこなしていくやり方です。要は、宣伝業務をつつがなく行える体制を作ると言うことですが、他の業務とほとんど変わりがない日常業務となります。

もう一つは、宣伝業務を企業と社会や顧客とのコミュニケーションの重要な役割と認識し、さらにとくにクリエイティブに達成感や喜びをもたらす体制づくりです。

本来宣伝広告業務の醍醐味は後者にあるのですが、現在ほとんどの企業が理屈はともかく前者の体制を組んでいます。その要因として人事ローテーションがあります。宣伝部門に配属されて23年すると他部署に異動ともなれば、クリエイティブのおもしろさや達成感を味わっている暇もありません。したがってとりあえず指示された仕事をそつなくこなすという意味で社外の広告代理店などに丸投げしているケースが多いと思われます。

御社若しくはあなたがどの方向を取るかによって、代理店との接し方も変わってきます。前者の場合ですととくに難しくはありません。適当にオリエンテーションを行えばそこそこの品質のものは出来上がってきます。ただ、代理店はあくまでも代理ですのでクリエイティブに関する仕事は外注されますし、当然営業経費もかかってきます。したがってコストはかなり高めになることは覚悟が必要です。ただ、大手の広告代理店の場合は社内でマーケットリサーチの研究部隊を持っていますので、それらの資料やデータを入手することが可能です。これは社内稟議の際に大いに役立つものです。もちろんそのデータ入手に於いてもそれなりのコストは必要となります。さらに最も問題なのはこのケースは仕事は簡単ですが、社内にノウハウの蓄積が期待できないことです。

御社の現状を考えると、私はむしろ後者を選んだ方がいいと思います。

あなたが広告宣伝業務にどれほど魅力を感じておられるのか不明ですが、社会や顧客に対して企業の最前線でメッセージしていくこの業務は非常に魅力的です。中でもクリエイティブはいわば競合企業やその他大勢の企業との戦争とも言えますし、それに打ち勝ちクリエイティブひとつでオーディエンスの心を動かせるのは広告宣伝業務の最大の魅力であり、使命でもあるのです。

そこでこの場合、時として代理店の存在が邪魔になることがあります。仮に代理店に発注する場合、必ず営業担当と打ち合わせすることになります。もちろんオリエンテーションなどではデザイナーやコピーライターなどのクリエイターが参加する場合もありますが、酷い場合はオリエンテーションですら営業担当しか参加しないケースも見受けられます。オリエンテーションにクリエイターが参加した場合でも、その後のプレゼンでは営業担当との交渉となります。そうすると、代理店内部でどういうことが起こるかといいますと、いわゆる伝言ゲームに似た様相を呈してきます。

とりわけプレゼンの場合、当方の要求を一応営業担当に伝えても、その営業担当がどれほど明確に当方の要求や改善点をクリエイターに伝えているのか非常に疑問に感じる場合が少なくありません。

その繰り返しで何度もプレゼンのやり直しという最悪のケースも生まれてきます。コストは時間に比例しますから、そうなれば当然トータルコストは大きくならざるを得ません。もし広告代理店を使う場合でも、営業担当は抜きにして直接クリエイターと協働したほうがコストも時間も少なくて済みます。

そこで最もコストを安価に、しかも優れた作品を作り上げる方法を提示します。

それは代理店を使わずに直接クリエイター(デザイナーやコピーライターまたはデザイン会社)と取引することです。少々面倒な部分はありますが、このスタイルで行けば自ずと広告や宣伝業務のおもしろさや使命感が身についてきます。

その理由として重要なのは「自社の製品やサービス、ブランドについては当該企業の従業員が最も良く認識している」ということです。本来なら製品や企業理念を熟知した従業員(つまりあなた方)が自ら広告作りを行えば最高なのですが、クリエイティブに関する専門知識がなければそう簡単に進めることもできません。つまり、代理店にしろ外部クリエイターにしろいわゆる外注する意味は、「表現面での専門技術」を頼りにすると言うことになります。そこでは前述した専門技術を持たない代理店営業担当はむしろ余計な存在になってしまうのです。

私は現役時代からクリエイティブに関しては直接デザイナーやコピーライターとともに仕事を行い、充実した結果を残せました。その最大の要因は、自社を最も熟知している私のビジョンや夢、社会に対する提言などをクリエイターが共有してくれて、作品として定着してくれた結果だと考えています。

この場合、けっして一流のクリエイターとチームを組む必要はありません。むしろ若手のこれから伸びようとするクリエイターの方が、ともに成長していこうとする姿勢も見られ、試行錯誤しながらも作品を作る喜びを共有できるものです。

一方製品カタログに関してはもう一つ興味深い手法があります。前述のように製品に関しては誰よりも自社の開発担当や営業担当が熟知しているはずです。それならば彼らをカタログづくりに参加させればいいのです。何も代理店を使う必要もありません。製品カタログは営業担当のツールであり、できるだけ営業担当が使いやすい編集が望まれます。その意味では、たとえば御社の最高の営業担当に模擬商談を行ってもらいます。客先の代理は宣伝担当でいいでしょう。時間は2時間程度徹底的に製品の売り込みを行ってもらい、その内容を録音します。その後、商談内容をカタログに再編集すれば最高に役立つ製品カタログが簡単に出来上がります。編集作業に専門的な知識がなければ、外部のデザイナーに直接依頼してもいいと思います。こうすることによっておそらく製品カタログの製作コストは3050%押さえられるはずです。

いずれにしても冒頭に記した様に、御社が宣伝業務をどのように捉えているかによって代理店の使い方は変わってきます。

 

インターネット広告の効果について

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑭

《質問》

私はある機械メーカーの宣伝担当ですが、最近コスト効率の観点から印刷メディアの広告をインターネット広告に切り替える動きがあります。私自身はまだまだ印刷メディアの広告にこだわりを持っているのですが、最近、インターネット広告が新聞広告を凌駕したなどのニュースを盾に、上長はインターネット広告を推し進めるつもりです。そこでお尋ねしたいのですが、インターネット広告にはどれほどの効果があるのでしょうか? またインターネット広告を行う際に気を付けなければならない点などご教示いただければ幸いです。(機械メーカー・宣伝担当)

《回答》

最近あちこちからご指摘のような話しを耳にします。まるでインターネット広告を早くやらねば時代に乗り遅れる、と言うような焦りすら感じることがあります。

これはあくまでも私個人の私見としてですが、ズバリ申し上げて、BtoB業界ではインターネット広告の効果はほとんどないと思っています。

その理由は、メディア論的な観点から見れば、確かにインターネット広告は広告取扱高(いわゆる広告料金)については最近新聞広告を追い抜いたとされています。しかしこれはあくまでも広告料金の総額です。昨今の経済状況から新聞広告は広告料金の低下が数年前から顕著になっています。一方でインターネット広告はその時代性や人気の高さから、広告料金は漸増しつつあります。これらのバイアスをキャンセルもしないで、単に広告料金の総額だけでメディアの優位性を論じるのはあまりにも早計だと思っています。

さらに問題なのは、BtoB業界で「インターネット広告に切り替えて受注が増加した」という話しが一向に聞こえてこないことです。私のメディア論から言えば、少なくともBtoB業界では広告で商品の受注が促進されることはありません。あくまでも見込み客の獲得がその効果として現れるだけです。そして少し論点がずれますが、それらの見込み客を受注に結びつけるのが、セールスであり、そのツールであるカタログ。そして最強のメディアが展示会なのです。

広告効果を論じる際に、このように各メディアの役割分担を明確にした上でそれぞれの効果を見ていかなければならないのです。またインターネット広告は言いかえればWEBサイトの広告効果と同一と見なすことができます。BtoB業界では広告ほどではありませんが依然としてWEBサイトでは商品は売れません。あくまでも見込み客の獲得が第一の目標になります。

一方で新聞広告の場合はどうでしょう。昔なら広告の右下や左下に小さな三角の問い合わせシールがあり、それを葉書に貼ってカタログ請求などをしたものです。つまりこれが見込み客からの引き合いと言うことです。ところが現在では広告に三角のシールなどどこにもありません。インターネット時代の今、広告の引き合いも最終的にはWEBサイトに到達するのです。このことからインターネット広告であっても新聞広告であっても見込み客からの引き合いはWEBでカウントされることになります。

cpmの視点から見ると制作原価やメディアコストが少ないインターネット広告に分がありそうです。しかしくどいようですが、いくらcpmが低くても受注に結びつかなければまったく意味はありません。

インターネット広告はおそらく原稿制作費も安価でしかも手短に制作できる(これは後述しますがモノによります)ため、ログを解析することによってあたかもコスト効率が良いような錯覚を覚えます。しかしインターネット広告の場合は、クリック一発で当該WEBにアクセスできます。この簡便さが問題なのです。とりあえず見てみようというインターネット広告がどれほど多いか……。そんなアクセスはなんの役にも立ちませんが、広告担当者はアクセスが増えたと喜ぶわけです。

BtoCの場合は、いわゆる「衝動買い」が期待できますから、ある程度インターネット広告の効果は否定できません。しかしBtoBの場合は、何らかの目的意識を持ってネットに向かい情報検索します。まさに真剣勝負です。そんなときにサイト画面の横あたりにチラチラ出てくるインターネット広告には見向きをする暇もありませんし、むしろ煩わしいくらいです。検索サイトの上位に表示されるリスティング広告(「PR」と表示されたり色分けされている)はヒット数に応じた価格設定で一見効率的なようですが、私の場合はそこに「PR」などと表示されている広告はあえてクリックしません。真剣に情報検索しているのに、「PR」表示のリストをクリックして目的とする情報にありつけたことはほとんどないからです。あらはあくまでも「広告」であって、情報検索中には煩わしい広告など不要なのです。

ところで上述したようにインターネット広告の制作費は安価にできると言いましたが、リスティング広告にしてもバナー広告にしてもそれ自体は確かに低価格で制作できます。しかし問題は、これらの広告からジャンプした後の自社サイトの企画にあります。酷い場合はインターネット広告をクリックすると当該企業のトップページにリンクされているケースがありますが、これはインターネット広告を大きく誤解しています。

もし仮にインターネット広告を行うのであれば、自社サイトにはそれに呼応した「プロモーションサイト」を構築すべきでしょう。つまり自社のビジネスサイトとは別にプロモーション用のサイトを作ることを意味しますが、これはたとえば新聞広告で得られた引き合いに対して営業担当がカタログ持参で営業活動を行うスタイルに代替できるものです。そうなると、余程の説得力と懇切丁寧な内容をUI(ユーザーインターフェイス)をもとに構築しなければなりません。これはそう安価にできるものではなく、場合によると数百万円以上かかってしまいます。要するに結局インターネット広告を有効に採用するとなれば、広告費以外に多額のプロモーションサイトの制作費が必要になってくるのです。

しかも問題はこれらのプロモーションサイトの制作コストもじつは上述したインターネット広告の広告取扱高に編入されている場合もあります。こうなるとますますインターネット広告全盛というイメージが出来上がってしまうのです。

最後にインターネット広告の今後の課題についてひとつ。たとえば少女が誘拐されたなどと言う悲劇的な事件の記事の横に、無神経で楽しそうなインターネット広告が表示される場合が多々あります。自動的に掲載ルーチンを設定されているのがその原因だと思いますが、その広告主のブランドイメージが大きく毀損されることに気づかなければなりません。そろそろ社会倫理の観点からこのような状況を見直す時期に来ていると思います。

以上、BtoB業界におかれては慎重にインターネット広告に取り組まれた方がいいと思いますし、常にその効果(アクセスした見込み客の優劣判定)を追い続けることが大切だと考えます。

 

マーケティング部門の新設についてのご意見

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑬

《質問》

我が社では今後の景気回復を前提に、より拡販をめざしてマーケティング部門の必要性が唱えられています。現在は宣伝部でコーポレート関連のメディア展開を行い、各事業部でそれぞれにカタログや展示会などの企画運営を行っています。新たにマーケティング部門を設置するとしたら、既存の部内の方が良いのか独立した部門の方が良いのかご意見頂戴できれば幸いです。(電子部品メーカー・宣伝部)

《回答》

最近ではフィリップ・コトラーによるマーケティング3.0が提唱されるなど、SNSに代表されるソーシャルメディアの普及によって新たなマーケティング理論が矢継ぎ早に紹介されています。それに伴って、各企業とも新しいマーケティングに乗り遅れまいとする焦りのようなものを感じています。おそらく御社でもそのような背景があってマーケティング部門の新設を検討されているのだと思います。

ところで、マーケティングの概念は約50年前に米国から我が国に導入され、その後さまざまなマーケティング理論が提唱されてきました。そしてよく考えてみるとこの50年間、ネットの普及や社会構造の変化、為替や景気の極端な変動に晒された各企業の業績はどうだったでしょうか。

確かに50年の間に企業は成長し、それなりの売上げをなし、一見成長してきたかに思えますが、一方では賃金の停滞や有力企業の衰退など、必ずしも全体を見つめると大きく様変わりしたとは思えません。むしろ気がかりなのは、衰退傾向にある有力企業ほど新しいマーケティング理論を導入し、全社体制でマーケティングに取り組んできたことです。これは何を意味しているのかよく考えなければなりません。

翻ってピーター・ドラッカーは「マーケティングは売れる仕組みを作ることであり、最終的には単純なセリング(販売)を無くすこと」だとも言っています。言いたいことはよく分かるのですがあまりにも机上の空論で、とりわけBtoB分野で販売をなくして勝手に売れる仕組みなどとうてい無理な話です。それにもかかわらず各社(特にグローバル企業と呼ばれる有力企業)はこぞって新しいマーケティング理論を導入し、その理論に翻弄された結果、大切なものを失ってしまったのだと考えています。

その大切なものとは、ドラッカーが無くそうとしていた「セリング」なのです。BtoB分野では組織体組織の購買形態を持ちますが、組織が自分の意思を持って販売するわけではなく、あくまでも組織の一員である組織人(社員)対相手企業の組織人との取引になります。ここでは、どんなにSNSなどの新しいネット上の仕組みがあろうと、社会構造が変化しようと、最も有力なのは相手企業(顧客)との信頼関係です。そして信頼関係は極論を言えばたった一人の営業担当の人となりによって強固なものになることもあります。つまり。セリングを徹底することにより、顧客との関係は良好になり、ひいてはそれが受注に大きく貢献するのです。

「失われた25年」などと言ってつい最近まではデフレの影響で各企業の業績は惨憺たるのでした。その理由は為替の変動など多くの絡み合った要因があるにせよ、1995年頃から普及しだしたネット依存の傾向も無視できません。

一見、ネットの普及は企業にとって生産活動や販売活動の合理化に寄与していると思われがちですが、それは機械的・無機的な分野に於いてのみと理解して良いでしょう。顧客とのコミュニケーションはけっしてメールなど文字情報だけで完結できるものではありません。上述のようにフェイス・ツー・フェイスで相手の顔つきを見ながらコミュニケーションを行い、その結果お互いの信頼関係が構築できなければ継続的なお付き合いはもちろん、まして受注に結びつかせる営業活動など不可能です。

この「失われた25年」に弱体化した企業の多くは、米国式のマーケティング理論に翻弄され、基本的なセリングを蔑ろにした結果だとも言えます。「マーケティングがセリングを劣化させた」のです。

いくらマーケティングに一所懸命になっても、顧客との接点に存在している営業担当がセリングに力点を置かなければ絶対に商品は売れません。その意味では、まずセリングを強化するためにマーケティング活動をサポート役として機能させることが重要です。差し出がましいようですが、ドラッカーの理論とはまったく逆なのです。

もっと極論すれば「セリングが強化されればマーケティングは不要になる」とも言えます。なぜなら、現在のマーケティングのベースになるのはいわゆるマーケティングリサーチですが、その多くはアンケート方式によるものです。とりわけ最近ではWEB上でラジオボタンをプチプチ押すような安易なリサーチが横行していますが、質問数が多くなれば疲れていいかげんにボタンを押してしまう。また質問が難解であっても適当にボタンを押す傾向があります。そんなアンケートから得られたデータに何の価値があるのか理解できません。

話は変わりますが、各企業ともマーケティング部門は予想外に大きな力を持っています。単に営業をマーケティングと置き換えている企業も少なくないですが、マーケティング部門が独立している場合、ほとんどは営業部門や宣伝部門の上位に位置しています。

「マーケティングの連中は理屈ばかり言って、俺たち現場の状況はまったく理解してくれない。で、売れなかったら俺たちの責任になるんだからやってられないよ」と言った愚痴とも批判ともとれる言葉を時折耳にすることがあります。

御社でマーケティング部門を新設されることについては、いわゆる世の中の趨勢から否定するつもりはありません。しかしあまりマーケティングを過信しない方が良いと考えます。そしてもし新設されるなら、既存の宣伝部か営業部の下部にサポートチームとしておかれる方が良いと思います。なぜなら基本的には顧客に最も近いところに存在する営業部隊が中心となって、顧客の抱えている課題やニーズを発掘し、それを企業全体でソリューションを開発し、顧客に提供することが本来のマーケティングですから。

また御社はメーカーとお見受けしますが、メーカーの最も重視すべきポイントはやはり「良い製品」を作ることです。良い製品を作ったからと言って売れるわけではない、そんな考えは一昔前の古くさい考えだ、と言われていますが、それはとりもなおさずマーケティングを正当化するために言っているだけなのです。良い製品を作ってこそ良いメーカーであるのは当たり前で、それで時宜を得たプロモーションを企画するのが宣伝部であり、営業担当個人のスキルとの熱意で売り込むのがセリングなのです。その意味からすると、マーケティング部門を製品開発部に設置するのも興味深いと思います。

くどいようですが顧客との接点にある営業部隊からのマーケットの課題やニーズを開発部門のマーケティングチームに伝え、よりよい製品を作る手立てとなれば最強の企業運営が可能になると思います。 

リクルート広告の効果と、採用時の要件に関してのご相談

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑫
 

《質問》

そろそろリクルートにも本腰を入れなければならない時期がやってきました。いつもこの時期になると大企業は大きな広告や立派な入社案内を作っていますが、弊社は売上高が300億円に満たない中堅企業で、リクルートにはほとんどお金がかけられません。このような状況の中で優秀な人材を確保するにはどのような方法があるのでしょうか。ご教示ください。ちなみに広告宣伝費は1.2億円程度でそのほとんどはカタログと展示会に費やしています。(電子部品製造メーカー)

 

《回答》

ご指摘のようにこの時期になると各社ともリクルートを意識して派手な広告が目立ちはじめています。一見「ブランディング」を意識しているようですが、正直なところ歯が浮いたような綺麗事の羅列には私自身も辟易しています。

ところでこのリクルート広告。おそらくバブル時に全盛を極め、その流れが不況になった現在でも継続している不思議な広告です。各社とも有能な人材を確保したいのは十分理解できますが、だからといってあまりにもアピールの強すぎる広告はいかがなものか、と思っています。

じつは私は企業が行うリクルート広告には否定的な立場をとっています。その理由はリクルート広告だけが他の広告とは異質なコミュニケーションプロセスを持っているからです。

本来広告は売り手から買い手に対して行うものです。その効果測定には多様な手法がありますが、要はどれだけの引き合いがあったか、そしてその結果どれだけの受注が得られたか、につきると思っています。ブランディング広告では単に商品の受注額以外に企業認知度やイメージの変化が効果測定の要因に入ってきます。

ところがリクルート広告はどうでしょう。唯一リクルート広告だけが買い手が売り手に対して広告しているのです。こんな不思議な光景が現在もまかり通っていることに強い違和感を覚えます。いやちょっと待て、リクルート広告は将来就職すべき企業を買うための情報源だから、やはり企業イメージを売る企業から買い手である学生に対して広告しているのではないか、と言う意見も当然予想できます。

しかし、仮に広告に感動して入社した学生が、その後自由に企業をハンドリングできるでしょうか。希望していない人事異動や個人の特性に合わない仕事を強いられるなど、社員の企業における人生は企業によって左右されてしまいます。言いかえれば買い手である企業が借った人材をどのように使うかは企業側の論理によって決定されてしまうのです。このことから見ても、学生は「買い手」ではなくあくまでも「売り手」なのです。会えて誤解を恐れずにいうならば、企業は「学生」という商品を買うために広告していると言うことになります。

リクルート広告によく似たスタイルを持つものにIR広告があります。これは投資家が企業(の株式)を買うわけですから、まさに売り手の企業から買い手の投資家に広告しているのです。そして買った企業が気に入らなければ株式を自由に売却することができます。しかし就職した学生がそんなに簡単に企業に見切りを付けることはできません。

バブル以降延々とこの不可解なメディアが氾濫している背景には、まず大学の怠慢が上げられます。今でこそ各大学においても広報の必要性を重視しだしましたが、まだまだ大学側からのリクルート広告を目にすることはほとんどありません。時折目にする大学の広告も、単に大学紹介に止まっており、とても有能な人材を「企業に売り込もう」という意識は見られません。

ここで重要なのは拙著「ASICAれ!」で述べているASICAモデルの課題探索がトリガーになるべきなのです。仮に企業側がリクルート広告を行うとするなら、現在のような綺麗事にまみれた広告ではなく、現在そして将来の企業発展に不可欠な課題を学生に提示するような広告にすべきです。たとえば「今我々はこんなことに困っている。そのためにこんな能力を持つ学生を望む」と。そして大学側は、それぞれの大学と学部の特色を述べて、「ここにはこんな有能な人材がいて、こんな課題解決に貢献できる」というような広告を打つべきなのです。本来なら売り手である学生個人の広告がもっとも興味あるところですが、資金の問題からそれは不可能でしょう。だからこそ大学が学生に成り代わって、企業の課題解決にふさわしい学生を紹介するのです。

本来、リクルートは広告をまったく必要としない分野だと思っています。私の学生時代はそんな広告は目にしませんでした。ではどうやって就職したのか。先輩からの一本釣りです。当時は学生と社会人となった先輩との交流が盛んでした。そして学生は知らず知らずのうちに「あの先輩と一緒に仕事がしたい」と思うようになってきます。おそらくその過程で先輩は有能な学生に目を付け「俺のところに来ないか」というわけでめでたく就職となるわけです。この仕組みは現在でも極めて有効だと思います。

今でもインターンシップなどの制度がありますが、それをもっと有効に機能させるべきでしょう。そしてなにより企業と大学の垣根を取り払ってもっと柔軟なコミュニティを作るべきです。コミュニティの中心にいるのは言うまでもなく先輩です。余程の企業でない限り多くの優秀な社員がいるはずです。その社員と出身大学の学部との間で定期的な交流をもつコミュニティを形成するということです。1年間程度学生を見ていれば、自社の課題解決にふさわしい学生がいるかどうかは判断できるはずです。そして一本釣り。これがもっとも効率的なリクルートではないでしょうか。

現在はスマホやWEBから多くの学生が採用試験に応募してきます。そしてその面接を行うのはほとんどの場合人事部です。人事部が自社の課題を充分把握しておればいいですが、単にはきはきしているとか、礼儀正しいとか、知識が豊富だとか、いわゆるリクルートマニュアルに書かれている項目で振り落とす仕組みはけっして企業に利益を生み出させるものではないと思います。私たち、とりわけBtoB企業では商品の購買にはもっと慎重になっているはずです。この慎重さを先輩社員に託すのです。

御社の広告宣伝費は、大変失礼ですがとても立派なリクルート広告を行う域に果たしていないと思いますし、仮にそんな広告を行ったとしても御社の将来に貢献する人材が見つかるとも限りません。綺麗事にまみれた広告に憧れて入社したとしても、定着率は低下する一方で、ひいては技術や企業哲学の伝承に支障を来してしまします。

リクルート専用サイトは価格も比較的安価ですし、ここへの登録と御社のWEBサイトでの採用ページをしっかり作り込むことだけで充分です。後は先輩社員に頑張ってもらいましょう。

広告宣伝予算のとりかた

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑪
 

《質問》

ある機械メーカーで広告宣伝業務を担当しています。担当業務に就いてすでに5年を経過しますが、毎年思うような広告宣伝予算が得られず日常業務が十分にできない状況です。お恥ずかしい話しですが年間の売上げは60億円に満たず、従業員は300名程度の中小企業です。このような中小企業で妥当な広告宣伝予算はいくらくらいなものでしょうか。またより多くの広告宣伝費を獲得するにはどのように会社を説得すればいいかご教授いただければ幸いです。(機械部品メーカー・広告宣伝部)

 

《回答》

広告宣伝費については昨今各社とも削減傾向にあり、予算獲得のためにご苦労されている様子は十分理解できます。

年間売上げが60億円で従業員が300人という規模は、中小企業と言うより最も活力のでやすい将来性に期待できる企業だと感じています。むしろ大企業になるとさまざまなややこしい企業システムが煩わしく、広告宣伝予算のみならず従業員のモチベーションも低下する傾向があります。

じつは私が前職に入社した頃が、現在の御社とほぼ同じ会社規模でした。現在では従業員は数千人に膨れあがっていますが、従業員一人一人のモチベーションや仕事量、仕事のスピードは入社当時の方が高かったように記憶しています。御社のような企業規模で広告宣伝を任されて、企業成長とともに生きていけるのは羨ましい限りです。

前置きはこれくらいにして本題に戻ります。広告宣伝費は販売費と一般管理費に分割できます。販売費は製品広告が主体になりますし一般管理費は企業広告(ブランディング広告)や企業カタログ(会社案内)、展示会の一部などが相当します。展示会の一部と記したのは、展示会の中で製品展示などの部分は事業部管轄で対応する企業が多く、その場合は広告宣伝費と言うよりも販売促進費として計上する企業が多いのが現状です。

BtoB企業で欠かせない製品カタログは、販売費として広告宣伝予算に含めているケースも見受けられますが、どちらかと言えば、販売促進費や印刷費として広告宣伝予算から切り離している企業が多く存在します。

つまり、まず広告宣伝活動を行うにあたって、何が広告宣伝費に該当するのか、何が販売促進費や印刷費に該当するのかを明確に分類しておく必要があると思います。それには各事業部や営業部門と協議することが重要です。

ここではまず御社の広告宣伝費が、企業広告、製品広告、WEBサイトのコンテンツ制作、企業カタログ、製品カタログ、展示会すべてを網羅することを前提にお話しします。つまり事業部管轄である販売促進費の一部(メディアのみに限定)も含めた形になります。

広告宣伝費の算出根拠としてさまざまな手法がありますが、現在最も多く用いられているのが売上高に対する比率です(売上高広告宣伝費率)。じつはここで言う売上高は本来売上げ予算、つまり当該年度の売上げ予算で計算するのが妥当なのですが、多くの企業は前年度の売上高を基準にしています。これは後述しますが、広告宣伝業務がまだ「投資」という概念ではなく「経費」という理解で成り立っているからでしょう。

ではどのくらいの比率が適切なのか、が問題になるわけですが、結論を先に申し上げると、御社の規模であれば最低限売上高の1.2%は必要と思います。つまり前年度の売上高が60億円だとすれば、広告宣伝費は7,200万円と言うことになります。現在の広告宣伝費がどのくらいなのか記述されておりませんが、もし仮にこの数字よりも低ければもっと増加させる必要がありますし、高ければメディアの選択(カバー率の高い有効なメディアに絞る)や業務プロセス(外注コストを低減させる)を見直すことも必要になってくるかも知れません。

大規模なBtoB企業の多くは売上高広告宣伝比率は0.7%から0.9%程度ですが、御社の場合はまだ発展途上にありますから大企業よりも高い比率が好ましいと考えます。

その理由は前述したように本来広告宣伝予算は「投資」に該当するものだからです。とりわけBtoB企業の場合、所謂消費者の衝動買いはほとんど期待できず、製品の認知から購買まで数ヶ月から23年かかる場合がほとんどです。言いかえれば数ヶ月から23年後の果実を得るためにあらかじめコスト負担を行うと言うことで、まさにこれは「投資」にあたります。その証拠に私が現役のころ広告宣伝に投下したコストの影響は23年後に現れています。

昨今、不景気だからといって広告宣伝費を削減する企業が増加していますが、そのしっぺ返しは数年後に必ずやってきます。むしろ景気回復が見込める時期は、たとえ現状が不景気で広告宣伝コストの捻出が困難であっても、積極的に投資すべきだと考えています。

もう一つ重要なことがあります。前述の「投資」概念と重複する部分がありますが、

現在、多くの企業は広告宣伝部門をコストセンター(経費を使う部門)と理解しています。だから予算折衝時には経理部門から経費削減を求められるのです。

そうではなく広告宣伝部門はむしろプロフィットセンター(利益を上げる部門)と認識すべきです。そうすると前述した「投資」の概念もスムーズに理解できます。簡単に言えば広告を行うことによって最終的に売上げ増加をもたらし結果的に利益を享受するプロセスを運営する部門だと言うことです。

前述したように私が経験した広告宣伝コストを低減させたり増加させた結果が数年後に現れると言うことは、広告宣伝部門がプロフィットセンターであることを立証しています。

さらに重要なのは目に見えない利益を獲得する重大な責務を有していることも忘れてはなりません。企業広告やブランディングなどによって徐々に企業の評価やレピュテーションが高まると言うことは、まさに企業価値が高くなると言うことですから通常利益以上の利益をもたらす可能性が充分あります。

このあたりを予算折衝時に御社の経理部門に説得することでより多くの予算獲得が可能になるかも知れません。また御社の企業規模でしたら、直接社長とこのことを議論されたらいかがでしょうか。

手前味噌で恐縮ですが、私が前職の広報室長になった時点では売上高広告宣伝比率は0.6%程度でした。その後社長に直接説得するとか適当な数字を並べて(経理部門は広告の専門ではありませんので、広告効果などの数字はこちらに優位性を持たせるように適当に作り上げればいいです)経理を説得した結果、10年かけて1.25%まで上げることができました。そのことだけが要因ではないにしろ、業績や企業規模は劇的に変化していきました。

くどいようですが、社長や経理部門の広告宣伝部門に対する認識を変えてもらうために、前述したような「広告宣伝活動は投資である」ことと「広告宣伝部門はプロフィットセンターである」ことを粘り強く説得していくことによって、きっと希望される広告宣伝予算が獲得できると思います。頑張ってください。

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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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