河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

マーケティング業務におけるビッグデータの有効性についての質問

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉒

《質問》
 

弊社では今後マーケティングリサーチの一環としてビッグデータの取り扱いを検討しています。その理由は、データから得られる様々な要因を元に、新技術や新製品の開発に生かそうというものです。昨今ビッグデータが宝の山のように言われ、弊社としてもその貴重なデータをなんとか自社の企業価値向上のために生かせることができないか、と考えています。そこでビッグデータをマーケティングに応用する場合の注意点や課題などがありましたら教えていただきたく、ご相談する次第です(電気機器メーカー・マーケティング本部マーケティング担当)
 

《回答》
 

最近話題になっているビッグデータをマーケティングに応用する傾向は今後様々な企業で普及してくると思います。しかし結論を申し上げますと、まだ時期尚早です。
 

おそらく現状のデータでは、あまりにも巨大すぎて各企業がマーケティングに生かそうとしても、コストばかりかかって有意義な結果は見いだせないでしょう。その理由は、まずビッグデータと称されるものはすべて「過去」のデータであり、必ずしも将来の需要動向を表しているものではないと言うことです。
 

もし仮にビッグデータがマーケティングに有効性を持つなら、それを活用したすべての企業がヒット商品を連発するはずですが、資本主義社会はある意味で競争社会ですから全企業がヒット商品に恵まれて勝ち残ることは現実的ではありません。と言うより、ヒット商品はそんなに簡単に生まれるものではありません。まして過去のいわば客観的最大公約数としてしか見られないようなデータを元に、売れる商品を開発すること自体コスト効率が良いとは思えません。
 

そもそもビッグデータは、その規模の違いこそあれほとんどが前述したように過去の人間や企業の購買形態や嗜好、属性、行動様式をデータ化したものです。その意味では、統計分野や役所での過去データの把握や解析には役に立つかも知れません。しかし民間企業で未来をめざすマーケティング分野では、おそらくほとんど役に立たないか、そのデータの取り扱いに四苦八苦するでしょう。
 

そこで、「いやそんなことはない。データ解析はすべてコンピュータで行えば抜群の効率化が期待できる」と言った反論が予想されます。しかしここにデジタル社会の大きな落とし穴が潜んでいるのです。仮にデータ解析用のアルゴリズムを設計したとしても、それは単なるプログラムにしか過ぎません。つまり同じようなプログラムを使用すればどんな企業でも同じ結果が現れてくるのです。それが競争社会におけるマーケティングに本当に役立つでしょうか?
 

もっとも分かりやすい例は、ネットショップ大手が行っている「リコメンド機能」です。今や多くのネットショップが行っていますが、これは過去の購買データを元にして「あなたの好みはこの商品でしょう」のように、聞きもしないのにうるさく画面に表示されるものです。それが「あっ、そうだ。これが欲しかったんだ」というのであればいいですが、現状では過去に購入した商品と似たような商品しか表示されません。ある意味ではユーザーに購入意欲の限定を強いることにもなりますし、むしろセリングとしてはマイナスの要因となります。
 

これがビッグデータの限界です。つまり購入者の過去の嗜好は解析できても、未来の嗜好まではデータとして出せないのです。こんな状況でマーケティングに役立つはずがありません。
 

さらに問題だと思われるのが、ビッグデータは誰もがどんな企業もが入手できる汎用的なデータだと言うことです。だからこそできるだけ早くビッグテータを取り込んでマーケティングに役立てたい、と言う気持ちが逸るのは理解できます。しかしこれは多人数での会議や情報共有と非常に似た性格を持っています。言うまでもなく、ヒット商品は会議で多くの意見を参考にしたり情報共有したからと言って容易く生まれるものではありません。
 

アップルのスティーブ・ジョブズが述べたように「欲しいものはあなたの心の中にある」のです。言うなれば、欲しいものは本人も気がついていない心の深層分野に存在していると言うことです。データ解析でその深層心理を顕在化することは、現在の技術、おそらく将来的にも不可能に近いでしょう。それほど人間の心理は複雑で先が読めないものなのです。したがって人間不在のマーケティングやデータ解析はまったく意味がないと言えます。
 

一方BtoB分野は組織購買であるため、ある程度ビッグデータが活用できそうにも思われますが、ここでも大きな罠が潜んでいます。まず企業(組織)は個人の集合体です。そして最終的な購買決裁は個人(組織人)が行います。組織購買の場合は個人の嗜好や感情は無視すべきですから、前述のような人間の複雑性の影響は受けないように思われるでしょう。だからビッグデータは役に立つと短絡的に考えがちですが、重要なのは取引企業の将来の開発志向や設備投資の傾向を解析することです。しかしこのような重要事項をビッグデータから解析されるような危険な情報を企業自らが発信するはずはありません。したがってBtoB分野においてもビッグデータの活用によって、期待するほどの効果は得られないと考えます。
 

ビッグデータの導入やマーケティングに生かすことについて、否定的な意見ばかり述べていますが、データの使いようによっては極めて有効な場合も考えられます。
 

前述したようにビッグデータは過去のデータであり、いわば過去の社会状況を表しているとも言えます。
 

売れる新商品開発で最も大事なことは、消費者も気がついていない「課題」を解決する商品であることは言うまでもありません。ビッグデータを元にして、社会における将来の課題を探索することはある程度可能ですし、それを新商品(ソリューション)開発に生かすことも興味深いことです。しかしここで気をつけなければならないのは、データ解析をプログラムで行ってしまうことです。そうすれば確かに過去の課題は明確化されるでしょう。でも競合企業が同じようなことをすれば、結局同じ結果を持つことになります。
 

重要なのはここからです。自社独自の技術や他企業とのアライアンスによって課題に対するソリューションをどのように開発していくのか、が企業に課せられた大きな課題でもあるのです。しかもソリューション開発はもうプログラムでは不可能です。結局は企業に属する個々人の勘や未来を見通す能力がものを言うのですが、残念ながら最近それらの劣化が著しく、その能力開発は至難の業と言わざるをえません。
 

したがってビッグデータをマーケティングに活用するには、まず困難であるにせよデジタルに頼らない個々人のスキルアップが先決で、それとワンセットで導入しないことには膨大なデータに手をこまねくだけになってしまいます。
むしろマーケティング分野ではなく、ビッグデータの特性から施設管理やパレートの法則等とリンクさせた生産性の向上をめざす方が現実的だと考えます。     

宣伝業務の効率化についてのご相談

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉑

《質問》
 

私はある繊維メーカーの広告宣伝業務を10年間にわたって担当しています。部下は5人です。そこそこの広告宣伝費は毎年確保できているのですが、最近めっきり業務の効率が悪くなった気がしています。たとえば商品カタログを制作する期間が、従来は1カ月もかからなかったのが今では2カ月以上かかる場合も少なくありません。何が原因でこのような事態を起こしているのか見当もつきません。もっと効率よく宣伝業務を行うためにはどうすればいいのかご教授いただければ幸いです。(繊維メーカー・広告宣伝部)
 

《回答》
 

御社の状況は最近よく耳にする現象です。おそらく多くの企業が同じような問題に悩んでいると思います(気がついていない場合がほとんどですが)。
 

まず業務の効率化には仕事のスピードが大きく関係してきます。当然スピードはコストにも影響を与えます。御社の場合、カタログ制作の例を示されていますが、今まで1カ月でできていた仕事が2カ月かかっていると言うことは業務効率が1/2に低下しているのは確実で、非常に大きな問題です。その結果が仮に質的に優れたカタログが出来上がったとしてもそれは効率化とは関係のないことです。おそらくこれはあなたの部署だけでなく全社的に抱えている問題でしょう。そうなれば単に宣伝部門だけの問題ではなく企業経営に影響を与える大変厄介な課題とも言えます。
 

その仕事のスピードを阻害している原因はいくつか考えられますが、最も大きい要因はいわゆる「報連相(ほうれんそう)」と言った大時代の考え方にあります。上司はことあるごとに部下に報告を求める。同僚に対しては情報共有の大義名分の下で常に現状連絡を要求される。どんな細かい疑問でもすぐに誰かに相談する。こんな事態が生じていませんか? これらはすべてムダの要因になります。そしてさらに無視できないのは、報告や相談などは相手の時間(コスト)も拘束することになります。これはあまり意識されていません。その結果以前と比べて仕事の質が向上していますか? 
 

基礎技術を元に製品開発を行う場合を除けば、宣伝業務のようなクリエイティブ部門では時間をかければかけるほど実は質は低下していきます。なぜなら時間がかかると言うことはそれだけ多くの人の意見や指示をその作品に包含していると言うことになります。そうするとどうしても最大公約数的な作品になってしまい、可もなく不可もない平凡な質に落ち着いてしまいます。これでは広告にしろカタログにしろオーディエンスに感動を与えメディア特性を最大限発揮することは不可能になります。
 

「報連相」はほとんどの場合社内で行われます。しかし一方で広告やカタログ、展示会などのメディアはマーケットや社会に対してメッセージするものです。したがって極論を言えば社内の意見などどうでもよく、むしろ顧客や社会からの意見の方が重要なのです。これを勘違いして相変わらず社内で侃々諤々の議論が行われているのが各社の現状です。これでは仕事のスピードは落ちる一方で、マーケットや社会を全く無視していると言っても過言ではありません。
 

まずクリエイティブ部門においてはこの「報連相」を排除すべきです。そうすれば業務効率は格段に向上します。しかしいきなり「報連相」はダメ、と言っても今まで人の意見や指示に慣れきった部員には多少酷かも知れませんし、むしろそれによって自分で問題を抱え込んで一向に仕事が進まないという結果も予測できます。この場合はまず上司がきっちりと明言すべきです。「どうしても自分で解決できない問題だけを相談してくれ。細かな報告や連絡は一切不要。すべてはあなたたちを信じているから自由にやりなさい」と。これが言える上司の下では驚くほど業務効率はアップしますし、何よりも個々人のスキルも向上して結果的に何倍もの業務効率化が達成できます。
 

それからもう一つ業務効率に影響を与えている要因として外注との関係があります。御社が内制をされているのか外注を使っているのか文面では把握できませんが、仮に内制されている場合はまずほとんどの仕事を外注に依存することによって効率は上がります。外注や代理店の使い方については本シリーズの⑮で述べていますので参考にしてください。ここで重要なのは外注することで当然コストが発生します。これを嫌がって内制するケースが多いのですが、ここでよく考えてみてください。以前本シリーズ⑮では代理店に外注する場合とプロダクションに外注する場合を述べており、プロダクションへの直取引を推奨しています。まずあなたの部署の平均給与とプロダクションの給与とを比較してみてください。明らかにプロダクションの方が給与は低いはずです。と言うことは単位時間あたりのコストはプロダクションに外注する方が安くなるはずです。しかも相手はプロですので当然質も期待できます。
 

外注する場合にどうしても外注コストにばかり目が行きがちですが、重要なポイントがひとつあります。それは外注を行うことによって内制している時間が他の業務に振り分けることができると言うことです。つまり結果的には2件以上の仕事を同時進行できるということで、これは業務効率に大きな影響を与えます。私ごとで恐縮ですが、現役の頃ほぼすべての広告業務を内制していた時期がありました。ところがあるとき新製品開発のプロダクトマネジャーに任命されたため内制の時間がなくなりやむなく外注を使いだしました。はじめはぎくしゃくしたものですが、2年ほどするとなんと従来の6倍もの仕事をこなせるようになったのです。
 

ただ外注する場合に気をつけなければならないのは、丸投げは絶対に避けた方がいいと言うことです。つまりコンセプトメイキングや大凡の出来具合はあらかじめ自分でイメージしておきます。コピーもそのスケルトン(骨子)くらいはあらかじめ頭に描いておきます。そして外注からプレゼンされた場合、自分のイメージよりも優れておれば問答無用でOKするのです。外注で失敗するのは自分のイメージを持たずに丸投げをして、プレゼンされてはじめてその内容について細かなところをチェックすることです。自分のイメージではなくプレゼンをベースに評価するわけですから、とかくどうでもいいような部分に難癖をつけたがるものです(まあ、クライアントとしてのプライドが邪魔をしているとも言えますが)。こうなるとせっかく効率化をめざした外注も修正に時間がかかり、プロダクションのモチベーションも下がり、結果的に効率化どころか質も落ちてしまいます。多くの企業がこれで失敗しているのが現状です。
 

宣伝業務の効率化についてのご相談ですが、結論はまず仕事のスピードを上げるため無駄な会議や連絡・報告は排除することと、上手く外注(プロダクション)を使いこなして何倍もの仕事を同時進行させること。この二つができれば驚くほど効率は上がります。

 

業界展を活性化させる方法

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑳

《質問》

私は弊社が属するある工業会の展示会委員として日常業務の傍ら、活動しています。当工業会では毎年展示会を行うのですが、集客が思うように伸びません。その結果、会員企業からも不満が続出し、当該展示会の縮小を検討しているところです。多くの会員企業は我々が行う業界展よりもテーマが明確な商業展に軸足をおいているのも事実で、当展示会への出展率は、会員企業のうち40%程度となっています。このままでは当業界展は縮小の一途を辿るのもやむを得ない状況です。昔は当業界展も会員企業の出展率が80%を越えていた時期もあります。もう一度昔のような活性化された業界展に戻したいと考えていますが、何か良い方法がありましたらご教授をお願いします。(メーカー・匿名希望)

《回答》

御社の属されている工業会に限らず、どこの工業会も同じような悩みを抱えておられると思います。つまり業界展を開催しても集客が伸びず、その結果展示会の価値が低いと判断され、さらに出展会員企業が少なくなる現象。現在は出展率が40%と言うことですが、突然40%になったのではなく、おそらくここ十数年の間に徐々に低下してきたのだと考えられます。

それは多くの企業の勘違いが原因になっています。一般商業展はともかく業界展に限れば2000年以降から徐々に集客率が低下し始めているのですが、その要因がじつはインターネットの普及にあるのです。従来の展示会の来場目的は70%が「情報収集」でした。これがインターネットの普及に伴い各社のWEBサイトで事足りるために、わざわざ展示会に足を運ぶこともなくなったわけです。したがって上述の情報収集を目的とした70%の人たちが展示会に来なくなったのですが、これは当然と言えば当然のことです。つまり展示会の機能のうち、情報収集がWEBサイトに取って代わっただけの話しです。そしてこれらの情報収集を目的とする人たちはほとんどの場合受注には関与しません。言いかえれば展示会の本来の機能である「見込み客の刈り取りの場」に無用な人たちが排除できたとも言えます。

にもかかわらず相変わらず情報提供(PR)を目的とする企業が後を絶ちません。もはや展示会はPRの場ではなく「営業の場」に変化しているのです。多くの企業はマスメディアやWEBサイトから引き合いを得ているはずです。これらの引き合いが「見込み客」です。広告やWEBサイトで商品を受注させることはBtoB業界ではほとんど不可能です。その見込み客を刈り取る場として展示会の価値があるのです。したがって展示会には見込み客を呼び込むことが前提になりますが、このことは本誌の201312月号で詳しく述べていますので参考にしてください。

ここで一般商業展と業界展の違いを見てみたいと思います。一般商業展はいわゆる展示会プロモータや新聞社などが主催し、時宜を得たテーマが明確になっています。それは何を意味するのか? 一般展示会では旬のテーマを掲げないと集客できないからです。言うまでもなく展示会プロモータや新聞社は御社の顧客に相当する企業を持っているわけではなく、主に前回来場者への案内とマスメディアを使用した告知によって集客します。そのために興味を持たれるテーマが不可欠なのです。

一方業界展は業界によって異なりますが、展示会委員会制度などで事務局を構成し、彼らが企画することになります。しかしながら彼らにはマスメディアもなくせいぜい前回来場者への案内程度しか集客の手立てはありません。あとは出展企業からの案内に頼らざるを得ないのですが、それを行っても集客が見込めないと言うことは、おそらく出展企業も「顧客」や前回来場者(自社ブース)への案内に留まっているのでしょう。しかし会員企業には「見込み客」という強力なデータベースが存在しているはずです。理論的には顧客リストの数倍の見込み客があるはずですが、それがきちんとデータベース化されていないため、適切な案内ができていないのだと考えられます。

会員企業のほとんどが一般商業展に軸足をおいていると言うことですが、それは自ら集客しなくても主催者側が集客してくれることを期待しているからです。その結果仮に自社ブースへの集客が多くなったとしても、果たしてその来場者が受注に結びついたかどうか極めて疑問です。まあ、来場者数を展示会効果と判断するならそれでもいいのでしょうが、本来の展示会効果は受注額であることを忘れてはなりません。その意味では一般商業展でも業界展でもまず出展企業自らが見込み客を集客することが重要です。

ここで簡単な計算をしてみましょう。たとえば出展企業が100社だとして、各社が500人の見込み客を呼び込めばそれだけで来場者数は5万人になります。実際は集客可能な見込み客はその数倍程度有るはずですから、各社が真面目に見込み客を集めれば膨大な集客が得られることになります。このことを忘れられている業界団体が非常に多く存在しているのが事実で、大変もったいないと感じています。

なぜなら一般商業展と異なって業界展の最大の使命は「業界のプレゼンスを上げること」だからです。出展率が40%と言う御社の属されている業界は、大変失礼ながら業界のプレゼンスを向上させるよりも自社の利益を優先する企業が多いのでは、と推察できます。

業界展が盛況になり集客も満足できるようになれば、自然に業界全体が活性化し最終的には会員企業それぞれの利益に貢献するのです。業界展にはそんな価値が含まれていることを忘れてはなりませんし、一般商業展と大きく異なる優位性でもあります。

展示会はその規模にほぼ比例して集客数が変化します。極論を述べれば御社の属されている工業会の会員企業すべてが出展し、それぞれの企業が抱えている見込み客を呼び込めば単純計算でも2.5倍の集客になります。しかも見込み客を呼ぶわけですから受注の確度は遥かに高くなります。その結果業界全体が活性化してくるのです。

ここまで極端でないにしろ、まず会員企業に前述の内容を周知していただき、徐々に出展企業を増やして見込み客を呼び込むことを徹底すれば、自ずとその業界展の規模は徐々に大きくなってくるはずです。規模が大きくなればあとは自然に出展企業は増加してくるものです。

現在は前述のような手法、つまり見込み客相手ではないところに案内状を送付し、その結果来場者も少なくまして受注には結びつかない。来場者が少なく受注に結びつかないから出展する企業が少なくなる。そうすると展示会の規模が縮小し、さらに来場者が減少してくると言った悪循環にはまっていると考えられます。

まずは会員企業が業界展の意味を十分理解し、自社の利益よりも業界全体の利益を優先するようにスタンスを変えなければなりません。そして集客は「見込み客」に限定することを徹底すれば、必ず御社の属されている業界展は復活します。     

効果的なプロモーションサイトの作り方

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑲

《質問》

弊社では昨年からインターネット広告に注力しています。現在は広告をクリックすると弊社WEBサイトの所定のページにジャンプする仕組みで対応していますが、その効果が具体的に把握できません。確かにインターネット広告を行う以前よりも少しだけアクセス数が増えたようですが、それが弊社の受注にどれほど寄与しているのかまったく不明です。インターネット広告を行う場合、現状のようなやり方でよいのか、それとも特設ページを作る必要があるのか(予算の関係上難しい面もありますが)ご教授いただければ幸いです。またインターネット広告での効果測定はどのようにすればいいのか併せて教えていただきたく、よろしくお願いします。(機械加工メーカー)

 《回答》

まずインターネット広告の効果については本誌の201411月号をご覧いただければと思います。一言で言えば私の個人的な見解では少なくともBtoB業界においてはインターネット広告の効果は期待できないと理解しています。

さてご質問の内容を少し整理してみたいと思います。インターネット広告は一般の新聞広告や雑誌広告などと同様にいわゆる「広告」です。しかし新聞広告などと異なってそのコンテンツは極めて希薄であり、説得力もありません。その意味ではたとえば新聞広告で言えば「突き出し広告」と同様の機能しか持っていないと考えられます。

そこで重要なのがインターネット広告からどのようなページにジャンプさせるかです。御社がなされているような、通常のビジネスサイトの所定のページにリンクするやり方はかなりイージーでありあまり効果は期待できません。つまりこの方式では単に検索エンジンの代わりにインターネット広告を用いているに過ぎないのです。

BtoB分野でのクロスメディアの観点から見れば、いわゆる新聞、雑誌、テレビなどのマスメディアでの広告で商品が売れることはまずありません。これらのメディアの活用目的は各社様々ですが、ブランディングや商品の告知、見込み客の獲得などに留まっています。話はそれますが、これらのマスメディアから得られた見込み客を顧客に変換する装置としてじつは「展示会」が存在します。あるいは見込み客に対する営業活動(フェイスツーフェイスでの商談)もその刈り取りに重要な役割を演じます。

この流れから見ると、インターネット広告は内容の希薄な広告でありそれだけでは見込み客は得られません。だから所定のページにジャンプさせてそこで商品や技術の詳細を述べて見込み客を得る仕組みになっています。いわば二段構えの広告戦略とも言えますし、穿った見方をすれば無駄の多い広告活動とも言えます。

ではどのようなページにジャンプさせるのが効果的なのか考えてみたいと思います。前述のように広告から得られた見込み客を顧客に変換するために展示会や営業活動が必要になります。それならば、インターネット広告からジャンプさせるページは十分な営業力を持つページでなければなりません。いわゆるスペシャルサイトとかプロモーションサイトと言われる特設ページがそれにあたるわけです。ここでは当該商品や技術・サービスの内容を分かりやすく理解してもらうために、図表や動画などを充分駆使しなければなりません。何しろ通常営業と異なってフェイスツーフェイスの商談ができないわけですから、それに匹敵するくらいの説得力を持つサイトでなければならないのです。

ここで注意しなければならないのは、商談現場のプロセスを無視してやたら画像を大きく扱ったり動画をふんだんに使ったりすることです。そのようなサイトでは訪問者は視線移動が激しくなり整理された形で情報伝達ができないため、記憶にも残らず当然説得力もなくなります。あくまでも商品やサービスを売ることが目的ですから、実商談のプロセスを尊重し起承転結を明確にして丁寧に述べることが大切です。

しかしコミュニケーション達成率から考えても、営業担当による商談能力以上のサイト構築は事実上非常に困難だと言わざるをえません。たとえば営業担当がフェイスツーフェイスで1時間かけて商談する内容を特設サイトで構築すれば気が遠くなるほどのページ数が必要になり、読み手もすべて網羅して読んでくれるとは限りません。そこで威力を発揮するのが映像なのですが、残念ながら現状ではWEBサイト上での映像表現に優れたスキルを持つ人材が極めて少ない問題があります。

そしてもっと重要な問題がここに秘められていることに気がつきます。十分に営業活動に匹敵できるサイトがもし構築できるなら、何も特設サイトやスペシャルサイトなど気にせずにすべての商品やサービスをスペシャルにすればいいのです。当然コンテンツ量も数倍に膨れあがりますし、それなりの制作コストも必要になるでしょう。しかしその一方で、貧弱なコンテンツよりも遥かに検索エンジンにヒットされやすいポジティブな側面が生まれてきます。

現在インターネットはほぼ飽和状態にあり、WEBサイトへの訪問数や引き合い(見込み客)数も右肩上がりではなくなっている状態です。いわば企業におけるインターネットビジネスの限界がそろそろやってきたとも言えますし、それを打開するためにも従来のような画一的なCMSを利用したコンテンツ制作から一歩前に出て、すべての商品やサービス、さらには企業そのものをもっとダイナミックにスペシャルサイト化すべき時代になってきていると考えます。

しかしここまでコストをかけてスペシャルサイト化したところで、BtoB業界ではWEBサイトで直接受注に結びつけることは極めて希です。と言うことは、どんなに優れたサイトであっても、購買プロセスから見れば所詮は広告と何ら変わりがないとも言えます。

インターネット広告の効果測定についてですが、ずばり見込み客の獲得数になります。コスト効率を考えるならサイト構築に費やしたコストを獲得見込み客数で割れば算出できますし、その数値の推移を追いかけていくことが効果測定の原点になります。訪問者数が多いとか、特定のページでの滞留時間が長いなどは効果測定には何の影響も与えません。

一方で見込み客を顧客化(受注する)するには展示会か営業活動を待たなければなりません。そこで重要なのは展示会にしろ通常営業にしろいわゆる対面営業のスキルが問題になってくることです。多くの作業がデジタル化された現在、対面営業のスキルの低下が各社とも顕著になっています。その原因はここでは述べませんが、どんな優れた広告であってもWEBサイトであっても、最終的な見込み客の刈り取り能力がなければこれらに投下したコストはすべて無駄になってしまいます。その意味でも、まず営業担当の商談力の強化(セリングの強化)が今重要な時期だと思っています。

 

メディア展開をしていない中小企業が展示会に出展する際に留意すべきこと

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑱

《質問》

私どもは従業員20名程度のごく小規模な中小企業です。樹脂成形やその応用商品を作っています。今般ある中小企業を集めた展示会に参加することになりました。参加の目的は大企業とのマッチングです。しかし懇意にしている大企業もなく、どのようにして集客すればよいのか分かりません。ちなみに予算の関係で今まで広告などのメディア展開は一切行っていません。こんな状況ですが、展示会の集客方法とマッチングが期待できる効果的な展示について、ご教授いただければ幸いです。(樹脂応用メーカー)

《回答》

おそらく出展される展示会は一般の商業展ではなく、大企業や中小企業同士のマッチングを目的とする展示会だと認識します。

本来、展示会はその他のメディアから得られた「見込み客」に対して、最後の刈り取り(商談・受注)の場として機能するものです。マッチングについても日頃から大企業や関連企業とのコンタクトがあれば、それらを見込み客として集客することが可能です。

しかし御社の場合は、マスメディアは一切使っておられないようで、メディアからの見込み客はほとんど期待できません。一方で「だからこそこの機会で展示会を用いてPRする」という考えもありますが、いわゆるPR効果は展示会については極端に非効率的です。つまり一人当たりの認知にかけるコストがあまりにも大きすぎるのです。

展示会はPR効果を期待するのではなくあくまでも受注額や受注に結びつくリード(引き合い)件数が展示会効果の要因となります。当該展示会ではこれらに加えてマッチング先の件数も効果指標として認められるでしょう。

ところで御社はWEBサイトを開設されていますね。拝見したところ、そこそこの製品紹介や企業紹介はなされていますが、まだまだ情報が不足しています。他メディアからの見込み客が期待できない現状では、唯一WEBサイトからの引き合いが見込み客として見なすことができるのですが、一ヶ月あたりどのくらいの引き合いがありますか? もし仮に一ヶ月に100件程度の引き合いがあるなら、充分見込み客としてここ1年くらいの引き合い社に対して出展の案内をすることがまず重要です。

とかく企業(大企業でも同様)は顧客は大事にしますが、見込み客の管理が非常に疎かになっているのが現状です。見込み客は潜在顧客とも理解でき、顧客なみに重要な位置づけにあることをもっと認識すべきでしょう。

ところで、WEBサイトは現在はトップページからアクセスされるのは極めて希です。ほとんどの場合、検索キーワードによって当該サイト(ページ)にジャンプしてきます。と言うことは、まず検索された場合、できるだけ上位に表示されるような工夫が必要です。SEOなどという難しい手法がありますが、まず重要なのはできるだけ多くの情報をWEBサイトに盛り込むことです。上述したように御社のサイトはあまりにも情報量が少なすぎますし、これでは検索をかけても上位に表示されないでしょう。

そこで有効な手法を紹介したいと思います。たとえば社長や技術者・職人のブログをビジネスサイトに並行して開設することです。ブログと言ってもよく社長ブログなどにあるような当たり障りのない日記的な内容では全く意味がありません。そこでは技術的な内容や御社に直接関係なくても御社の製品や技術の周辺情報などを記述していくのです。その意味から言えば社長よりも技術者のブログの方が効果的かも知れません。社長ブログの場合は業界の情報や将来性などに対するビジョンなどを主体に記述すればいいと思います。

こういった技術者などのブログは我が国では(とりわけ大企業では)ほとんど見られません。その一番の理由は機密が漏れることを警戒するあまり、できるだけカタログ情報以外は公開しないと言う悪弊があるからです。一方米国では技術者がなかば自己PR的にどんどん自己主張しています。まあ、国民性の違いもあり難しい側面があると思いますが、このブログを構築することで一気に御社のサイトへの訪問は増え、結果的に引き合い件数も増加すると考えます。ちなみに私ごとで恐縮ですが、拙ブログは1ヶ月に一回程度の更新しかしていませんが、毎日2040名程度の訪問があり、ページビューは1ヶ月に1000ページに達しています。ただ内容はマーケティングや広告宣伝についてかなり詳細に踏み込んでいますので検索にヒットしやすいのでしょう(キーワードが多く盛り込まれている)。

この技術者や社長ブログの効果は言うまでもなくインバウンドにあります。前述のようにトップページから訪問される機会がほとんど無く、失礼ながら中小企業で知名度も少なければ企業名で検索されることは皆無に等しいと思います。それをブログに記述された様々なキーワードから、本来のビジネスサイトに誘導するわけです。

余談ですが私のブログでログ解析をすると過去に検索ワードが「政治」でヒットしたときがありました。政治の話など書いた覚えが全くないため不思議に思って過去の原稿を見直してみると、マーケティングを論じた際に現在(3年前)の日本の政治家による経済政策を批判している記事があったのです。「政治」はこの一箇所だけです。それでも検索でヒットしたわけですから、いかにWEBサイトに多様なキーワードをちりばめるのが重要なのか理解できます。

とはいうものの展示会まで時間もありませんので、まずは今までのWEBサイトからの引き合い社に案内すること(できれば手書きの挨拶状を添えて)が第一のポイントです。

そして展示手法についてですが、私もたぶん御社が出展される展示会を見学したことがありますが、まず気づいたのは説明パネルがあまりにも疎かにされていることです。あんなものは誰も読みません(実際に私が1時間程度あるブースをテストした結果です)。しかも米国の展示会調査でも来場者の記憶再生率で説明パネルの効果はほとんど無いと報告されています。読まれないから記憶されないし、記憶されないから記憶再生されないのは当たり前ですが。

それよりも大事なのは、説明パネルは一切やめて壁面全体をインフォグラフィックスで構成することです。何もかも述べるのではなく、製品や技術が持っている特性をピンポイントでグラフやデータ、図などで表現するのです。欧米ではかなり普及していますが、我が国ではまだ展示会でインフォグラフィックスを有効に利用している企業はあまり見かけません。それだけでも稀少価値がありインパクトは期待できます。インフォグラフィックスについては分かりにくいようでしたらそれこそGoogleなどで検索をかけてみて下さい。

最後に一言、大企業であれ中小企業であれ「広報」をもっと重視すべきです。それも単にリリースを記者クラブに投げ込むのではなく、日頃から特定の新聞記者と懇意にしておくことです。そうすれば「今度○○展で面白い製品出すから、ちょっと書いてよ」とお願いできますし、広報の威力は広告以上ですからかなり効果が期待できるものです。     
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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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