河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

WEB訪問数を増加させるための手法

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉔

《質問》
 

最近弊社のWEBサイトへの訪問数が停滞気味です。現状ではWEBからの引き合いを元にした営業活動によってかなりの受注額を確保しています。そんな中で訪問数がここ1年間ほど停滞気味なのが気になっています。訪問数をもっと増やす有効な手法があればご教授いただきたいのですが。(機械部品メーカー・広報室)
 

《回答》
 

WEB訪問数の停滞あるいは減少は、最近おそらくどの企業でも見られるはずです。その要因としてもうすでにWEBは普及し尽くしたことにあります。
 

WEB訪問数の減少が引き合いや受注額の減少にも関連してくるとなると、簡単に見過ごすことはできませんし、何らかの手立てが必要となってきます。
 

まず訪問数を増加させるための手法について述べてみます。
 

言うまでもなく現在はある企業のURLを打ち込んでトップページから入ってくることは極めて希です。おそらく20%もないと考えられます。ほとんどはGooglYahoo等からのキーワード検索によってジャンプしてきます。その意味ではまず検索にかかりやすいコンテンツ構成が必要となってきます。いわゆるSEOと呼ばれる手法を徹底させることが肝要ですが、その前に重要なことがあります。
 

我が国の企業サイトは,あまりにも技術的なコンテンツが少なすぎます。製品紹介のページであっても単に特徴や応用範囲、仕様などを述べているだけです。一方訪問者から見れば様々な要件で言葉を探し検索します。どういう訳かそのキーワードが一般的な製品紹介ページでは掲載されていないケースが少なくありません。
 

この違いはまず製品紹介ページがカタログ的なコンテンツになっていることが最も大きな理由だと考えられます。商談の現場ではカタログをベースにして営業担当が顧客とやりとりを行うのですが、その状況がコンテンツに反映されていないのです。簡単な例で示しますと、カタログ商談の際にほとんどの場合顧客側から質問がなされます。質問があると言うことはカタログには掲載されていないからなんです。そんな状況を無視してカタログ的なコンテンツをアップしたところで、訪問者が質問内容のキーワードで検索してもヒットしないのは当たり前です。
 

まず製品ページではカタログの焼き直しのようなコンテンツではなく、現実の商談内容に沿った形できめ細かくコンテンツづくりをする必要があるでしょう。そのためにはあらかじめ対象マーケットや顧客がどのような課題を抱えていて、どんな質問をしてくるのかを検証しなければなりません。つまりメーカー目線ではなくユーザー目線でサイト構築する必要があるのです。
 

そうすれば自ずとコンテンツ量は増加してきますし、それに伴ってコンテンツに含まれるワードも様々に展開され、結果的に検索ロボットにヒットさせやすくなるのです。
 

次に重要なポイントをお話ししたいと思います。
 

我が国の企業はどうも閉鎖的でなかなか実現しづらいとは思いますが、技術者や開発担当者のブログを構築することです。ブログと言えば日記的な簡単な記述を思い浮かべますが、そうではなく論文調の詳細な内容に踏み込んで記述することが重要です。米国ではこの手法は当たり前になっていますが、我が国ではまだ本格的な技術ブログサイトを目にしたことがありません。これは企業内の人材に対する考え方や社員の考え方によるところが非常に大きく影響しています。
 

米国ではまず企業よりも自身を売り込むことが社員にとって大切な心構えになっています。その根底にはあわよくば今の企業よりももっと条件の良い企業にヘッドハントされることを望むスタンスが、特に技術系の社員に多く見られます。
 

一方我が国はとかく企業機密保持の観点からコンテンツ内容も顧客から見れば中途半端で、まして技術的な詳細内容など書こうものなら即座に会社からストップがかかってしまいます。しかしもうそんな時代ではないのです。訪問数の停滞は別の言い方をすればコンテンツの停滞とも言えます。したがってこれからのWEBサイトでは超企業機密以外の情報はすべてアップすることが重要なポイントとなります。
 

そこで有効なのが技術者や開発担当者の生の声で構成したブログなのです。具体的には1テーマあたり3000字くらいで書き上げればいいと思います。もし論文などで長文であれば、それをいくつかに分割して掲載すればいいでしょう。
 

それによってカタログには決して掲載されない様々な文言が乱立し、結果的に検索ロボットにヒットされやすくなります。ただその場合は当然技術者のブログサイトにアクセスされるのですが、インターフェイスを考慮してそのアクセスをメインサイトに誘導する工夫も必要です。いわゆる企業内インバウンドマーケティングがこれであり、訪問数を増加させる重要な手法でもあります。
 

次に今後重要視されるコンテンツとして「映像」が考えられます。基本的にはYouTubeに連動させる方法が有効ですが、この場合には必ずYouTubeに投稿する前に「タグ」を設定しておくことが肝要です。なぜなら映像そのものは検索ロボットではヒットされずあくまでもそこに埋め込まれた「タグ」によって検索されるからです。さらに御社の商品でなく、似たような商品の映像を閲覧された場合、タグが明確であれば必ずYouTubeの右側に関連動画として紹介されますので非常に有効です。このタグはあまり多くても意味がなくせいぜい10個くらいが適当かと考えられますし、顧客やマーケットを意識して顧客目線で文言を設定することが大切です。そしてYouTubeの映像を自社サイトにリンクしておけば立派なサイト構築が可能になります。
 

ただ問題点もあります。我が国の多くの企業は未だに社内からYouTube等の動画サイトへアクセスすることが禁じられています。それだったら意味がないだろうと思われがちですが、じつは最近はPCよりもスマホからのアクセスが急増しており、スマホの場合には自由に閲覧可能です。その意味ではこれからのサイト構築はスマホやタブレットでの閲覧を考慮したRWD(レスポンシブWEBデザイン)を基本に考えておかなければならないと思います。
 

そのほかにはSNSFacebookTwitter)を利用して訪問数を上げる手法もありますが、まずインフルエンサー(購買影響力を持つ人たち)に彼らのブログやTwitter等で紹介されなければなりません。しかしとりわけBtoB分野ではこのインフルエンサーを探し出すのが厄介なのと、これもまた社内からSNSへのアクセス制限がなされていることを考えると、有効に活用できるのはまだ少し時間がかかるかと考えています。
 

いずれにしても重要なポイントは顧客目線に従った文言を利用して、できるだけ多くのコンテンツでサイト構築することが訪問数を稼ぐ第一歩となります。 

ここでは決して美辞麗句に飾られた宣伝文句は、くれぐれも使用しないように努めなければなりません。     

広告宣伝部門における社員教育について

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉓

《質問》
 

弊社は創業40年で年商300億円の中堅企業です。このたび創業以来初めて本格的な広告宣伝部ができ、私もその部署に配属されました。それまでは企業広告は総務部が、製品広告やカタログ及び展示会は各事業部が行っていました。企業ブランドの観点から広告宣伝業務を一箇所に集中させることがその目的だそうです。そこで質問ですが、私を含めて部員は5名ですが皆広告宣伝に関しては素人同然です。もちろん部長も以前は生産本部におりましたので広告に関しての知見はまったくありません。このような組織をできるだけ早く軌道に乗せるための社員教育をどのようにすればよいのかご教授いただきたく、恥ずかしながら質問させていただきます。(電子部品メーカー・広告宣伝部)
 

《回答》
 

広告宣伝部門における社員教育の手法がご質問の内容だと思いますが、じつは現在多くの企業で間違った社員教育による弊害が起きています。とりあえず広告宣伝部門から外れて一般的な社員教育の実態を述べたいと思います。
 

現在多くの企業が行っている社員教育は外部のコンサルタントなどによる階層別研修がほとんどです。階層別研修というのは、たとえば部長研修や係長研修など昇進に伴う階層ごとに研修を行う手法です。この研修方法が好ましくない理由として、まずそれぞれの階層に応じて同じプログラムで行い、その多くはたとえば「部長はこうあるべきだ」という内容です。それをもっともらしくゲーム理論などを応用して行うのですが、要するに均質化された社員を育成するプログラムと言えるでしょう。
 

本来、社員は様々な個性を持っており、その個性そのものが企業の財産でもあるわけです。しかしこの研修では極論を言えば各人の個性をなくし、同じような社員に仕立て上げることが目的となっています。そこが最も大きな問題点なのです。
 

企業の個性や独自性は言うまでもなく社員の個性や独自性によって決定されます。カリスマ的な社長を持つ企業の場合は、社長の個性が企業の個性に置き換わる場合がありますが、その結果社員の個性は著しく毀損される傾向が強いです。階層別研修はいわばカリスマ社長に代わって外部コンサルタントが社員の個性を埋没させる作業を行っているとも言えます。
 

私は40数年間ある企業で広告宣伝部門の責任者としてその任を背負ってきました。振り返ってみるとここ20年くらい前から不思議な現象に気づいていました。広告宣伝部門ですから取引先はプロダクションやメディア、代理店、印刷会社が多いのですが、20年ほど前からどの企業の営業担当も同じようなプレゼンの仕方を行うようになってきたのです。そこには昔見られた各社の独自の営業手法が跡形もなく消えていました。20年前と言えば各社が階層別研修に注力し始めた時期と一致します。つまり、この研修手法によって各企業の社員は個性を奪われ、マニュアルに従った営業手法が身についてしまったのでしょう。いわゆる社員のコモディティー化です。
 

こんな営業手法では顧客(つまり私自身)を説得することは不可能です。ビジネスと言えども、人と人との付き合いはそれぞれの個性がぶつかり合って面白みが生じ、上手く行けば受注につながるものです。
 

このように階層別研修には多くの問題点があるにもかかわらず、それに気づいていない企業は少なくありません。
 

基本的には社員教育で重要なのは専門教育であり、それを具現化したOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)です。たとえば営業部門なら階層別ではなく外部の優れた営業担当者(たとえば商事会社など)から教育を受けるなどですが、最も効果的でコストがかからないのはOJTなのです。しかしじつはそのOJTが今不可能になりつつあるのも現実です。それはリーマンショックやそれ以前の不況時に多くの優秀な社員が早期退職などで解雇されたことが原因です。したがって今OJTをしようにも、プロはどこにも居ずまわりは素人ばかりというのが現状でしょう。
 

そこで本題に入りますが、御社の場合はまさにOJTが不可能な状況だと思います。その中でどのようにして社員教育をすればよいかですが、まずくどいようですが階層別研修には極力参加させない方がよいでしょう。御社の事情でどうしても参加しなければならないのなら、参加したフリをするだけであまり真剣に取り組まない方が望ましいと思います。なぜなら広告宣伝部門が最も気をつけなければならないのは、この部員のコモディティー化だからです。
 

本来は広告宣伝部門に特化した専門教育が必要なのですが、それを総合的に行う外部コンサルタントはおそらく見つからないでしょう。その場合、BtoB広告協会で行っている「BtoBコミュニケーション大学」に参加されるのが最も効率のよい学び方だと思います。なんだか宣伝ぽくなって恐縮ですが、広告宣伝業務に必要な基礎的な理論や事例を手っ取り早く短時間(3カ月程度)で習得できますので。
 

しかしこのコミュニケーション大学の講義も基本的には基礎理論が主となっており、それを応用して御社独自の広告宣伝メディアの展開をされるには、また御社独自のポリシーが必要となってきます。
 

他にいわゆる広告宣伝の有効な手法などと言ったビジネス本に頼ることも考えられますが、それはできるだけ避けた方が無難です。先日ビジネス本を多く出版しているある有力出版社の役員と話したのですが、その時彼が言っていたのは「優秀なビジネスマンはビジネス本は読まない。無能な人ほどこれらの本に頼りたがる。そんな人間を相手に本作りするのもなかなか辛いものです」と。
 

要するにビジネス本などでノウハウを会得しても結局前述の階層別研修と同じ結果が待ち受けているのです。つまりその本を読んだ人は皆同じ手法をとり結局コモディティー化から抜け出せないというわけです。
 

最近の広告(カタログや展示会も含めて)は単なる「通知」になっており、広告で最も重要な「感動」「共鳴」「共感」をめざしたクリエイティブがほとんど見られなくなりました。本来広告はマーケットや社会、顧客に対して意外性や驚きを与え、それに感動させて共鳴してもらうことが重要な役割であるはずです。その意味では他社の右へならえ的な広告は何の意味もなく、御社独自の切り口やコンセプトが何よりも不可欠な要素となってきます。
 

   OJTも不可能で広告宣伝の専門教育もできない実情ではどうしても他社の優れた広告作品をお手本にしがちでしょう。それもひとつの有力な学び方と言えますが、ここで重要なのは、勇気を持って他社とはまったく正反対のコンセプトやクリエイティブに挑戦することです。広告にはセオリーは存在しません。もっと自由にもっと気ままに広告作りを続けていくことが最善の教育となるでしょう。そしてその積み重ねでやがてOJTが可能になる時期が来ます。しかし、とは言ってもコミュニケーションの基礎理論は熟知しておく必要はありますので、その場合はBtoBコミュニケーション大学で得た知識がものを言うと考えています。     

マーケティング業務におけるビッグデータの有効性についての質問

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉒

《質問》
 

弊社では今後マーケティングリサーチの一環としてビッグデータの取り扱いを検討しています。その理由は、データから得られる様々な要因を元に、新技術や新製品の開発に生かそうというものです。昨今ビッグデータが宝の山のように言われ、弊社としてもその貴重なデータをなんとか自社の企業価値向上のために生かせることができないか、と考えています。そこでビッグデータをマーケティングに応用する場合の注意点や課題などがありましたら教えていただきたく、ご相談する次第です(電気機器メーカー・マーケティング本部マーケティング担当)
 

《回答》
 

最近話題になっているビッグデータをマーケティングに応用する傾向は今後様々な企業で普及してくると思います。しかし結論を申し上げますと、まだ時期尚早です。
 

おそらく現状のデータでは、あまりにも巨大すぎて各企業がマーケティングに生かそうとしても、コストばかりかかって有意義な結果は見いだせないでしょう。その理由は、まずビッグデータと称されるものはすべて「過去」のデータであり、必ずしも将来の需要動向を表しているものではないと言うことです。
 

もし仮にビッグデータがマーケティングに有効性を持つなら、それを活用したすべての企業がヒット商品を連発するはずですが、資本主義社会はある意味で競争社会ですから全企業がヒット商品に恵まれて勝ち残ることは現実的ではありません。と言うより、ヒット商品はそんなに簡単に生まれるものではありません。まして過去のいわば客観的最大公約数としてしか見られないようなデータを元に、売れる商品を開発すること自体コスト効率が良いとは思えません。
 

そもそもビッグデータは、その規模の違いこそあれほとんどが前述したように過去の人間や企業の購買形態や嗜好、属性、行動様式をデータ化したものです。その意味では、統計分野や役所での過去データの把握や解析には役に立つかも知れません。しかし民間企業で未来をめざすマーケティング分野では、おそらくほとんど役に立たないか、そのデータの取り扱いに四苦八苦するでしょう。
 

そこで、「いやそんなことはない。データ解析はすべてコンピュータで行えば抜群の効率化が期待できる」と言った反論が予想されます。しかしここにデジタル社会の大きな落とし穴が潜んでいるのです。仮にデータ解析用のアルゴリズムを設計したとしても、それは単なるプログラムにしか過ぎません。つまり同じようなプログラムを使用すればどんな企業でも同じ結果が現れてくるのです。それが競争社会におけるマーケティングに本当に役立つでしょうか?
 

もっとも分かりやすい例は、ネットショップ大手が行っている「リコメンド機能」です。今や多くのネットショップが行っていますが、これは過去の購買データを元にして「あなたの好みはこの商品でしょう」のように、聞きもしないのにうるさく画面に表示されるものです。それが「あっ、そうだ。これが欲しかったんだ」というのであればいいですが、現状では過去に購入した商品と似たような商品しか表示されません。ある意味ではユーザーに購入意欲の限定を強いることにもなりますし、むしろセリングとしてはマイナスの要因となります。
 

これがビッグデータの限界です。つまり購入者の過去の嗜好は解析できても、未来の嗜好まではデータとして出せないのです。こんな状況でマーケティングに役立つはずがありません。
 

さらに問題だと思われるのが、ビッグデータは誰もがどんな企業もが入手できる汎用的なデータだと言うことです。だからこそできるだけ早くビッグテータを取り込んでマーケティングに役立てたい、と言う気持ちが逸るのは理解できます。しかしこれは多人数での会議や情報共有と非常に似た性格を持っています。言うまでもなく、ヒット商品は会議で多くの意見を参考にしたり情報共有したからと言って容易く生まれるものではありません。
 

アップルのスティーブ・ジョブズが述べたように「欲しいものはあなたの心の中にある」のです。言うなれば、欲しいものは本人も気がついていない心の深層分野に存在していると言うことです。データ解析でその深層心理を顕在化することは、現在の技術、おそらく将来的にも不可能に近いでしょう。それほど人間の心理は複雑で先が読めないものなのです。したがって人間不在のマーケティングやデータ解析はまったく意味がないと言えます。
 

一方BtoB分野は組織購買であるため、ある程度ビッグデータが活用できそうにも思われますが、ここでも大きな罠が潜んでいます。まず企業(組織)は個人の集合体です。そして最終的な購買決裁は個人(組織人)が行います。組織購買の場合は個人の嗜好や感情は無視すべきですから、前述のような人間の複雑性の影響は受けないように思われるでしょう。だからビッグデータは役に立つと短絡的に考えがちですが、重要なのは取引企業の将来の開発志向や設備投資の傾向を解析することです。しかしこのような重要事項をビッグデータから解析されるような危険な情報を企業自らが発信するはずはありません。したがってBtoB分野においてもビッグデータの活用によって、期待するほどの効果は得られないと考えます。
 

ビッグデータの導入やマーケティングに生かすことについて、否定的な意見ばかり述べていますが、データの使いようによっては極めて有効な場合も考えられます。
 

前述したようにビッグデータは過去のデータであり、いわば過去の社会状況を表しているとも言えます。
 

売れる新商品開発で最も大事なことは、消費者も気がついていない「課題」を解決する商品であることは言うまでもありません。ビッグデータを元にして、社会における将来の課題を探索することはある程度可能ですし、それを新商品(ソリューション)開発に生かすことも興味深いことです。しかしここで気をつけなければならないのは、データ解析をプログラムで行ってしまうことです。そうすれば確かに過去の課題は明確化されるでしょう。でも競合企業が同じようなことをすれば、結局同じ結果を持つことになります。
 

重要なのはここからです。自社独自の技術や他企業とのアライアンスによって課題に対するソリューションをどのように開発していくのか、が企業に課せられた大きな課題でもあるのです。しかもソリューション開発はもうプログラムでは不可能です。結局は企業に属する個々人の勘や未来を見通す能力がものを言うのですが、残念ながら最近それらの劣化が著しく、その能力開発は至難の業と言わざるをえません。
 

したがってビッグデータをマーケティングに活用するには、まず困難であるにせよデジタルに頼らない個々人のスキルアップが先決で、それとワンセットで導入しないことには膨大なデータに手をこまねくだけになってしまいます。
むしろマーケティング分野ではなく、ビッグデータの特性から施設管理やパレートの法則等とリンクさせた生産性の向上をめざす方が現実的だと考えます。     

宣伝業務の効率化についてのご相談

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉑

《質問》
 

私はある繊維メーカーの広告宣伝業務を10年間にわたって担当しています。部下は5人です。そこそこの広告宣伝費は毎年確保できているのですが、最近めっきり業務の効率が悪くなった気がしています。たとえば商品カタログを制作する期間が、従来は1カ月もかからなかったのが今では2カ月以上かかる場合も少なくありません。何が原因でこのような事態を起こしているのか見当もつきません。もっと効率よく宣伝業務を行うためにはどうすればいいのかご教授いただければ幸いです。(繊維メーカー・広告宣伝部)
 

《回答》
 

御社の状況は最近よく耳にする現象です。おそらく多くの企業が同じような問題に悩んでいると思います(気がついていない場合がほとんどですが)。
 

まず業務の効率化には仕事のスピードが大きく関係してきます。当然スピードはコストにも影響を与えます。御社の場合、カタログ制作の例を示されていますが、今まで1カ月でできていた仕事が2カ月かかっていると言うことは業務効率が1/2に低下しているのは確実で、非常に大きな問題です。その結果が仮に質的に優れたカタログが出来上がったとしてもそれは効率化とは関係のないことです。おそらくこれはあなたの部署だけでなく全社的に抱えている問題でしょう。そうなれば単に宣伝部門だけの問題ではなく企業経営に影響を与える大変厄介な課題とも言えます。
 

その仕事のスピードを阻害している原因はいくつか考えられますが、最も大きい要因はいわゆる「報連相(ほうれんそう)」と言った大時代の考え方にあります。上司はことあるごとに部下に報告を求める。同僚に対しては情報共有の大義名分の下で常に現状連絡を要求される。どんな細かい疑問でもすぐに誰かに相談する。こんな事態が生じていませんか? これらはすべてムダの要因になります。そしてさらに無視できないのは、報告や相談などは相手の時間(コスト)も拘束することになります。これはあまり意識されていません。その結果以前と比べて仕事の質が向上していますか? 
 

基礎技術を元に製品開発を行う場合を除けば、宣伝業務のようなクリエイティブ部門では時間をかければかけるほど実は質は低下していきます。なぜなら時間がかかると言うことはそれだけ多くの人の意見や指示をその作品に包含していると言うことになります。そうするとどうしても最大公約数的な作品になってしまい、可もなく不可もない平凡な質に落ち着いてしまいます。これでは広告にしろカタログにしろオーディエンスに感動を与えメディア特性を最大限発揮することは不可能になります。
 

「報連相」はほとんどの場合社内で行われます。しかし一方で広告やカタログ、展示会などのメディアはマーケットや社会に対してメッセージするものです。したがって極論を言えば社内の意見などどうでもよく、むしろ顧客や社会からの意見の方が重要なのです。これを勘違いして相変わらず社内で侃々諤々の議論が行われているのが各社の現状です。これでは仕事のスピードは落ちる一方で、マーケットや社会を全く無視していると言っても過言ではありません。
 

まずクリエイティブ部門においてはこの「報連相」を排除すべきです。そうすれば業務効率は格段に向上します。しかしいきなり「報連相」はダメ、と言っても今まで人の意見や指示に慣れきった部員には多少酷かも知れませんし、むしろそれによって自分で問題を抱え込んで一向に仕事が進まないという結果も予測できます。この場合はまず上司がきっちりと明言すべきです。「どうしても自分で解決できない問題だけを相談してくれ。細かな報告や連絡は一切不要。すべてはあなたたちを信じているから自由にやりなさい」と。これが言える上司の下では驚くほど業務効率はアップしますし、何よりも個々人のスキルも向上して結果的に何倍もの業務効率化が達成できます。
 

それからもう一つ業務効率に影響を与えている要因として外注との関係があります。御社が内制をされているのか外注を使っているのか文面では把握できませんが、仮に内制されている場合はまずほとんどの仕事を外注に依存することによって効率は上がります。外注や代理店の使い方については本シリーズの⑮で述べていますので参考にしてください。ここで重要なのは外注することで当然コストが発生します。これを嫌がって内制するケースが多いのですが、ここでよく考えてみてください。以前本シリーズ⑮では代理店に外注する場合とプロダクションに外注する場合を述べており、プロダクションへの直取引を推奨しています。まずあなたの部署の平均給与とプロダクションの給与とを比較してみてください。明らかにプロダクションの方が給与は低いはずです。と言うことは単位時間あたりのコストはプロダクションに外注する方が安くなるはずです。しかも相手はプロですので当然質も期待できます。
 

外注する場合にどうしても外注コストにばかり目が行きがちですが、重要なポイントがひとつあります。それは外注を行うことによって内制している時間が他の業務に振り分けることができると言うことです。つまり結果的には2件以上の仕事を同時進行できるということで、これは業務効率に大きな影響を与えます。私ごとで恐縮ですが、現役の頃ほぼすべての広告業務を内制していた時期がありました。ところがあるとき新製品開発のプロダクトマネジャーに任命されたため内制の時間がなくなりやむなく外注を使いだしました。はじめはぎくしゃくしたものですが、2年ほどするとなんと従来の6倍もの仕事をこなせるようになったのです。
 

ただ外注する場合に気をつけなければならないのは、丸投げは絶対に避けた方がいいと言うことです。つまりコンセプトメイキングや大凡の出来具合はあらかじめ自分でイメージしておきます。コピーもそのスケルトン(骨子)くらいはあらかじめ頭に描いておきます。そして外注からプレゼンされた場合、自分のイメージよりも優れておれば問答無用でOKするのです。外注で失敗するのは自分のイメージを持たずに丸投げをして、プレゼンされてはじめてその内容について細かなところをチェックすることです。自分のイメージではなくプレゼンをベースに評価するわけですから、とかくどうでもいいような部分に難癖をつけたがるものです(まあ、クライアントとしてのプライドが邪魔をしているとも言えますが)。こうなるとせっかく効率化をめざした外注も修正に時間がかかり、プロダクションのモチベーションも下がり、結果的に効率化どころか質も落ちてしまいます。多くの企業がこれで失敗しているのが現状です。
 

宣伝業務の効率化についてのご相談ですが、結論はまず仕事のスピードを上げるため無駄な会議や連絡・報告は排除することと、上手く外注(プロダクション)を使いこなして何倍もの仕事を同時進行させること。この二つができれば驚くほど効率は上がります。

 

業界展を活性化させる方法

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ⑳

《質問》

私は弊社が属するある工業会の展示会委員として日常業務の傍ら、活動しています。当工業会では毎年展示会を行うのですが、集客が思うように伸びません。その結果、会員企業からも不満が続出し、当該展示会の縮小を検討しているところです。多くの会員企業は我々が行う業界展よりもテーマが明確な商業展に軸足をおいているのも事実で、当展示会への出展率は、会員企業のうち40%程度となっています。このままでは当業界展は縮小の一途を辿るのもやむを得ない状況です。昔は当業界展も会員企業の出展率が80%を越えていた時期もあります。もう一度昔のような活性化された業界展に戻したいと考えていますが、何か良い方法がありましたらご教授をお願いします。(メーカー・匿名希望)

《回答》

御社の属されている工業会に限らず、どこの工業会も同じような悩みを抱えておられると思います。つまり業界展を開催しても集客が伸びず、その結果展示会の価値が低いと判断され、さらに出展会員企業が少なくなる現象。現在は出展率が40%と言うことですが、突然40%になったのではなく、おそらくここ十数年の間に徐々に低下してきたのだと考えられます。

それは多くの企業の勘違いが原因になっています。一般商業展はともかく業界展に限れば2000年以降から徐々に集客率が低下し始めているのですが、その要因がじつはインターネットの普及にあるのです。従来の展示会の来場目的は70%が「情報収集」でした。これがインターネットの普及に伴い各社のWEBサイトで事足りるために、わざわざ展示会に足を運ぶこともなくなったわけです。したがって上述の情報収集を目的とした70%の人たちが展示会に来なくなったのですが、これは当然と言えば当然のことです。つまり展示会の機能のうち、情報収集がWEBサイトに取って代わっただけの話しです。そしてこれらの情報収集を目的とする人たちはほとんどの場合受注には関与しません。言いかえれば展示会の本来の機能である「見込み客の刈り取りの場」に無用な人たちが排除できたとも言えます。

にもかかわらず相変わらず情報提供(PR)を目的とする企業が後を絶ちません。もはや展示会はPRの場ではなく「営業の場」に変化しているのです。多くの企業はマスメディアやWEBサイトから引き合いを得ているはずです。これらの引き合いが「見込み客」です。広告やWEBサイトで商品を受注させることはBtoB業界ではほとんど不可能です。その見込み客を刈り取る場として展示会の価値があるのです。したがって展示会には見込み客を呼び込むことが前提になりますが、このことは本誌の201312月号で詳しく述べていますので参考にしてください。

ここで一般商業展と業界展の違いを見てみたいと思います。一般商業展はいわゆる展示会プロモータや新聞社などが主催し、時宜を得たテーマが明確になっています。それは何を意味するのか? 一般展示会では旬のテーマを掲げないと集客できないからです。言うまでもなく展示会プロモータや新聞社は御社の顧客に相当する企業を持っているわけではなく、主に前回来場者への案内とマスメディアを使用した告知によって集客します。そのために興味を持たれるテーマが不可欠なのです。

一方業界展は業界によって異なりますが、展示会委員会制度などで事務局を構成し、彼らが企画することになります。しかしながら彼らにはマスメディアもなくせいぜい前回来場者への案内程度しか集客の手立てはありません。あとは出展企業からの案内に頼らざるを得ないのですが、それを行っても集客が見込めないと言うことは、おそらく出展企業も「顧客」や前回来場者(自社ブース)への案内に留まっているのでしょう。しかし会員企業には「見込み客」という強力なデータベースが存在しているはずです。理論的には顧客リストの数倍の見込み客があるはずですが、それがきちんとデータベース化されていないため、適切な案内ができていないのだと考えられます。

会員企業のほとんどが一般商業展に軸足をおいていると言うことですが、それは自ら集客しなくても主催者側が集客してくれることを期待しているからです。その結果仮に自社ブースへの集客が多くなったとしても、果たしてその来場者が受注に結びついたかどうか極めて疑問です。まあ、来場者数を展示会効果と判断するならそれでもいいのでしょうが、本来の展示会効果は受注額であることを忘れてはなりません。その意味では一般商業展でも業界展でもまず出展企業自らが見込み客を集客することが重要です。

ここで簡単な計算をしてみましょう。たとえば出展企業が100社だとして、各社が500人の見込み客を呼び込めばそれだけで来場者数は5万人になります。実際は集客可能な見込み客はその数倍程度有るはずですから、各社が真面目に見込み客を集めれば膨大な集客が得られることになります。このことを忘れられている業界団体が非常に多く存在しているのが事実で、大変もったいないと感じています。

なぜなら一般商業展と異なって業界展の最大の使命は「業界のプレゼンスを上げること」だからです。出展率が40%と言う御社の属されている業界は、大変失礼ながら業界のプレゼンスを向上させるよりも自社の利益を優先する企業が多いのでは、と推察できます。

業界展が盛況になり集客も満足できるようになれば、自然に業界全体が活性化し最終的には会員企業それぞれの利益に貢献するのです。業界展にはそんな価値が含まれていることを忘れてはなりませんし、一般商業展と大きく異なる優位性でもあります。

展示会はその規模にほぼ比例して集客数が変化します。極論を述べれば御社の属されている工業会の会員企業すべてが出展し、それぞれの企業が抱えている見込み客を呼び込めば単純計算でも2.5倍の集客になります。しかも見込み客を呼ぶわけですから受注の確度は遥かに高くなります。その結果業界全体が活性化してくるのです。

ここまで極端でないにしろ、まず会員企業に前述の内容を周知していただき、徐々に出展企業を増やして見込み客を呼び込むことを徹底すれば、自ずとその業界展の規模は徐々に大きくなってくるはずです。規模が大きくなればあとは自然に出展企業は増加してくるものです。

現在は前述のような手法、つまり見込み客相手ではないところに案内状を送付し、その結果来場者も少なくまして受注には結びつかない。来場者が少なく受注に結びつかないから出展する企業が少なくなる。そうすると展示会の規模が縮小し、さらに来場者が減少してくると言った悪循環にはまっていると考えられます。

まずは会員企業が業界展の意味を十分理解し、自社の利益よりも業界全体の利益を優先するようにスタンスを変えなければなりません。そして集客は「見込み客」に限定することを徹底すれば、必ず御社の属されている業界展は復活します。     
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河内英司(かわちえいじ)
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京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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