河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

インターナルブランディングの必要性と効果について

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑰

《質問》

最近インターナルブランディングが注目され、我が社でも導入の気運が高まっています。そこでお尋ねしたいのですが、インターナルブランディングの効果と導入手法について、具体的な事例などがありましたらご教示いただきたいと思います。現在のところ我が社では、外部のコンサルタント(代理店?)に依頼する方向で進めています。(通信メーカー)

《回答》

確かにここ数年インターナルブランディングが注目されていますね。この考えは1990年代に米国企業でなされた活動が参考になっています。

結論から申し上げますと、私はインターナルブランディングにはまったく効果もなくその必要性もないと思っています。まさにお金の無駄遣いです。

ここで確認しておきたいのですが、まずブランドとはある対象(意識を持つ個人がほとんど)が被対象(個人や企業、団体、商品、サービスなど)に対して抱く心の変容を指します。つまりブランド形成には必ず被対象とそれを評価する対象者が存在することになりますし、ブランディングはそれらの関係性を構築するために行うものと考えられます。

たとえばブランディング広告などは、被対象である企業や商品に対して対象者が信頼性を持つ、好ましい感情を持つ、親しみを持つなどの心理的な変容を意図として行われます。その意味では外部に対する所謂エクスターナルブランディングは企業価値の増大化に欠かせない活動とも言えます。

ではインターナルブランディングの構図を考えてみたいと思います。一般的にはインターナルブランディングは、当該企業の企業理念やブランドを基盤にして、従業員一人一人が適切に行動し業務改革を行うための活動、あるいは従業員に自社ブランドの持つ意味や価値を徹底して理解させ、業務に活かすことを目的とする、とされています。

こうしてみると一見「なるほどインターナルブランディングは社内活性化と企業価値の向上に大きく役立つ」と思いがちですが、大きな落とし穴がここにあることにあまり気づかれていません。

それは前述のように、ブランドの価値は当該企業や従業員が決めることではなく、あくまでも対象者の心に宿るものです。それを「我が社のブランドにはこんな価値があるから、従業員全員がそれを徹底してその価値にふさわしい行動をすべきである」というのは本末転倒以外の何物でもありません。

さらに問題なのは、多くの企業が行っている(あるいは行おうとしている)インターナルブランディングに対する手法にブランドブックの作成や社員研修、グループ活動などが上げられることです。

まずはブランドブック。いわば教典のようなこのツールは、「我が社はこんなブランドや理念を持っている。みなさんの日常業務にここ考えを浸透させ企業発展とさらなるブランド価値向上に役立てましょう」と半ばトップダウンで行われる活動の基盤になるものです。

 ここでは従業員の目は教典やその教義に集中し、本来ブランド形成に大きな力を持つ社会やマーケット、さらには他の組織に属する人々の存在は忘れ去られています。拙著「ASICAれ!」で述べている、企業として最悪の低気圧型ホスピタリティ(常に社会や顧客ではなく上司や社長など企業の上層部にばかり目が行く企業のスタイル)の様式がここに現れています。

 くどいようですが、ブランドを作り上げるのは社会に属する個人であることから考えると、この手法はまったく逆の効果をもたらすとしか考えられません。さらに従業員と言えどもそれぞれに個性を持つ一人の人間です。それをブランドブックという聞こえはいいですが、いわば教典まがいのツールによって個性を埋没させるのはけっして好ましいことではありません。

次に社員研修。最近はどの企業でも頻繁に社員研修が行われていますが、ここでもその弊害にあまり気づかれていないようです。研修そのものを否定はしませんが、問題なのは多くの社員研修が「階層別研修」であることです。つまり、課長や部長などそれぞれの階層ごとに「課長はこうあるべきだ。部下の指導はこうすべきだ」と強引に教え込まれます。
 
ここでも個々人が持つ個性は否定され、当該企業の管理職としてふさわしい組織人に育成されるのです。言うまでもなくどんな管理職であってもそれぞれに個性があってしかるべきで、その個性に憧れて部下は成長していくものです。同じような考えや無個性の管理職だらけでは企業そのものの個性も消滅し、ひいてはブランド形成にはまったく役立たないと考えられます。

ブランド形成の対象が社会における個人や顧客であることを考えれば、まず重要なのは企業運営の根幹となる商品やサービスの高付加価値を目指すことです。さらに、顧客との接点である営業担当の商談能力もブランド形成には重要です。その意味ではもし研修を行うなら、優れた商品開発者や営業担当の育成を目的として、階層別ではなく業務別研修に徹するべきでしょう。しかしここでも個々人の個性は重視されるべきですし、それに則った研修にする必要があります。

インターナルブランディングを目指したグループ活動などまったく無意味です。そんな時間があるなら、もっと商品開発に集中したり顧客訪問によって顧客と会話をすることの方がはるかに意味があります。

ところで、ここでは具体的な企業名はあげませんが、一昔前は飛ぶ鳥を落とす勢いがあり次々と新商品を発表し、マーケットや個人から支持を得ていた多くの企業が、現在ではみな同じ無個性の企業になってしまっている現状が散見できます。これにはさまざまな理由があるのですが、その大きな要因に社員の無個性化があり、それを誘導するのが上記の階層別研修であったり、インターナルブランディングとは行かないまでも、「みんなで同じ方向を目指して頑張ろう」式のややこしい活動だったりするのです。

ブランド形成が社会に属する個人の心の変容に要因があることから、まず重要なのはその接点である個性的で有益な商品の開発と営業担当の商談能力の向上がブランディングに大きく影響します。つまりエクスターナルブランディングです。それをさしおいてインターナルブランディングに熱を入れるのは、おそらくエクスターナルブランディングがうまく行っていないための対症療法とも考えられます。しかしこの対症療法が、ますます病状を悪化させるのは上述のとおりです。

極論を言えば社内規範を逸脱するくらいの個性ある人材を輩出し、それによってどの企業にもない独自の商品を世に送り出すこと。これによってその企業のブランド価値は大きく飛躍します。

とはいうもののどうしてもインナーの活性化を目指したいのでしたら、まず「インターナルマーケティング」にチャレンジすることです。これが成功すれば、必然的によい意味でのインターナルブランディングが自然に形成できます。

 

展示会におけるトラッキングシステムとは

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑯

《質問》

以前貴協会とは別の講演で、河内氏の展示会に関するセミナーを拝聴しました。その中で、展示会で最も重要なのは見込み客の集客と展示会終了後のトラッキングシステムだと述べておられました。その内容を社内で紹介したところ、トラッキングシステムについて非常に興味を持たれたのですが、私自身まだ十分理解していないところも多く、納得のいく説明をすることができません。そこで恐縮ですがもう一度このトラッキングシステムについて詳しくご教授頂けないでしょうか。営業部門が言うには、展示会のトラッキングはすでにネットを利用して請け負っているところもあり、そのような業者に依頼するのが手っ取り早いのでは、と言う考えが多いのですが、私は少し違った印象を持っています。(機械メーカー)

《回答》

私のどの講演をお聞きになったのか分かりませんが、大変有り難いお言葉を頂戴し恐縮です。

まず結論を申し上げますと、御社の営業部門が言われているネットを利用したトラッキングはあまり効果がありません。その理由は後ほど述べさせていただきます。

展示会は、企業におけるさまざまなメディア展開で得られた「見込み客」を「顧客」に変換する唯一の装置であると考えています。その理由はとりわけBtoB業界では広告やWEBを見て衝動的に購買に結びつくことは皆無で、言いかえれば広告やWEB (インターネット広告含む)ではけっして受注に結びつかないと言うことです。それらから得た見込み客を最終のクロージング段階である展示会に呼び込み、ここで商談し受注する役目が展示会の大きな責務でもあります。

そこでトラッキングについてですが、BtoB業界ではいくら展示会でクロージングしようとしてもそう簡単にその場で受注することはなかなか難しいものです。一個1000円くらいの製品ならともかく一台数百万円から数千万円もする商品では必ず社内稟議が必要になります。その期間が場合によると半年から二年近くかかることも珍しくありません。その見込み客企業での社内稟議や導入効果の検証プロセスを長期間にわたって追いかけていくのがトラッキングなのです。

通常、展示会で商談した場合、二三回の顧客訪問をこなした後は、相手からの返事待ちと言うことが少なくありません。しかしその間でも相手企業内では導入効果についての議論やコスト効率などさまざまな検証が加えられているはずです。そのプロセスには展示会に集客した別の組織人(社員)がかかわっていることがほとんどです(購買部門や経理部門など)。その人たちにこれでもか、と言わんばかりに熱心にプロモーションしていくことが受注に結びつける重要なポイントになります。

こうしてみれば、展示会終了後のトラッキングはまさに営業活動そのものであると言えます。ただ通常営業と異なるのは、その窓口が多岐にわたることです。これは少々面倒なことですが、担当窓口の方に社内でのキーマンや決裁者を紹介して頂くことで可能になります。

ここまで述べればほぼご理解頂けると思うのですが、トラッキングシステムは通常営業の高度な部類と言え、その商談内容や相手企業の実情などの情報はいわゆる営業日報として機能させることができます。

具体的にではどのようにすればいいのか、を説明します。

まず展示会で商談した企業ごとに「トラッキングカタログ」を作ります。これを印刷物ではなく社内のネット上に立ち上げるのです。ここでは当該企業の概要や導入予測時期、概算予算などに加えて決裁者の所属や実名、企業風土などあらゆる要件を記述しておきます。言わばこれから受注する企業の事細かな状況が一覧できる情報シートです。そしてこのトラッキングカタログは社内の営業担当誰もが閲覧できるような仕組みになっています。

トラッキングカタログを社内ネットワークに立ち上げた瞬間、誰がトラッキング営業を担当するのかが問題になりますが、これは企業それぞれに自薦、他薦。あるいは上長の指名など適宜決めればいいと思います。そしてこのトラッキングカタログの次のページにはトラッキング営業用のシートがあります。ここではASICAモデルのすべての段階に沿って、たとえばアサインメント段階では、顧客要求事項や、現在のニーズと将来の課題、課題が当該企業に与える影響あるいは自社製品や自社技術で対応可能かどうかなどについて日報代わりに記述していくことになります。ここで重要なのはトラッキング営業担当が決まっていても、その日報は社内の営業部門で情報共有していますから、「この顧客なら私がよく知っている。うるさい○○さんという人が購買部門にいるからまずそこを攻めた方がいい」などといった貴重な意見が期待できます。

このようにしてトラッキング営業の日報は従来の営業日報に取って代わるのです。

そこで問題になるのが、展示会での引き合いだけを追いかけていたのでは期首予算が達成できないのでは、と言う課題が出てきます。何しろ大きな展示会はおそらく一年に数回程度でしょうから。それならば、毎月個展を行えばいいのです。つまりくどいようですが、他のメディアでせっかく得られた見込み客をクロージングするのが展示会の役割ですから、展示会は多ければ多いほど受注は拡大します。このようにトラッキングカタログを軸にしてにトラッキング営業を行うことはほとんど毎日見込み客とコンタクトし現状を把握する必要があり、一見大変な手間がかかるように思えます。

そこで各社が利用するのがインターネットを利用したトラッキングシステムなのです。しかしこのシステムの大きな問題は、あくまでもネット上で見込み客の動向を主に自社のWEBサイトの閲覧状況やメールでのやりとりに終始することです。営業の基本は「フェイス・ツー・フェイス」です。相手の顔が見えない営業活動は基本的にはBtoB分野ではあり得ません。したがってメール営業は対面営業とくらべて格段にその成功率は低下します。さらに大きな問題は、見込み客の動向を自社のWEBサイト閲覧に依存していることです。たとえばログ解析によってあるページに長時間滞留していたとなれば、その見込み客は滞留していたページの製品に興味があるのだ、と短絡的に捉えてしまう危険性があります。たまたまあるページを閲覧しているところで会議に参加したために30分間も閲覧していたなどと誤解してしまうこともあります。

このようにしてネットを利用したトラッキングシステムは主にログ解析による自社サイトでの滞留時間などをもとに見込み客のランク付けを行いますが、おそらくそれを繰り返すこと(つまりランキング精度を上げる)によって、最終的にはほとんどの見込み客のランクは最低ランクに収斂し、結果的に思うような成果は得られないと考えています。

くどいようですが、営業活動の基本は顧客と顔を合わせて行わなければなりません。それによって他決しそうな状況であっても、営業担当の人柄や提示資料などによって覆すことが可能になるのです。

文面では少々理解しにくいかも知れませんが、一言で言えば、展示会終了後にトラッキングカタログを作り、それを営業部門全員で共有しトラッキング営業の推移は日報として構築していくと言うことになります。     

代理店の使い方/専門家がいない宣伝部(中小企業)

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑮

《質問》

弊社は年間売上高100億円に満たない中小企業ですが、宣伝部員は私を含めて2名です。主な業務は製品カタログ制作ですが、現在は印刷会社にお願いしています。マスメディアの広告は業界紙における製品広告が主体ですが、広告原稿はカタログ同様印刷会社にお願いしています。展示会は通常2小間程度で、営業部隊が取り仕切っており、宣伝部員は装飾の手配が主たる業務となっています。今後業容の拡大に伴ってマス広告や展示会の拡張などが予測され、それに伴って広告代理店の使用を考えているのですが、広告代理店とお付き合いするにあたって必要な事柄や対処の仕方などについてご教示いただければ、と思います。(樹脂部品メーカー・宣伝担当)

《回答》

代理店を使うにあたってまず基本的なスタンスを明確にしなければなりません。それには2つあります。

まず、宣伝業務を通常の仕事と考えてとりあえずうまくこなしていくやり方です。要は、宣伝業務をつつがなく行える体制を作ると言うことですが、他の業務とほとんど変わりがない日常業務となります。

もう一つは、宣伝業務を企業と社会や顧客とのコミュニケーションの重要な役割と認識し、さらにとくにクリエイティブに達成感や喜びをもたらす体制づくりです。

本来宣伝広告業務の醍醐味は後者にあるのですが、現在ほとんどの企業が理屈はともかく前者の体制を組んでいます。その要因として人事ローテーションがあります。宣伝部門に配属されて23年すると他部署に異動ともなれば、クリエイティブのおもしろさや達成感を味わっている暇もありません。したがってとりあえず指示された仕事をそつなくこなすという意味で社外の広告代理店などに丸投げしているケースが多いと思われます。

御社若しくはあなたがどの方向を取るかによって、代理店との接し方も変わってきます。前者の場合ですととくに難しくはありません。適当にオリエンテーションを行えばそこそこの品質のものは出来上がってきます。ただ、代理店はあくまでも代理ですのでクリエイティブに関する仕事は外注されますし、当然営業経費もかかってきます。したがってコストはかなり高めになることは覚悟が必要です。ただ、大手の広告代理店の場合は社内でマーケットリサーチの研究部隊を持っていますので、それらの資料やデータを入手することが可能です。これは社内稟議の際に大いに役立つものです。もちろんそのデータ入手に於いてもそれなりのコストは必要となります。さらに最も問題なのはこのケースは仕事は簡単ですが、社内にノウハウの蓄積が期待できないことです。

御社の現状を考えると、私はむしろ後者を選んだ方がいいと思います。

あなたが広告宣伝業務にどれほど魅力を感じておられるのか不明ですが、社会や顧客に対して企業の最前線でメッセージしていくこの業務は非常に魅力的です。中でもクリエイティブはいわば競合企業やその他大勢の企業との戦争とも言えますし、それに打ち勝ちクリエイティブひとつでオーディエンスの心を動かせるのは広告宣伝業務の最大の魅力であり、使命でもあるのです。

そこでこの場合、時として代理店の存在が邪魔になることがあります。仮に代理店に発注する場合、必ず営業担当と打ち合わせすることになります。もちろんオリエンテーションなどではデザイナーやコピーライターなどのクリエイターが参加する場合もありますが、酷い場合はオリエンテーションですら営業担当しか参加しないケースも見受けられます。オリエンテーションにクリエイターが参加した場合でも、その後のプレゼンでは営業担当との交渉となります。そうすると、代理店内部でどういうことが起こるかといいますと、いわゆる伝言ゲームに似た様相を呈してきます。

とりわけプレゼンの場合、当方の要求を一応営業担当に伝えても、その営業担当がどれほど明確に当方の要求や改善点をクリエイターに伝えているのか非常に疑問に感じる場合が少なくありません。

その繰り返しで何度もプレゼンのやり直しという最悪のケースも生まれてきます。コストは時間に比例しますから、そうなれば当然トータルコストは大きくならざるを得ません。もし広告代理店を使う場合でも、営業担当は抜きにして直接クリエイターと協働したほうがコストも時間も少なくて済みます。

そこで最もコストを安価に、しかも優れた作品を作り上げる方法を提示します。

それは代理店を使わずに直接クリエイター(デザイナーやコピーライターまたはデザイン会社)と取引することです。少々面倒な部分はありますが、このスタイルで行けば自ずと広告や宣伝業務のおもしろさや使命感が身についてきます。

その理由として重要なのは「自社の製品やサービス、ブランドについては当該企業の従業員が最も良く認識している」ということです。本来なら製品や企業理念を熟知した従業員(つまりあなた方)が自ら広告作りを行えば最高なのですが、クリエイティブに関する専門知識がなければそう簡単に進めることもできません。つまり、代理店にしろ外部クリエイターにしろいわゆる外注する意味は、「表現面での専門技術」を頼りにすると言うことになります。そこでは前述した専門技術を持たない代理店営業担当はむしろ余計な存在になってしまうのです。

私は現役時代からクリエイティブに関しては直接デザイナーやコピーライターとともに仕事を行い、充実した結果を残せました。その最大の要因は、自社を最も熟知している私のビジョンや夢、社会に対する提言などをクリエイターが共有してくれて、作品として定着してくれた結果だと考えています。

この場合、けっして一流のクリエイターとチームを組む必要はありません。むしろ若手のこれから伸びようとするクリエイターの方が、ともに成長していこうとする姿勢も見られ、試行錯誤しながらも作品を作る喜びを共有できるものです。

一方製品カタログに関してはもう一つ興味深い手法があります。前述のように製品に関しては誰よりも自社の開発担当や営業担当が熟知しているはずです。それならば彼らをカタログづくりに参加させればいいのです。何も代理店を使う必要もありません。製品カタログは営業担当のツールであり、できるだけ営業担当が使いやすい編集が望まれます。その意味では、たとえば御社の最高の営業担当に模擬商談を行ってもらいます。客先の代理は宣伝担当でいいでしょう。時間は2時間程度徹底的に製品の売り込みを行ってもらい、その内容を録音します。その後、商談内容をカタログに再編集すれば最高に役立つ製品カタログが簡単に出来上がります。編集作業に専門的な知識がなければ、外部のデザイナーに直接依頼してもいいと思います。こうすることによっておそらく製品カタログの製作コストは3050%押さえられるはずです。

いずれにしても冒頭に記した様に、御社が宣伝業務をどのように捉えているかによって代理店の使い方は変わってきます。

 

インターネット広告の効果について

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑭

《質問》

私はある機械メーカーの宣伝担当ですが、最近コスト効率の観点から印刷メディアの広告をインターネット広告に切り替える動きがあります。私自身はまだまだ印刷メディアの広告にこだわりを持っているのですが、最近、インターネット広告が新聞広告を凌駕したなどのニュースを盾に、上長はインターネット広告を推し進めるつもりです。そこでお尋ねしたいのですが、インターネット広告にはどれほどの効果があるのでしょうか? またインターネット広告を行う際に気を付けなければならない点などご教示いただければ幸いです。(機械メーカー・宣伝担当)

《回答》

最近あちこちからご指摘のような話しを耳にします。まるでインターネット広告を早くやらねば時代に乗り遅れる、と言うような焦りすら感じることがあります。

これはあくまでも私個人の私見としてですが、ズバリ申し上げて、BtoB業界ではインターネット広告の効果はほとんどないと思っています。

その理由は、メディア論的な観点から見れば、確かにインターネット広告は広告取扱高(いわゆる広告料金)については最近新聞広告を追い抜いたとされています。しかしこれはあくまでも広告料金の総額です。昨今の経済状況から新聞広告は広告料金の低下が数年前から顕著になっています。一方でインターネット広告はその時代性や人気の高さから、広告料金は漸増しつつあります。これらのバイアスをキャンセルもしないで、単に広告料金の総額だけでメディアの優位性を論じるのはあまりにも早計だと思っています。

さらに問題なのは、BtoB業界で「インターネット広告に切り替えて受注が増加した」という話しが一向に聞こえてこないことです。私のメディア論から言えば、少なくともBtoB業界では広告で商品の受注が促進されることはありません。あくまでも見込み客の獲得がその効果として現れるだけです。そして少し論点がずれますが、それらの見込み客を受注に結びつけるのが、セールスであり、そのツールであるカタログ。そして最強のメディアが展示会なのです。

広告効果を論じる際に、このように各メディアの役割分担を明確にした上でそれぞれの効果を見ていかなければならないのです。またインターネット広告は言いかえればWEBサイトの広告効果と同一と見なすことができます。BtoB業界では広告ほどではありませんが依然としてWEBサイトでは商品は売れません。あくまでも見込み客の獲得が第一の目標になります。

一方で新聞広告の場合はどうでしょう。昔なら広告の右下や左下に小さな三角の問い合わせシールがあり、それを葉書に貼ってカタログ請求などをしたものです。つまりこれが見込み客からの引き合いと言うことです。ところが現在では広告に三角のシールなどどこにもありません。インターネット時代の今、広告の引き合いも最終的にはWEBサイトに到達するのです。このことからインターネット広告であっても新聞広告であっても見込み客からの引き合いはWEBでカウントされることになります。

cpmの視点から見ると制作原価やメディアコストが少ないインターネット広告に分がありそうです。しかしくどいようですが、いくらcpmが低くても受注に結びつかなければまったく意味はありません。

インターネット広告はおそらく原稿制作費も安価でしかも手短に制作できる(これは後述しますがモノによります)ため、ログを解析することによってあたかもコスト効率が良いような錯覚を覚えます。しかしインターネット広告の場合は、クリック一発で当該WEBにアクセスできます。この簡便さが問題なのです。とりあえず見てみようというインターネット広告がどれほど多いか……。そんなアクセスはなんの役にも立ちませんが、広告担当者はアクセスが増えたと喜ぶわけです。

BtoCの場合は、いわゆる「衝動買い」が期待できますから、ある程度インターネット広告の効果は否定できません。しかしBtoBの場合は、何らかの目的意識を持ってネットに向かい情報検索します。まさに真剣勝負です。そんなときにサイト画面の横あたりにチラチラ出てくるインターネット広告には見向きをする暇もありませんし、むしろ煩わしいくらいです。検索サイトの上位に表示されるリスティング広告(「PR」と表示されたり色分けされている)はヒット数に応じた価格設定で一見効率的なようですが、私の場合はそこに「PR」などと表示されている広告はあえてクリックしません。真剣に情報検索しているのに、「PR」表示のリストをクリックして目的とする情報にありつけたことはほとんどないからです。あらはあくまでも「広告」であって、情報検索中には煩わしい広告など不要なのです。

ところで上述したようにインターネット広告の制作費は安価にできると言いましたが、リスティング広告にしてもバナー広告にしてもそれ自体は確かに低価格で制作できます。しかし問題は、これらの広告からジャンプした後の自社サイトの企画にあります。酷い場合はインターネット広告をクリックすると当該企業のトップページにリンクされているケースがありますが、これはインターネット広告を大きく誤解しています。

もし仮にインターネット広告を行うのであれば、自社サイトにはそれに呼応した「プロモーションサイト」を構築すべきでしょう。つまり自社のビジネスサイトとは別にプロモーション用のサイトを作ることを意味しますが、これはたとえば新聞広告で得られた引き合いに対して営業担当がカタログ持参で営業活動を行うスタイルに代替できるものです。そうなると、余程の説得力と懇切丁寧な内容をUI(ユーザーインターフェイス)をもとに構築しなければなりません。これはそう安価にできるものではなく、場合によると数百万円以上かかってしまいます。要するに結局インターネット広告を有効に採用するとなれば、広告費以外に多額のプロモーションサイトの制作費が必要になってくるのです。

しかも問題はこれらのプロモーションサイトの制作コストもじつは上述したインターネット広告の広告取扱高に編入されている場合もあります。こうなるとますますインターネット広告全盛というイメージが出来上がってしまうのです。

最後にインターネット広告の今後の課題についてひとつ。たとえば少女が誘拐されたなどと言う悲劇的な事件の記事の横に、無神経で楽しそうなインターネット広告が表示される場合が多々あります。自動的に掲載ルーチンを設定されているのがその原因だと思いますが、その広告主のブランドイメージが大きく毀損されることに気づかなければなりません。そろそろ社会倫理の観点からこのような状況を見直す時期に来ていると思います。

以上、BtoB業界におかれては慎重にインターネット広告に取り組まれた方がいいと思いますし、常にその効果(アクセスした見込み客の優劣判定)を追い続けることが大切だと考えます。

 

マーケティング部門の新設についてのご意見

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑬

《質問》

我が社では今後の景気回復を前提に、より拡販をめざしてマーケティング部門の必要性が唱えられています。現在は宣伝部でコーポレート関連のメディア展開を行い、各事業部でそれぞれにカタログや展示会などの企画運営を行っています。新たにマーケティング部門を設置するとしたら、既存の部内の方が良いのか独立した部門の方が良いのかご意見頂戴できれば幸いです。(電子部品メーカー・宣伝部)

《回答》

最近ではフィリップ・コトラーによるマーケティング3.0が提唱されるなど、SNSに代表されるソーシャルメディアの普及によって新たなマーケティング理論が矢継ぎ早に紹介されています。それに伴って、各企業とも新しいマーケティングに乗り遅れまいとする焦りのようなものを感じています。おそらく御社でもそのような背景があってマーケティング部門の新設を検討されているのだと思います。

ところで、マーケティングの概念は約50年前に米国から我が国に導入され、その後さまざまなマーケティング理論が提唱されてきました。そしてよく考えてみるとこの50年間、ネットの普及や社会構造の変化、為替や景気の極端な変動に晒された各企業の業績はどうだったでしょうか。

確かに50年の間に企業は成長し、それなりの売上げをなし、一見成長してきたかに思えますが、一方では賃金の停滞や有力企業の衰退など、必ずしも全体を見つめると大きく様変わりしたとは思えません。むしろ気がかりなのは、衰退傾向にある有力企業ほど新しいマーケティング理論を導入し、全社体制でマーケティングに取り組んできたことです。これは何を意味しているのかよく考えなければなりません。

翻ってピーター・ドラッカーは「マーケティングは売れる仕組みを作ることであり、最終的には単純なセリング(販売)を無くすこと」だとも言っています。言いたいことはよく分かるのですがあまりにも机上の空論で、とりわけBtoB分野で販売をなくして勝手に売れる仕組みなどとうてい無理な話です。それにもかかわらず各社(特にグローバル企業と呼ばれる有力企業)はこぞって新しいマーケティング理論を導入し、その理論に翻弄された結果、大切なものを失ってしまったのだと考えています。

その大切なものとは、ドラッカーが無くそうとしていた「セリング」なのです。BtoB分野では組織体組織の購買形態を持ちますが、組織が自分の意思を持って販売するわけではなく、あくまでも組織の一員である組織人(社員)対相手企業の組織人との取引になります。ここでは、どんなにSNSなどの新しいネット上の仕組みがあろうと、社会構造が変化しようと、最も有力なのは相手企業(顧客)との信頼関係です。そして信頼関係は極論を言えばたった一人の営業担当の人となりによって強固なものになることもあります。つまり。セリングを徹底することにより、顧客との関係は良好になり、ひいてはそれが受注に大きく貢献するのです。

「失われた25年」などと言ってつい最近まではデフレの影響で各企業の業績は惨憺たるのでした。その理由は為替の変動など多くの絡み合った要因があるにせよ、1995年頃から普及しだしたネット依存の傾向も無視できません。

一見、ネットの普及は企業にとって生産活動や販売活動の合理化に寄与していると思われがちですが、それは機械的・無機的な分野に於いてのみと理解して良いでしょう。顧客とのコミュニケーションはけっしてメールなど文字情報だけで完結できるものではありません。上述のようにフェイス・ツー・フェイスで相手の顔つきを見ながらコミュニケーションを行い、その結果お互いの信頼関係が構築できなければ継続的なお付き合いはもちろん、まして受注に結びつかせる営業活動など不可能です。

この「失われた25年」に弱体化した企業の多くは、米国式のマーケティング理論に翻弄され、基本的なセリングを蔑ろにした結果だとも言えます。「マーケティングがセリングを劣化させた」のです。

いくらマーケティングに一所懸命になっても、顧客との接点に存在している営業担当がセリングに力点を置かなければ絶対に商品は売れません。その意味では、まずセリングを強化するためにマーケティング活動をサポート役として機能させることが重要です。差し出がましいようですが、ドラッカーの理論とはまったく逆なのです。

もっと極論すれば「セリングが強化されればマーケティングは不要になる」とも言えます。なぜなら、現在のマーケティングのベースになるのはいわゆるマーケティングリサーチですが、その多くはアンケート方式によるものです。とりわけ最近ではWEB上でラジオボタンをプチプチ押すような安易なリサーチが横行していますが、質問数が多くなれば疲れていいかげんにボタンを押してしまう。また質問が難解であっても適当にボタンを押す傾向があります。そんなアンケートから得られたデータに何の価値があるのか理解できません。

話は変わりますが、各企業ともマーケティング部門は予想外に大きな力を持っています。単に営業をマーケティングと置き換えている企業も少なくないですが、マーケティング部門が独立している場合、ほとんどは営業部門や宣伝部門の上位に位置しています。

「マーケティングの連中は理屈ばかり言って、俺たち現場の状況はまったく理解してくれない。で、売れなかったら俺たちの責任になるんだからやってられないよ」と言った愚痴とも批判ともとれる言葉を時折耳にすることがあります。

御社でマーケティング部門を新設されることについては、いわゆる世の中の趨勢から否定するつもりはありません。しかしあまりマーケティングを過信しない方が良いと考えます。そしてもし新設されるなら、既存の宣伝部か営業部の下部にサポートチームとしておかれる方が良いと思います。なぜなら基本的には顧客に最も近いところに存在する営業部隊が中心となって、顧客の抱えている課題やニーズを発掘し、それを企業全体でソリューションを開発し、顧客に提供することが本来のマーケティングですから。

また御社はメーカーとお見受けしますが、メーカーの最も重視すべきポイントはやはり「良い製品」を作ることです。良い製品を作ったからと言って売れるわけではない、そんな考えは一昔前の古くさい考えだ、と言われていますが、それはとりもなおさずマーケティングを正当化するために言っているだけなのです。良い製品を作ってこそ良いメーカーであるのは当たり前で、それで時宜を得たプロモーションを企画するのが宣伝部であり、営業担当個人のスキルとの熱意で売り込むのがセリングなのです。その意味からすると、マーケティング部門を製品開発部に設置するのも興味深いと思います。

くどいようですが顧客との接点にある営業部隊からのマーケットの課題やニーズを開発部門のマーケティングチームに伝え、よりよい製品を作る手立てとなれば最強の企業運営が可能になると思います。 

メッセージ

名前
メール
本文
★プロフィール
河内英司(かわちえいじ)
-------------------------------------------
京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
ASICA理論のすべてが分かる
記事検索
  • ライブドアブログ