河内英司のBtoBコミュニケーション

広告/マーケティングの側面からと、無駄話。

ASICAモデルについての質問

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉗

《質問》
 

私は現在印刷業界で日々クライアントと接し、広告やカタログの企画制作のお手伝いをしています。最近複数のクライアントから「ASICAモデルって知ってる?」と言う質問が多く、調べてみると日本BtoB広告協会から提唱されている理論だと知りました。クライアントの話では最近はASICAモデルに則った広告制作やカタログ制作が有効だと言うことが徐々に知れ渡っているようで、「貴方ももっと勉強しなさい」と言われてしまいました。大変恐縮ですがこの欄をお借りしてASICAモデルについてご教授いただければ大変有り難いと思っています。(印刷会社・クリエイティブ営業部)
 

《回答》
 

ASICAモデルはBtoB購買のプロセスモデルとして理論化したもので、既に2008年に当協会の機関誌で発表しています。詳しくはその頃の機関誌をご覧いただくか、拙著「ASICAれ!」(2012年刊、日刊工業新聞)をお読みいただければほとんど理解できると思います。しかし200ページもの書物を読むのも面倒でしょうから、ここではASICAモデルの主要部分について、かいつまんでお話しさせていただきます。
 

確かにASICAモデルはおかげさまで最近各企業に認知され、広告制作などに生かされつつありますし、とりわけBtoB業界では非常に有効なプロモーションプロセスだと思っています。またここに来てBtoC業界でもその有効性が認められようとしています。
 

ASICAモデルの最大のポイントは、「ホスピタリティ・マーケティング」を基盤にしたプロセスモデルであることです。ここで言うホスピタリティとは、最近流行っている「おもてなし」と言う意味ではなく、顧客や社会が抱えている課題を解決し、最終的に喜んでいただく、と言う意味です。したがって顧客に媚びたり顧客の言いなりになって商品販売やプロモーションを行う事ではない、と言うことをまず念頭に置いておく必要があります。
 

ASICAモデルは、A(アサインメント=課題)、S(ソリューション=課題解決)、I(インスペクション=検証)、C(コンセント=承認)、A(アクション=購買)の各プロセスを経てビジネスが完結することを意味しています。したがってビジネスのトリガーになるのはアサインメント(課題)なのです。

従来から広告分野では誰もが知っているAIDMA理論がありますが、この理論ではトリガーはA(アテンション=注目)になっています。なぜ注目を無視して課題がトリガーになるのかというと、現在のように驚異的に氾濫している情報の中ではもう既に「注目」という機会は期待できません。情報氾濫期ではすべての情報はノイズと衣を替え、オーディエンスにとって有益な情報はごく僅かしかないと言えます。それに替わって社会や生活がますます複雑化するに伴い、あらゆる場面で「課題」が生じてきています。
 

ここでニーズと課題の違いをお話ししたいと思います。従来からとりわけ広告分野や商品開発において、ニーズの先取りとかニーズにあった広告企画が求められてきました。ところが最近のように技術開発のスピードが速くなるにつれ、今のニーズは早晩解決されてしまいます。広告企画ではおよそ26カ月の期間を要し、商品開発ともなれば半年〜2年の期間が必要ですが、ニーズを追いかけると広告が完成した頃、商品が完成した頃には既にめざしていたニースは満たされてしまっているという現象が多々見られます。マーケティングリサーチによる広告や商品企画はこのニーズを分析して行いますが、その結果せっかく作った商品が売れないとか、広告が効かないと言う結果に陥っているのです。
 

一方で課題は場合によると顧客や社会ですら認識していない隠れた問題とも言えます。このやがて芽を出す地下に潜っている課題を掘り出して顧客や社会に提示することが広告企画の場面でも重要なのです。ニーズを満たされても今の時代ではほとんどの人はそんなに喜びません。時代の趨勢から当たり前だからなのです。ところが自分が知らなかった課題を提示され、その解決策を露わにすることで顧客や社会に強烈に印象づけることが可能になります。とりわけ相手が企業では「よくそこまで考えてくれた」と感謝され、それが信頼へと繋がっていくのです。
 

このようにASICAモデルのトリガーはまず課題探索から始まりますし、そのためには顧客企業はもちろんあらゆる分野の現状理解とそこから将来表面化すると思われる課題を把握することが非常に重要と言えます。つまり広告分野でも商品開発分野でも、現状のニーズの調査ではなく将来の課題探索が重要だと言えます。

課題さえ明確にできればどのようなメッセージでそれを理解させるか、と言うプロセスに移りますが、それ以降はメディアの選択とASICAモデルの各プロセスに合致したコンテンツを準備すればそんなに難しい事ではありません。
 

課題の次のソリューションは、自社の技術や製品でどのような課題解決が可能なのかを述べることになりますが、このメッセージは課題の提示と一体化した方が分かりやすいでしょう。ここでは新聞広告やWEBサイトが威力を発揮します。
 

インスペクション段階ではまさにWEBサイトが重要なメディアになります。提示されたソリューションが自社に合致するかどうかを競合企業などと比較検討するわけですから、WEBサイトが最も手っ取り早いと言えます。その意味ではWEBサイトにはあらゆる情報を搭載しておくことが不可欠です。とかくWEBサイトのコンテンツ企画の際、軸足を自社に起きがちですが、重要なのは自社を社外から客観的に眺めて競合企業に勝てるコンテンツづくりを行う事です。
 

コンセント段階はじつは課題に次いで重要なプロセスとなります。何しろここで承認されなければいくら優れたソリューションを提示して顧客に納得させても、最終的には他決の恐れがあるからです。承認決裁者向けのメディアは特に存在しませんが、ここではブランディング広告などで決裁者の潜在意識に植え付ける手法が有効です。また我が国ではあまり見かけませんが、社長向けのカタログなども効果的です。さらに現在どの企業も経理部門が力を持っています。企業成長を考えるとあまりよい傾向ではないのですが、時代の趨勢と見れば致し方ないことでもあります。それならば経理部門向けのカタログを企画しても面白いと思います。カタログは本来商品の特異性や優位性などを述べますが、経理部門にとってそんなことはどうでもいいのです。当該商品を導入することで顧客企業にどれだけの利益がもたらされるのか、を数式などを駆使して丁寧に述べることができれば最高です。
 

こうしてコンセントが上手く達成できれば晴れて購買(アクション)に繋がってくるのですが、ここで重要なメディアを忘れてはなりません。展示会です。本来展示会はPRの場ではなく受注の場なのですが、なぜか展示会に決裁者や検証者の来場を促す企業が皆無なのが不思議です。展示会はASICAモデルのすべてのプロセスに対応できますし、とりわけ実機を前にして検証作業や決裁の動機付けには他のメディアにはない力を持っています。展示会の有効性をASICAモデルからも再認識すべきでは、と考えています。

 

BtoB企業での新聞広告やテレビCMの活用効果

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉖


《質問》

弊社は建設機械や運搬関連器具を製造販売していますが、現在ほとんど広告活動を行っておりません。その理由は弊社のようなBtoB企業ではマスメディアで広告を行っても受注にはあまり寄与しないという昔からの感覚があるからです。私は個人的にはもっとマスメディアを活用して知名度を上げることも企業として重要なのではないか、と思っているのですが、上司からは「そんな無駄なことは必要ない」のひと言でなかなか広告予算が配分されないのが悔しく思っています。そこで質問したいのですが、本当にBtoB企業ではマスメディアを活用しても効果は期待できないのでしょうか? もし活用するとすればどのような広告展開が可能なのかご教授いただくようお願いします。(建設機械メーカー・営業企画部)

 

《回答》

大変貴重なご質問を頂戴しありがとうございます。

確かに多くのBtoB企業はマスメディアを軽視する傾向が非常に強いのが現実の中で、貴方の広告に対する前向きな姿勢に敬服します。

まず新聞広告の価値については、本Q&Aシリーズ④で述べておりますので、併せてご覧いただければより詳しくご理解いただけるかと思います。

今回は少し視点を変えてお答えしたいと思います。

まずBtoB企業における新聞広告やテレビCMに対する取り組み姿勢は、はっきり言って間違っています。貴方の考え方の方が正しいのです。このことについてしばらくお話しします。

企業の上層部が「受注への寄与率が低いからマスメディア広告を控えたい」という気持ちはよく分かります。しかしとりわけBtoB企業はその商材の購買プロセスが非常に複雑で多くの組織にまたがって決裁される傾向があります。マス広告が受注に寄与しないと言う理由は、まず広告ターゲットを間違っているからです。最も購買に関与するターゲットは顧客企業の決裁権を持つ上層部です。最も強い決裁権を持つのは「社長」です。こういった人たちをターゲットにせず、ただ漠然と企業PRに終始している広告が少なくありません。情報過多の現在ピンポイントでターゲティングしなければ、広告という情報は単なるノイズとして受け流されてしまいます。

したがって新聞広告で重要なのは顧客企業や社会に対するブランディングを意識した広告です。ターゲットは社会ではオピニオンリーダー、企業では決裁権を持つ上層部となりますが、ひと言で言えば社長向けの広告とも考えられます。ここでは商品のPRに終始するのではなく、社会や顧客企業が抱えている課題もしくは将来課題に発展するであろう問題点に対するソリューション、つまり御社がこれらの課題にどのような技術や商品で解決できるのか、を明確にメッセージすることが大切です。つまり美辞麗句満載のPR広告ではなく、社会も顧客企業も気づいていない課題に対するメッセージを発信するのです。

人でも企業でも自分たちが気づかない課題とソリューションを明示されれば、その企業の信頼性は急激に向上するものです。この「社会や企業が気づいていない課題」がポイントになります。

このような新聞広告はまだ現在は極めて少ない状況ですが、将来、新聞広告の大きな役割は社会(企業を含めて)が抱える課題の提示とそのソリューションをメッセージする広告スタイルが主流になってくると思います。

また新聞そのものの価値については前述した過去の本欄をご覧いただければ理解できると思いますが、ネットが普及した現在でも印刷媒体としての新聞の価値は決して衰えてはいません。確かに新聞の販売数量は徐々に低下していますが、それはBtoB分野に限れば一社あたりの購読数がインターネットの影響で低下しただけのことで、メディアとしての新聞の価値が低下したものではありません。

一方テレビCMについても前述とまったく同様のコンセプトで問題ありません。社会に対するメッセージCMは新聞以上に到達率は高いでしょう。しかしここで気をつけなければならないのは、単に視聴率を気にしてくだらないバラエティ番組に関与しないことです。BtoB分野であってもテレビは一人の心理変容が影響します。テレビCMは番組の流れを引きずった状態で見られます。その意味では番組の流れを邪魔しないテイストで構成しなければなりません。バラエティ番組であればバラエティ風のCMになってしまいます。そこで小難しいメッセージを発信してもおそらく視聴者はトイレに行くだけでしょう。テレビCMでの狙い目は、視聴ターゲットが明確で「ながら視聴」の少ないBSCSを選択した方がいいでしょう。広告料金も地上波に比べると格安ですから。

新聞広告にしろテレビCMにしろ、そこで商品が売れることは期待できません。そのことが御社の上層部が言われる「マス広告をしても受注に結びつかない」と思われている所以です。メディアはそれぞれ役割分担を持っています。マス広告で注目された後はほとんどの場合WEBサイトにアクセスされます。したがってWEBサイトの構成も上述したメッセージ広告をさらに詳細に述べたサイト構成は不可欠となります。この件に関しては紙幅の関係上Q&Aシリーズ⑲の「プロモーションサイト」について言及した本欄をご覧ください。


 新聞広告は確かに最近は低調気味ですが、それはまず新聞の価値を正確に把握していないことと、昔のようなダイレクトに新聞広告からの引き合いが低下したのが主な要因です。新聞広告は社会に対する自社からのメッセージであること、そして引き合いや意見はWEBを通じて行われていることを充分把握しておくべきでしょう。

ところで新聞広告に代わってインターネット広告が主流だと言われていますが、それこそBtoB企業でインターネット広告はあまり効果はありません。単に価格が安いだけでどこもかしこもインターネット広告に躍起になっていますが、BtoB企業でのネットアクセスの目的を考えると画面にちらちら出てくる広告をクリックする暇などないのです。それよりも、昨年末話題になった「vvvウィルス(ランサムウェア)」が気がかりです。当初はインターネット広告にウィルスが仕込まれていたと言われていましたが、実際はそうではなくメールの添付ファイルが原因でした。しかしよく考えればデジタルの世界はもうなんでもありです。インターネット広告にウィルスを仕込ませる事はそんなに難しいものではありません。それが現実になるとインターネット広告そのものの価値が急減してしまい、おそらく最も安全な新聞広告やテレビCMに回帰してくるはずです。ちなみに私はウィルスが恐いと言うより、前述したネットアクセスの目的に関係ない広告が煩わしく「広告ブロッカー」をブラウザに搭載していますから、インターネット広告は一切目にすることはありません。今後広告に興味ない人やとりわけセキュリティにうるさい企業でも広告ブロッカーを搭載する事が考えられますし、そうなればインターネット広告はまったく本来の機能は果たせなくなってしまうのです。

いずれにしても、新聞の価値は低下したわけではなくこれからは各企業ともメッセージ主体の広告が主役になってくると思います。これこそが本当のCSRなのです。

このようなマスメディアの活用を行えば、結果的に御社の信頼度は向上し受注にも貢献できると考えています。

展示会の効果測定手法について

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉕

《質問》
 

弊社は鋼材を主とするメーカーで年商500億円規模の中堅企業です。2015年は合計で12件の展示会に参加しました。ところがどうもその展示会の効果が有ったのかどうかよく分かりません。私は広報部門ですが営業担当者に問いただしても展示会効果はよく分からないという回答でした。ただ2014年に比べて展示会での引き合いは着実に増加しているため、社内では一応展示会の効果はあったと理解されているようです。しかし私は本当に展示会の効果がどのようにして測定できるのかまだ疑問点も多く社内の意見には懐疑的です。信頼できる展示会効果測定手法についてご教授いただければ幸いです。(鋼材メーカー・広報宣伝部)
 

《回答》
 

展示会効果については多くの企業で未だに明確に把握されていないのが実情です。その原因は展示会をPR(広告)と位置づけるかセリング(営業)と位置づけるか、が極めて曖昧なところにあります。
 

1990年代以前は展示会は主に広報宣伝部門の所轄になっていました。それはまだメディアが現在ほど発達しておらず、展示会もまた広報の一端を担っていたことがその理由です。ところが1990年代中盤以降展示会のあり方は大きく変化してきました。インターネットやWEBサイトの普及によって、展示会における広報の役割はほとんどなくなってしまったのです。未だにこの現象に気づかない企業が少なくありませんが、おそらくどの展示会でも1995年前後を境界にして来場者数は減少傾向にあったと考えられます。それは展示会で情報収集(出展社から見れば広報の役割)がWEBサイトで充分まかなえるため、あえて時間やコストを負担してまで展示会に行く必要がなくなったからです。
 

最近の展示会来場目的を各展示会ごとに見ても、情報収集は急減しています。それに代わって現れたのが商談や新技術の探索と言ったより実務的な目的なのです。
 

ここでよく考えてみれば、情報収集を目的とした来場者はほとんど購買意思はもとより購買決定権のない人たちばかりです。展示会をPRの場として捉えるならこれらの人たちにアピールするのは意味もありますが、展示会でのPR活動がいかに非効率的かは後ほど述べます。
 

このように現在の展示会はPRの場から営業やマッチングの場へと変化して来つつあることに気づかなければなりません。
 

さて前置きはこのあたりにして展示会の効果測定を明確に理解できる考え方を述べたいと思います。

展示会の効果として見なされるのは二通りあります。一つはみなさんご存じの「PR効果」です。これは来場者に社名や商品を見てもらい認知されることが前提になります。いわば企業PRや商品PRを行うことで、カタログ請求などの引き合い(リード)を得ることによって完成されます。これは大凡ブースへの来場者数に比例します。この意味でもブース来場者が多ければ多いほど展示会は賑わいを見せるのですが、このことが来場者重視の幻想が未だに払拭できない要因となっています。
 

もう一つの効果は「セールス効果」です。これは来場者から得られた引き合いを、後の営業活動によってどれだけ受注に結びついたかが問題になります。ここで重要なのが以前この稿でも述べた展示会終了後のトラッキングシステムなのです。とりわけBtoB分野では引き合いから受注まで最短で数ヶ月、長ければ数年かかるケースもありますが、いくら期間が長くてもきちんとトラッキングしておく必要性はセールス効果を明確にするためには欠かせないのです。
 

このセールス効果はほとんどの企業で曖昧に扱われてしまっています。その理由はトラッキングが徹底されていない事が最大の原因です。面倒なトラッキングはさておいて展示会の効果を来場者数でお茶を濁す傾向が、いつまでたっても止まらない理由がここにあります。
 

本来、展示会効果は「PR効果」と「セールス効果」の掛け算によって決定されます。
 

ではそれぞれの効果測定式を見てみましょう。まずPR効果は単一コストあたりの来場者によって計算できます。つまり投下コストでどれだけの来場者を得られたか、が基本的なPR効果となります。算式で表せば、分母にコストを、分子に来場者数を置きます。来場者が多くなればなるほどPR効果は増大することがこの算式で理解できます。
 

一方セールス効果は、来場者一人当たりどれだけ受注できたかによって決定されます。いくら来場者が多くても受注が少なければセールス効果は少なくなってしまいます。したがってここでは分母に来場者数、分子に受注金額(成約額)を置くことになります。受注額が増えれば当然セールス効果は増加します。
 

そして重要なのは展示会効果はこれら二つの効果の掛け算であることです。もう既にここまで記せばある程度の方はおわかりいただけると思いますが、この二つの算式をよく眺めてみれば、来場者数はPR効果式では分子に置かれ、セールス効果式では分母に置かれます。と言うことは二つの効果を掛け算すると分母と分子は同数ですからそれぞれ消去されます。その結果成り立つ算式は、分母にコスト、分子に受注金額(成約額)と変化します。この算式は言うまでもなくセールス効率(営業効率)を表しています。ここから導かれるのは、展示会はもはや来場者数は問題ではなくコストと受注金額という単純な要素によって決定されると言うことです。
 

このことが展示会は既にPRの場ではなくて営業の場であることを実証していると言えます。これを十分ご理解いただきたいと思います。
 

さて、とは言っても展示会でのPRも重要な目的ではないか、と反論があると思いますが、様々なメディアのPRコストを比べてみればいかに展示会でのPRは無意味かが理解できます。CPMで換算してもいいですがここではより簡単にオーディエンス一人当たりのPRコストを見てみましょう。電波メディアでは一人当たりの到達コストは0.5円〜3円程度ですし、新聞広告だと2.5円〜5円となります。WEBサイトの場合はサイト構築コストが大きくばらつきがあり明確ではありませんが、おそらく50円〜1000円程度でしょう。これに比べて展示会の場合は5000円から1万円もかかってしまいます。これだけ見ても展示会でPRするのはいかに非効率的かが理解できるかと思います。
 

ただ重要なのは電波メディアでもマス広告でもその目的は見込み客の獲得にあり、展示会の目的は見込み客の刈り取りの場(受注に寄与する場)であることです。したがって自ずとコストが大幅に異なるのは当然と言えましょう。
 

そして最も気をつけなければならないのは、見込み客の獲得を目的とするマス広告やWEBサイトでいかに質の高い見込み客を得るかです。そのために広告やWEBコンテンツは充分考慮しておく必要があります。つまり事業のクロージングの場である展示会のために、受注確度の高い見込み客を得る広告活動が連携していなければならないのです。
 

やみくもに来場者数を気にしたりせず、優秀な見込み客だけを展示会に来てもらうことを心がければ、上述した算式から必ず展示会効果は急増するはずです。

結論は、展示会効果は当該展示会が関与した受注をコストで割った数字と言うことになり、その推移を毎年監視していくことが大切です。

 

WEB訪問数を増加させるための手法

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉔

《質問》
 

最近弊社のWEBサイトへの訪問数が停滞気味です。現状ではWEBからの引き合いを元にした営業活動によってかなりの受注額を確保しています。そんな中で訪問数がここ1年間ほど停滞気味なのが気になっています。訪問数をもっと増やす有効な手法があればご教授いただきたいのですが。(機械部品メーカー・広報室)
 

《回答》
 

WEB訪問数の停滞あるいは減少は、最近おそらくどの企業でも見られるはずです。その要因としてもうすでにWEBは普及し尽くしたことにあります。
 

WEB訪問数の減少が引き合いや受注額の減少にも関連してくるとなると、簡単に見過ごすことはできませんし、何らかの手立てが必要となってきます。
 

まず訪問数を増加させるための手法について述べてみます。
 

言うまでもなく現在はある企業のURLを打ち込んでトップページから入ってくることは極めて希です。おそらく20%もないと考えられます。ほとんどはGooglYahoo等からのキーワード検索によってジャンプしてきます。その意味ではまず検索にかかりやすいコンテンツ構成が必要となってきます。いわゆるSEOと呼ばれる手法を徹底させることが肝要ですが、その前に重要なことがあります。
 

我が国の企業サイトは,あまりにも技術的なコンテンツが少なすぎます。製品紹介のページであっても単に特徴や応用範囲、仕様などを述べているだけです。一方訪問者から見れば様々な要件で言葉を探し検索します。どういう訳かそのキーワードが一般的な製品紹介ページでは掲載されていないケースが少なくありません。
 

この違いはまず製品紹介ページがカタログ的なコンテンツになっていることが最も大きな理由だと考えられます。商談の現場ではカタログをベースにして営業担当が顧客とやりとりを行うのですが、その状況がコンテンツに反映されていないのです。簡単な例で示しますと、カタログ商談の際にほとんどの場合顧客側から質問がなされます。質問があると言うことはカタログには掲載されていないからなんです。そんな状況を無視してカタログ的なコンテンツをアップしたところで、訪問者が質問内容のキーワードで検索してもヒットしないのは当たり前です。
 

まず製品ページではカタログの焼き直しのようなコンテンツではなく、現実の商談内容に沿った形できめ細かくコンテンツづくりをする必要があるでしょう。そのためにはあらかじめ対象マーケットや顧客がどのような課題を抱えていて、どんな質問をしてくるのかを検証しなければなりません。つまりメーカー目線ではなくユーザー目線でサイト構築する必要があるのです。
 

そうすれば自ずとコンテンツ量は増加してきますし、それに伴ってコンテンツに含まれるワードも様々に展開され、結果的に検索ロボットにヒットさせやすくなるのです。
 

次に重要なポイントをお話ししたいと思います。
 

我が国の企業はどうも閉鎖的でなかなか実現しづらいとは思いますが、技術者や開発担当者のブログを構築することです。ブログと言えば日記的な簡単な記述を思い浮かべますが、そうではなく論文調の詳細な内容に踏み込んで記述することが重要です。米国ではこの手法は当たり前になっていますが、我が国ではまだ本格的な技術ブログサイトを目にしたことがありません。これは企業内の人材に対する考え方や社員の考え方によるところが非常に大きく影響しています。
 

米国ではまず企業よりも自身を売り込むことが社員にとって大切な心構えになっています。その根底にはあわよくば今の企業よりももっと条件の良い企業にヘッドハントされることを望むスタンスが、特に技術系の社員に多く見られます。
 

一方我が国はとかく企業機密保持の観点からコンテンツ内容も顧客から見れば中途半端で、まして技術的な詳細内容など書こうものなら即座に会社からストップがかかってしまいます。しかしもうそんな時代ではないのです。訪問数の停滞は別の言い方をすればコンテンツの停滞とも言えます。したがってこれからのWEBサイトでは超企業機密以外の情報はすべてアップすることが重要なポイントとなります。
 

そこで有効なのが技術者や開発担当者の生の声で構成したブログなのです。具体的には1テーマあたり3000字くらいで書き上げればいいと思います。もし論文などで長文であれば、それをいくつかに分割して掲載すればいいでしょう。
 

それによってカタログには決して掲載されない様々な文言が乱立し、結果的に検索ロボットにヒットされやすくなります。ただその場合は当然技術者のブログサイトにアクセスされるのですが、インターフェイスを考慮してそのアクセスをメインサイトに誘導する工夫も必要です。いわゆる企業内インバウンドマーケティングがこれであり、訪問数を増加させる重要な手法でもあります。
 

次に今後重要視されるコンテンツとして「映像」が考えられます。基本的にはYouTubeに連動させる方法が有効ですが、この場合には必ずYouTubeに投稿する前に「タグ」を設定しておくことが肝要です。なぜなら映像そのものは検索ロボットではヒットされずあくまでもそこに埋め込まれた「タグ」によって検索されるからです。さらに御社の商品でなく、似たような商品の映像を閲覧された場合、タグが明確であれば必ずYouTubeの右側に関連動画として紹介されますので非常に有効です。このタグはあまり多くても意味がなくせいぜい10個くらいが適当かと考えられますし、顧客やマーケットを意識して顧客目線で文言を設定することが大切です。そしてYouTubeの映像を自社サイトにリンクしておけば立派なサイト構築が可能になります。
 

ただ問題点もあります。我が国の多くの企業は未だに社内からYouTube等の動画サイトへアクセスすることが禁じられています。それだったら意味がないだろうと思われがちですが、じつは最近はPCよりもスマホからのアクセスが急増しており、スマホの場合には自由に閲覧可能です。その意味ではこれからのサイト構築はスマホやタブレットでの閲覧を考慮したRWD(レスポンシブWEBデザイン)を基本に考えておかなければならないと思います。
 

そのほかにはSNSFacebookTwitter)を利用して訪問数を上げる手法もありますが、まずインフルエンサー(購買影響力を持つ人たち)に彼らのブログやTwitter等で紹介されなければなりません。しかしとりわけBtoB分野ではこのインフルエンサーを探し出すのが厄介なのと、これもまた社内からSNSへのアクセス制限がなされていることを考えると、有効に活用できるのはまだ少し時間がかかるかと考えています。
 

いずれにしても重要なポイントは顧客目線に従った文言を利用して、できるだけ多くのコンテンツでサイト構築することが訪問数を稼ぐ第一歩となります。 

ここでは決して美辞麗句に飾られた宣伝文句は、くれぐれも使用しないように努めなければなりません。     

広告宣伝部門における社員教育について

BtoBコミュニケーション Q&Aシリーズ㉓

《質問》
 

弊社は創業40年で年商300億円の中堅企業です。このたび創業以来初めて本格的な広告宣伝部ができ、私もその部署に配属されました。それまでは企業広告は総務部が、製品広告やカタログ及び展示会は各事業部が行っていました。企業ブランドの観点から広告宣伝業務を一箇所に集中させることがその目的だそうです。そこで質問ですが、私を含めて部員は5名ですが皆広告宣伝に関しては素人同然です。もちろん部長も以前は生産本部におりましたので広告に関しての知見はまったくありません。このような組織をできるだけ早く軌道に乗せるための社員教育をどのようにすればよいのかご教授いただきたく、恥ずかしながら質問させていただきます。(電子部品メーカー・広告宣伝部)
 

《回答》
 

広告宣伝部門における社員教育の手法がご質問の内容だと思いますが、じつは現在多くの企業で間違った社員教育による弊害が起きています。とりあえず広告宣伝部門から外れて一般的な社員教育の実態を述べたいと思います。
 

現在多くの企業が行っている社員教育は外部のコンサルタントなどによる階層別研修がほとんどです。階層別研修というのは、たとえば部長研修や係長研修など昇進に伴う階層ごとに研修を行う手法です。この研修方法が好ましくない理由として、まずそれぞれの階層に応じて同じプログラムで行い、その多くはたとえば「部長はこうあるべきだ」という内容です。それをもっともらしくゲーム理論などを応用して行うのですが、要するに均質化された社員を育成するプログラムと言えるでしょう。
 

本来、社員は様々な個性を持っており、その個性そのものが企業の財産でもあるわけです。しかしこの研修では極論を言えば各人の個性をなくし、同じような社員に仕立て上げることが目的となっています。そこが最も大きな問題点なのです。
 

企業の個性や独自性は言うまでもなく社員の個性や独自性によって決定されます。カリスマ的な社長を持つ企業の場合は、社長の個性が企業の個性に置き換わる場合がありますが、その結果社員の個性は著しく毀損される傾向が強いです。階層別研修はいわばカリスマ社長に代わって外部コンサルタントが社員の個性を埋没させる作業を行っているとも言えます。
 

私は40数年間ある企業で広告宣伝部門の責任者としてその任を背負ってきました。振り返ってみるとここ20年くらい前から不思議な現象に気づいていました。広告宣伝部門ですから取引先はプロダクションやメディア、代理店、印刷会社が多いのですが、20年ほど前からどの企業の営業担当も同じようなプレゼンの仕方を行うようになってきたのです。そこには昔見られた各社の独自の営業手法が跡形もなく消えていました。20年前と言えば各社が階層別研修に注力し始めた時期と一致します。つまり、この研修手法によって各企業の社員は個性を奪われ、マニュアルに従った営業手法が身についてしまったのでしょう。いわゆる社員のコモディティー化です。
 

こんな営業手法では顧客(つまり私自身)を説得することは不可能です。ビジネスと言えども、人と人との付き合いはそれぞれの個性がぶつかり合って面白みが生じ、上手く行けば受注につながるものです。
 

このように階層別研修には多くの問題点があるにもかかわらず、それに気づいていない企業は少なくありません。
 

基本的には社員教育で重要なのは専門教育であり、それを具現化したOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)です。たとえば営業部門なら階層別ではなく外部の優れた営業担当者(たとえば商事会社など)から教育を受けるなどですが、最も効果的でコストがかからないのはOJTなのです。しかしじつはそのOJTが今不可能になりつつあるのも現実です。それはリーマンショックやそれ以前の不況時に多くの優秀な社員が早期退職などで解雇されたことが原因です。したがって今OJTをしようにも、プロはどこにも居ずまわりは素人ばかりというのが現状でしょう。
 

そこで本題に入りますが、御社の場合はまさにOJTが不可能な状況だと思います。その中でどのようにして社員教育をすればよいかですが、まずくどいようですが階層別研修には極力参加させない方がよいでしょう。御社の事情でどうしても参加しなければならないのなら、参加したフリをするだけであまり真剣に取り組まない方が望ましいと思います。なぜなら広告宣伝部門が最も気をつけなければならないのは、この部員のコモディティー化だからです。
 

本来は広告宣伝部門に特化した専門教育が必要なのですが、それを総合的に行う外部コンサルタントはおそらく見つからないでしょう。その場合、BtoB広告協会で行っている「BtoBコミュニケーション大学」に参加されるのが最も効率のよい学び方だと思います。なんだか宣伝ぽくなって恐縮ですが、広告宣伝業務に必要な基礎的な理論や事例を手っ取り早く短時間(3カ月程度)で習得できますので。
 

しかしこのコミュニケーション大学の講義も基本的には基礎理論が主となっており、それを応用して御社独自の広告宣伝メディアの展開をされるには、また御社独自のポリシーが必要となってきます。
 

他にいわゆる広告宣伝の有効な手法などと言ったビジネス本に頼ることも考えられますが、それはできるだけ避けた方が無難です。先日ビジネス本を多く出版しているある有力出版社の役員と話したのですが、その時彼が言っていたのは「優秀なビジネスマンはビジネス本は読まない。無能な人ほどこれらの本に頼りたがる。そんな人間を相手に本作りするのもなかなか辛いものです」と。
 

要するにビジネス本などでノウハウを会得しても結局前述の階層別研修と同じ結果が待ち受けているのです。つまりその本を読んだ人は皆同じ手法をとり結局コモディティー化から抜け出せないというわけです。
 

最近の広告(カタログや展示会も含めて)は単なる「通知」になっており、広告で最も重要な「感動」「共鳴」「共感」をめざしたクリエイティブがほとんど見られなくなりました。本来広告はマーケットや社会、顧客に対して意外性や驚きを与え、それに感動させて共鳴してもらうことが重要な役割であるはずです。その意味では他社の右へならえ的な広告は何の意味もなく、御社独自の切り口やコンセプトが何よりも不可欠な要素となってきます。
 

   OJTも不可能で広告宣伝の専門教育もできない実情ではどうしても他社の優れた広告作品をお手本にしがちでしょう。それもひとつの有力な学び方と言えますが、ここで重要なのは、勇気を持って他社とはまったく正反対のコンセプトやクリエイティブに挑戦することです。広告にはセオリーは存在しません。もっと自由にもっと気ままに広告作りを続けていくことが最善の教育となるでしょう。そしてその積み重ねでやがてOJTが可能になる時期が来ます。しかし、とは言ってもコミュニケーションの基礎理論は熟知しておく必要はありますので、その場合はBtoBコミュニケーション大学で得た知識がものを言うと考えています。     
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河内英司(かわちえいじ)
-------------------------------------------
京都教育大学教育学部特修美術科卒業。電気機器メーカーにおいて一貫して広報宣伝業務に従事。広報室長・コーポレートコミュニケーション室長を経て、2014年3月退職。  現在、カットス・クリエイティブラボ代表。(一社)日本BtoB広告協会アドバイザー。BtoBコミュニケーション大学校副学長。(独)中小企業基盤整備機構 販路開拓支援チーフアドバイザー
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